愛宕山は、比叡山と並び立つ山城の国の山で、光仁天皇の勅命で和気清麻呂が
愛当護 (あたご) 大権現を勧請したのに始り,愛宕大権現の名で親しまれている。
火伏の神として鎮火の護符を出すので、深く一般に信仰されている。
「で、ここからどれくらい先にあるのですか?」
つる七郎が眼鏡を触りつつ、惣太に聞きました。
一行は合流したのちに、その窃盗団の根城である愛宕山へ向かっていました。
「ええと・・・・今からだと夜中になっちゃいますね・・・・この国のはずれです」
「それにしては、よく知っておるの」
殿様が惣太をのぞきこむと、惣太はにっこり笑いました。
「僕、愛宕山の麓からここに来たんです。」
「ええ!?では、里帰りということになるんですねえ」
つる七郎が言うと、惣太はちょっとうつむきました。
「はい・・・・おっかあが亡くなって・・・親戚の元へ・・・・って!僕、売られたんじゃない
ですよ!預けられただけなんです。だから・・・その・・あいつの嘘っぱちなんです」
「なんですと!!あの熊め~~!」
つる五郎がこぶしを振り上げるのを、殿様はやんわり止めました。
「よいよい、こうして惣太殿の案内で根城へ行けるのじゃ」
「ああ~~、でも、きっちり返してもらいましょう。嘘はいけませんからね!」
つる七郎の眼鏡が、キラリと光りました。
「亀さんチームの方は何かわかったのかの?」
「亀さんて・・・・は、は!窃盗団は全部で4人だそうです。いずれも屈強な猛者と
聞きました。刀を所有しており、いろいろと物騒な様子ですね」
「武器かあ・・・・それはやっかいですね。我々は持っていませんし。調達いたしますか?」
亀一郎の言葉を受けて、つる七郎が言うと
「いや、調達したところで扱えなければ意味がなかろう。」
「ですが・・・・・」
「他に策はあろう。それをこれから考えるのじゃ。時間はたっぷりあるからの」
それから山城の国のはずれにあるという愛宕山への道すがら、殿様一行は、ああでもない
こうでもないと作戦を立てるのでした。
小さな惣太は、つる五郎の肩車に乗ったり、亀一郎に抱えられながら。
やがて日が傾き、見事な夕焼け空が辺りを包み始めた頃
「あ!見えてきましたよ!あれが愛宕山です!」
「おおう~~!あれか~~!まだしばらくありそうだなあ・・・・」
つる五郎が手を額にかざしてぼやいたその時!
「と!太郎殿!」
後ろから亀次郎と亀三郎がそそくさと前に進み出ました。
「どうやら、何者かが後をつけて来ているようなのですが」
「なんじゃと?何者なのじゃ?」
「もしかしたら、あの熊八とかいうヤツではないですか?と・・あいや、太郎殿から
またお金をぶん取ろうとしているのではないでしょうか」
つる七郎の眼鏡がまた光りました。
「ほう!それはおもしろい。気づいたことに気づかれるでないぞ!して、亀、向こうは何人
なのじゃ?」
「3名か、あるいは4名かもしれません」
「ふむふむ。ますますおもしろいぞ。そうなると作戦を変更せねばならぬの」
「ええ~~~?挟み撃ち状態じゃないですか!」
つる五郎が慌てると、その肩に乗っていた惣太がスイっと片手を伸ばしました。
すると一羽のハトと二羽のスズメがその腕にとまりました。
「やあ、元気だったかい?」
「んあ?惣太殿は鳥が好きなのですかな?」
「はい。ああ~~、ちょっと見てきますね」
「あ?」
つる五郎とのやりとりの後、ハトとスズメは後ろへ飛んで行き、惣太も急に静かに
なりました。
「ん?惣太殿・・・・??いかがなされました?」
呼んでも返事はなく、なんだ?と皆が惣太を見上げて首をかしげた頃
「ん~~~、向こうは3人のようです。そして短剣のようなものを熊が3本、
残りの二人も1本ずつ持っているようです」
惣太がいきなりまたしゃべり出したので、皆はまた惣太を見上げました。
「惣太殿?それはまことか?」
目を丸くした殿様に、惣太は少し恥ずかしそうに言いました。
「僕、鳥の目になっていろいろ見ることが、なぜかできるんです。みんなできるのかと
思っていたんですがそうじゃないって気づいてからはあまりしなくなりましたけど」
「ほお!!そなたも不思議なことができるのじゃな!」
「あの・・・・・ほとんどの人からは気味が悪い子って言われたんですけど・・・」
「いや、余は鬼の子や空色のきつねが見える子どもを知っておる!実にうらやましい」
殿様は嬉しそうにはっはっは!と笑いました。
「惣太殿、と・・太郎殿は不思議なことが大好きなお方ですから安心してください」
つる五郎が惣太を見上げて言うと、惣太は嬉しそうに笑いました。
「あのう!!いいですか?向こうも武器を持っていると言うことは!!」
「つる七郎よ!声がデカイぞ、聞こえるではないか!」
「は!す、すみません・・・・ですがと!太郎殿!」
「作戦は変更じゃと言うたじゃろうが。いいか?・・・・・・・」
夕日の色をわずかに山の端に留め、辺りは急速に暗くなって行きました。
まだ明りのあるうちにと、殿様一行は宿で食事にすることにしました。
闇にまぎれて飛脚チームに文を持たせて、つる一郎のもとへ送り出しました。
その宿で松明などを調達し、いよいよ愛宕山を登り始めました。
春はまだ浅く、夜になるとやはり冷えます。
ところどころで休憩して暖をとりながら、ゆっくり進みます。
どこへ行くにも、惣太の鳥の目が大変役に立ちました。
「あ、見つけましたよ。こちらです」
後ろの熊たちに気づかれないようにこっそり会話しながら、そろりそろりと登ります。
やがて一軒の小屋が見えてきました。
「あれか!!」
耳をすますと、かすかに話声がしています。
「確かに4人いるようですよ!」
バサバサとふくろうが戻ってくると同時に、惣太がささやきました。
「よし!後ろの熊たちはどうじゃ?」
「はい。小屋が見えるところまできたようです」
「ではさっそく、決行といきますか!」
「じゃな!!」
殿様一行は、松明をひとつだけにしてやや遠回りしながら 小屋に向かいました。
そして扉を開けて全員が中へ入りました。
・・・・・・・・と見せかけて、実は裏に潜み、更に屋根にのぼって這いつくばりました。
「遠目にはこれが扉に見えるはずです。そして我々が中にいると見せかけるのです」
「さすがじゃな!亀次郎!」
亀次郎は手先が器用で、あっという間に宿で見せかけの扉を作ったのでした。
そうとはつゆ知らない熊たちは、順調に山を登ってきました。
「来ましたよ!」
「いよいよじゃな!」
殿様は、わくわくしてつい頭をもちあげて・・・・
「わ!」
なにかに頭をぶつけてしまいました。
「しっ!!どうされました?」
つる七郎がそろそろと殿様の声がした方に近づくと・・・・・
「こ・・・これは蜂の巣ですね。かなり大きい」
「なんか音がしてないですかね?」
つる五郎の声に全員がさらに息をつめると、なにやらブンブンと唸っています。
「ヤバくないですか・・・?ってか危険です!」
「ええ~~~!!」
つる七郎が緊急事態を告げた時、殿様はいいことを思いつきました。
「つる五郎、この巣をこの天井から落としたらどうじゃ?」
「は!やってみます!」
「全員、中に入りましたよ!」
夜目が効く、つる八郎の合図が届き、手探りでミツバチの巣をつかんだつる五郎は、
亀一郎と亀次郎によって開けられた穴から、勢いよく投げ込みました!
「よし!撤収じゃ!!」
それから一行は、屋根から降りて一目散に山を降りました。
後ろから、ミツバチの攻撃を受けたであろう窃盗団と熊たちの叫び声が聞こえてきました。
そのうちに、飛脚チームが連絡しておいた取り締まりの役人たちの松明が見えてきました。
「我々は、太郎殿とその供の者です!これから降りてくる者が窃盗団です!」
「わかった!者ども!かかれ~~~!!」
「しかし、ミツバチの大軍も来ますので!!」
「はああ~~~~????」
「がんばってくだされ~~!」
それからは、窃盗団と熊たちと取り締まり役人たちとミツバチが入り乱れて、
その場は騒然となりました。
殿様一行も松明をふりかざしてミツバチをよけつつ、逃げようとする窃盗団や熊たちを
捕えるべく奮闘しました。
わけがわからずハチに襲われて、屈強な大男たちもなすすべがありません。
あっけなく全員捕えられたのでした。
「よし!引立てよ!」
窃盗団と熊たちは、ホッとした様子で引き立てられていきました。
殿様一行も後に続き、食事をした宿に帰りました。
「やれやれ~~~、みなは大丈夫かの?惣太殿は?」
「惣太殿は、つる八郎が先に宿に連れて行きましたので大丈夫ですよ」
つる五郎が答えました。
「ふむ。よかったよかった。ハチにはかわいそうなことをしたが・・」
「いえ・・・ハチ合わせした後、物騒なことにならなくてよかったですよ」
「まあ~~な、しかしこの煙幕も使ってみたかったのう」
「それはまたのお楽しみということで」
次の日、宿にたどりついていたつる一郎と合流して、取り締まりの館と向かいました。
そこには、おにぎり顔の役人もたどりついていました。
「いやあ~~太郎殿!見事に窃盗団ばかりか、熊八郎一味も捕えてくれて!!
なんとお礼を申してよいか!!」
おにぎり顔は、殿様をバシバシ叩きながらニコニコ顔で言いました。
「これは、熊八が太郎殿からだまし取ったという、3千文ですな。お返ししますぞ。
それから・・・・ウオッホン!!え~~~、他に何かしてほしいことがあれば・・・・
聞いてやらんこともないぞ?」
殿様はお金の入った袋を受け取りながら、お?とおにぎり顔を見つめました。
「それは誠ですか?それならば・・・・・私は、ある人を探しておりましてな。
私の国に、目の見えぬ8歳くらいの幼子がおりまして。その子の出生を調べたい
のですよ。」
「ほう・・・それで?」
「どうやら、その子を私の国の親の元に連れてきた女性がおるそうで。その名を
鈴音殿と申すらしいのです。たぶん、置屋におられるのではないかと」
「わ・・・・・わかった・・・鈴音と申す女性ですな・・・ウオッホンウオッホン・・・・
では、ついて来て下され」
おにぎり顔は、なぜかひどくそわそわした様子で取り締まりの館を出て、スタスタと
歩き出しました。
その後を、殿様一行はぞろぞろとついて歩きます。
行列はまた山を離れ、違う街並みへと続きました。
「ウオッホン・・・・ここの女将がワシが知っている鈴音という者だ。聞いてみるといい」
「ほう!あなたは行かないのですか?」
殿様が聞くとおにぎり顔はひどくあわてて言いました。
「いいいいいいや、ワシはここでいとまをもらう。では、これにて~~!」
「いろいろと世話になったの」
「あいや、すまなかった!ではこれにて!」
おにぎり顔は、ひとつ頭を下げると逃げるように去って行きました。
愛当護 (あたご) 大権現を勧請したのに始り,愛宕大権現の名で親しまれている。
火伏の神として鎮火の護符を出すので、深く一般に信仰されている。
「で、ここからどれくらい先にあるのですか?」
つる七郎が眼鏡を触りつつ、惣太に聞きました。
一行は合流したのちに、その窃盗団の根城である愛宕山へ向かっていました。
「ええと・・・・今からだと夜中になっちゃいますね・・・・この国のはずれです」
「それにしては、よく知っておるの」
殿様が惣太をのぞきこむと、惣太はにっこり笑いました。
「僕、愛宕山の麓からここに来たんです。」
「ええ!?では、里帰りということになるんですねえ」
つる七郎が言うと、惣太はちょっとうつむきました。
「はい・・・・おっかあが亡くなって・・・親戚の元へ・・・・って!僕、売られたんじゃない
ですよ!預けられただけなんです。だから・・・その・・あいつの嘘っぱちなんです」
「なんですと!!あの熊め~~!」
つる五郎がこぶしを振り上げるのを、殿様はやんわり止めました。
「よいよい、こうして惣太殿の案内で根城へ行けるのじゃ」
「ああ~~、でも、きっちり返してもらいましょう。嘘はいけませんからね!」
つる七郎の眼鏡が、キラリと光りました。
「亀さんチームの方は何かわかったのかの?」
「亀さんて・・・・は、は!窃盗団は全部で4人だそうです。いずれも屈強な猛者と
聞きました。刀を所有しており、いろいろと物騒な様子ですね」
「武器かあ・・・・それはやっかいですね。我々は持っていませんし。調達いたしますか?」
亀一郎の言葉を受けて、つる七郎が言うと
「いや、調達したところで扱えなければ意味がなかろう。」
「ですが・・・・・」
「他に策はあろう。それをこれから考えるのじゃ。時間はたっぷりあるからの」
それから山城の国のはずれにあるという愛宕山への道すがら、殿様一行は、ああでもない
こうでもないと作戦を立てるのでした。
小さな惣太は、つる五郎の肩車に乗ったり、亀一郎に抱えられながら。
やがて日が傾き、見事な夕焼け空が辺りを包み始めた頃
「あ!見えてきましたよ!あれが愛宕山です!」
「おおう~~!あれか~~!まだしばらくありそうだなあ・・・・」
つる五郎が手を額にかざしてぼやいたその時!
「と!太郎殿!」
後ろから亀次郎と亀三郎がそそくさと前に進み出ました。
「どうやら、何者かが後をつけて来ているようなのですが」
「なんじゃと?何者なのじゃ?」
「もしかしたら、あの熊八とかいうヤツではないですか?と・・あいや、太郎殿から
またお金をぶん取ろうとしているのではないでしょうか」
つる七郎の眼鏡がまた光りました。
「ほう!それはおもしろい。気づいたことに気づかれるでないぞ!して、亀、向こうは何人
なのじゃ?」
「3名か、あるいは4名かもしれません」
「ふむふむ。ますますおもしろいぞ。そうなると作戦を変更せねばならぬの」
「ええ~~~?挟み撃ち状態じゃないですか!」
つる五郎が慌てると、その肩に乗っていた惣太がスイっと片手を伸ばしました。
すると一羽のハトと二羽のスズメがその腕にとまりました。
「やあ、元気だったかい?」
「んあ?惣太殿は鳥が好きなのですかな?」
「はい。ああ~~、ちょっと見てきますね」
「あ?」
つる五郎とのやりとりの後、ハトとスズメは後ろへ飛んで行き、惣太も急に静かに
なりました。
「ん?惣太殿・・・・??いかがなされました?」
呼んでも返事はなく、なんだ?と皆が惣太を見上げて首をかしげた頃
「ん~~~、向こうは3人のようです。そして短剣のようなものを熊が3本、
残りの二人も1本ずつ持っているようです」
惣太がいきなりまたしゃべり出したので、皆はまた惣太を見上げました。
「惣太殿?それはまことか?」
目を丸くした殿様に、惣太は少し恥ずかしそうに言いました。
「僕、鳥の目になっていろいろ見ることが、なぜかできるんです。みんなできるのかと
思っていたんですがそうじゃないって気づいてからはあまりしなくなりましたけど」
「ほお!!そなたも不思議なことができるのじゃな!」
「あの・・・・・ほとんどの人からは気味が悪い子って言われたんですけど・・・」
「いや、余は鬼の子や空色のきつねが見える子どもを知っておる!実にうらやましい」
殿様は嬉しそうにはっはっは!と笑いました。
「惣太殿、と・・太郎殿は不思議なことが大好きなお方ですから安心してください」
つる五郎が惣太を見上げて言うと、惣太は嬉しそうに笑いました。
「あのう!!いいですか?向こうも武器を持っていると言うことは!!」
「つる七郎よ!声がデカイぞ、聞こえるではないか!」
「は!す、すみません・・・・ですがと!太郎殿!」
「作戦は変更じゃと言うたじゃろうが。いいか?・・・・・・・」
夕日の色をわずかに山の端に留め、辺りは急速に暗くなって行きました。
まだ明りのあるうちにと、殿様一行は宿で食事にすることにしました。
闇にまぎれて飛脚チームに文を持たせて、つる一郎のもとへ送り出しました。
その宿で松明などを調達し、いよいよ愛宕山を登り始めました。
春はまだ浅く、夜になるとやはり冷えます。
ところどころで休憩して暖をとりながら、ゆっくり進みます。
どこへ行くにも、惣太の鳥の目が大変役に立ちました。
「あ、見つけましたよ。こちらです」
後ろの熊たちに気づかれないようにこっそり会話しながら、そろりそろりと登ります。
やがて一軒の小屋が見えてきました。
「あれか!!」
耳をすますと、かすかに話声がしています。
「確かに4人いるようですよ!」
バサバサとふくろうが戻ってくると同時に、惣太がささやきました。
「よし!後ろの熊たちはどうじゃ?」
「はい。小屋が見えるところまできたようです」
「ではさっそく、決行といきますか!」
「じゃな!!」
殿様一行は、松明をひとつだけにしてやや遠回りしながら 小屋に向かいました。
そして扉を開けて全員が中へ入りました。
・・・・・・・・と見せかけて、実は裏に潜み、更に屋根にのぼって這いつくばりました。
「遠目にはこれが扉に見えるはずです。そして我々が中にいると見せかけるのです」
「さすがじゃな!亀次郎!」
亀次郎は手先が器用で、あっという間に宿で見せかけの扉を作ったのでした。
そうとはつゆ知らない熊たちは、順調に山を登ってきました。
「来ましたよ!」
「いよいよじゃな!」
殿様は、わくわくしてつい頭をもちあげて・・・・
「わ!」
なにかに頭をぶつけてしまいました。
「しっ!!どうされました?」
つる七郎がそろそろと殿様の声がした方に近づくと・・・・・
「こ・・・これは蜂の巣ですね。かなり大きい」
「なんか音がしてないですかね?」
つる五郎の声に全員がさらに息をつめると、なにやらブンブンと唸っています。
「ヤバくないですか・・・?ってか危険です!」
「ええ~~~!!」
つる七郎が緊急事態を告げた時、殿様はいいことを思いつきました。
「つる五郎、この巣をこの天井から落としたらどうじゃ?」
「は!やってみます!」
「全員、中に入りましたよ!」
夜目が効く、つる八郎の合図が届き、手探りでミツバチの巣をつかんだつる五郎は、
亀一郎と亀次郎によって開けられた穴から、勢いよく投げ込みました!
「よし!撤収じゃ!!」
それから一行は、屋根から降りて一目散に山を降りました。
後ろから、ミツバチの攻撃を受けたであろう窃盗団と熊たちの叫び声が聞こえてきました。
そのうちに、飛脚チームが連絡しておいた取り締まりの役人たちの松明が見えてきました。
「我々は、太郎殿とその供の者です!これから降りてくる者が窃盗団です!」
「わかった!者ども!かかれ~~~!!」
「しかし、ミツバチの大軍も来ますので!!」
「はああ~~~~????」
「がんばってくだされ~~!」
それからは、窃盗団と熊たちと取り締まり役人たちとミツバチが入り乱れて、
その場は騒然となりました。
殿様一行も松明をふりかざしてミツバチをよけつつ、逃げようとする窃盗団や熊たちを
捕えるべく奮闘しました。
わけがわからずハチに襲われて、屈強な大男たちもなすすべがありません。
あっけなく全員捕えられたのでした。
「よし!引立てよ!」
窃盗団と熊たちは、ホッとした様子で引き立てられていきました。
殿様一行も後に続き、食事をした宿に帰りました。
「やれやれ~~~、みなは大丈夫かの?惣太殿は?」
「惣太殿は、つる八郎が先に宿に連れて行きましたので大丈夫ですよ」
つる五郎が答えました。
「ふむ。よかったよかった。ハチにはかわいそうなことをしたが・・」
「いえ・・・ハチ合わせした後、物騒なことにならなくてよかったですよ」
「まあ~~な、しかしこの煙幕も使ってみたかったのう」
「それはまたのお楽しみということで」
次の日、宿にたどりついていたつる一郎と合流して、取り締まりの館と向かいました。
そこには、おにぎり顔の役人もたどりついていました。
「いやあ~~太郎殿!見事に窃盗団ばかりか、熊八郎一味も捕えてくれて!!
なんとお礼を申してよいか!!」
おにぎり顔は、殿様をバシバシ叩きながらニコニコ顔で言いました。
「これは、熊八が太郎殿からだまし取ったという、3千文ですな。お返ししますぞ。
それから・・・・ウオッホン!!え~~~、他に何かしてほしいことがあれば・・・・
聞いてやらんこともないぞ?」
殿様はお金の入った袋を受け取りながら、お?とおにぎり顔を見つめました。
「それは誠ですか?それならば・・・・・私は、ある人を探しておりましてな。
私の国に、目の見えぬ8歳くらいの幼子がおりまして。その子の出生を調べたい
のですよ。」
「ほう・・・それで?」
「どうやら、その子を私の国の親の元に連れてきた女性がおるそうで。その名を
鈴音殿と申すらしいのです。たぶん、置屋におられるのではないかと」
「わ・・・・・わかった・・・鈴音と申す女性ですな・・・ウオッホンウオッホン・・・・
では、ついて来て下され」
おにぎり顔は、なぜかひどくそわそわした様子で取り締まりの館を出て、スタスタと
歩き出しました。
その後を、殿様一行はぞろぞろとついて歩きます。
行列はまた山を離れ、違う街並みへと続きました。
「ウオッホン・・・・ここの女将がワシが知っている鈴音という者だ。聞いてみるといい」
「ほう!あなたは行かないのですか?」
殿様が聞くとおにぎり顔はひどくあわてて言いました。
「いいいいいいや、ワシはここでいとまをもらう。では、これにて~~!」
「いろいろと世話になったの」
「あいや、すまなかった!ではこれにて!」
おにぎり顔は、ひとつ頭を下げると逃げるように去って行きました。