統一協会と韓国語 | Kura-Kura Pagong

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"kura-kura"はインドネシア語で亀のことを言います。
"pagong"はタガログ語(フィルピンの公用語)で、やはり亀のことを言います。

 私が統一協会(今の世界平和統一家族連合)について具体的に知ったのは1989年に大学に入って間もなく、「原理研に気をつけろ。」みたいなタイトルの教養部自治会主催のイベントに参加した時だった。世界基督教統一神霊協会という宗教団体があって、当時問題になっていた霊感商法をやっているのがその団体、その団体の青年組織は原理研究会(原理研)というのだが彼らは学内でもこんな勧誘活動をやっているので注意しよう、という話をしていた。

 その後、この宗教団体がメディアに取り上げられた時期があった。女優の桜田淳子や新体操の日本代表としてオリンピックに出た山崎浩子が合同結婚式で結婚した1992年だ。

 あの夏、帰省したら母と妹がテレビのワイドショーを観ていて、そこで統一協会のことをあれこれ取り上げていた。

 その話題の一つが、日本の女性信者たちが子供を連れて韓国へ移住し、教団の教育施設で子供に教育を受けさせている、というものだった。

「アンニョンハシムニカ」

と声をそろえてあいさつする11,2歳くらいの日本の少女たち。日本のテレビクルーにマイクを向けられ、

「大人になったら文鮮明先生の決めた人と結婚します。」

と迷わずに答える。なんとも気持ち悪い映像である。

 それを見ていた母が

「ヒッポも統一協会と関係あるの?」

という。母にしてみれば悪気のない軽い冗談のつもりだったが私は青筋を立てて

「違う。」

と言った。

 ヒッポとはヒッポファミリークラブという外国語教育団体のことで、私と妹も英語の早期教育のため幼稚園から中学卒業まで通わされていた。(入会当時はラボ教育センター。その後、この団体が1981年に分裂した際、教室がヒッポファミリークラブに移行したのに伴ないヒッポへ移籍。)そこでは英語のほかに韓国語やスペイン語の教材も出していた。私はそこで初めて韓国語に触れた。

 ヒッポでは夏休みや冬休みにキャンプもやっており、その時主宰者の榊原陽氏の講演を聴いた。榊原氏の講演は言語学を子供向けに話すものだったが、ヒッポで韓国語を始めた理由についても話してくれた。

「日本人はアメリカ人のことを自分より高く見るかわりに韓国人のことを自分より低く見ます。それがヒッポで韓国語を始めた理由です。」

この言葉には衝撃を覚えた。アメリカの黒人差別のことはテレビのニュースや『トムじいやの小屋』のような文芸作品で知っていたが、日本にも差別があることは知らなかった。

 その後、中学である女子生徒が

「○○はチョンだ。」

と後ろ指をさされるような出来事に遭遇したが、そんなことで人を蔑むのはおかしいと思うことができたのはヒッポで韓国語に触れたおかげである。

 なお、母はヒッポに通わせたおかげで私が英語を話せるようになったと思っているが、英語の語学力に関してヒッポで得たものはない。ヒッポで身になったものは非英語圏の文化に対する興味である。

 ところで、安倍晋三元首相が銃で殺害された。そして現行犯逮捕された男は母親が統一協会に多額の献金をして家庭を崩壊させたことで統一協会に恨みを持ち、その恨みを安倍に向けて犯行に及んだ、という話が連日報道されている。これで政治と宗教の関係にメスが入ればよいが、私は別のことに懸念を覚えている。韓国に拠点を持つこの宗教団体と韓国人とを同一視して韓国人に対する暴力を煽る者も現れているが、そういうことは即刻やめろ。