忌野清志郎のおっちゃん、今年もあんたのくたばった日が近づいてきた。清志郎、今生きていたらあんたはどんな歌を歌っていただろう…。
俺が清志郎のことを知ったのは中学の時だった。遠足の時、バスの中にラジカセを持ち込んでてめえらの好きな音楽をかけている。それがRCサクセション、清志郎がボーカルをやっていたバンドの『つ・き・あ・い・い・た・い』だった。
もしもオイラが偉くなったら 偉くない奴とはつきあいたくない
たとえそいつが古い友達でも 偉くない奴とはつきあいたくない
あの頃の俺はクソ真面目なガキだったから、こんな歌はひどい、いやだ、と思った。まだ逆説という言葉を知らなかったし、表現というのは多様だ、ということも知らなかった。
俺の視野の中に清志郎が入ってきたのは1988年のことだった。仲間が
「お前、左寄りのくせに清志郎も知らないのか?」
と言う。このとき、清志郎がエルビス=プレスリーのカバーをやって、東芝系のレコード会社からレコードを出すはずのところが回収、という騒ぎになった。
「牛乳飲みてえ」とおちゃらけながら、原子力発電を批判する。日本の芸能人は政治の話をしないものだと思っていたら、それとは違う奴がいる、ということを知った。カバーといえばこれも忘れちゃいけない。ジョン=レノンの『イマジン』だ。
レノンのメッセージを清志郎は見事に自分の言葉で言い換えた。安っぽい言葉だけど、すげえ、と思う。
レコード回収といえば、これを忘れちゃいけない。『君が代』だ。高校の校長の自殺に便乗して国会で国旗国歌法が成立した1999年。社会で騒いでいることを音楽にする、というロッカーの本能で、清志郎は右向け右の世紀末の政治をコミックソングにしやがった。
清志郎が俺を打ちのめした曲といえば『JUMP』もある。
この歌の動画は何本かユーチューブで公開されているのだが、俺の知る限り1本を除いたほかの動画ではこのフレーズが削除されている。
世界のど真ん中で ティンパニーを鳴らして
その前を殺人者がパレードしている 狂気の顔で空が歌って踊ってる
でも悲しい嘘ばかり俺には聞こえる
誰が誰に言われて削除したのかはわからない。もしかしたら忖度というやつで誰にも言われず削除したのかもしれない。なぜなのかは分からないけど、清志郎がいなくなった後も世の中はおかしくなっていった。でも嘆いてばかりはいられない。したたかに生きろと清志郎は俺たちにメッセージを送ったんだ。
忌野清志郎よ、安らかに眠るな。