渋谷駅は普請中 | Kura-Kura Pagong

Kura-Kura Pagong

"kura-kura"はインドネシア語で亀のことを言います。
"pagong"はタガログ語(フィルピンの公用語)で、やはり亀のことを言います。

 森鴎外の小説で『普請中』いうのがある。主人公の官僚が西洋料理店の精養軒でドイツ留学中に付き合っていたドイツ人女と会う。店は改装工事中、すなわち普請中で落ち着かない雰囲気なのだが、再開したふたりの雰囲気もよろしくない。短い作品の中に「普請中」、「ここは日本だ。」という言葉が何度も出てくる。

 近年、明治時代のことを、日本が近代化を遂げて欧米列強に並んだ素晴らしい時代、という人がいる。だが、明治の文豪から見た明治はそれとは違うようだ。

 
 話は大きく変わって、日本の首都圏のターミナル駅で普請中のところがいくつかある。渋谷駅はJR東日本、東急、京王、東京メトロの路線が接続する巨大ターミナルだ。2013年に東急東横線のホームが地上から地下へ移転した。そうして東横線地上ホームの撤去工事が進んだところで、跡地にJR埼京線、湘南新宿ラインのホームを移転する工事が始まった。これまで山手線と埼京線、湘南新宿ライン

のホームは離れたところにあって乗り継ぎが不便だったのでそれを解消しよう、というわけだ。

 ホーム移転工事を本格的に進めるに先立ち、線路の切替工事が2018年5月末と6月始めの週末に行われた。下の写真は2018年6月2日(土)に撮影したものである。

 山手線ホームの隣は埼京線などの列車が通る線路が敷かれていたのだが、この時点ではすでに一部のレールが撤去され、工事の資材や車両で溢れている。
 渋谷駅に埼京線列車が乗り入れるようになったのは1996年だが、これは山手貨物線と呼ばれる線路を利用したものである。それよりずっと前からここには貨物列車を通すための線路があった。その風景が大きく変化している。
 

 
 
 カタンコトンとが動く音がするので見てみると、山手線ホームから見て奥の方をパワーショベルが移動している。キャタピラーと鉄の車輪の両方を装備したパワーショベルが、新しく設けられた山手貨物線の線路の上をゆっくりと移動している。資材を載せた小さな台車を牽きながら…。普段、真昼には見ることのない風景である。
 
 山手線のホームの恵比寿側の端から、現在の埼京線、湘南新宿ラインホームをのぞむ。現在、2つのホームは違う駅のホームのように離れているが、それを隣り合わせにしようとしているのだ。
 
 
 人のいないホーム。そこに、ゴムタイヤと鉄の車輪を装備した、軌陸車と呼ばれるトラックが停まっている。
 
 

 こちらは原宿駅寄りの風景。大都会の非日常である。