久保田先生:京都大学瀬戸臨海実験所 准教授 久保田 信 先生、言わずと知れたベニクラゲ研究の第一人者、最近は、海外からの取材も多い。
今回の若返り実験では、ベニクラゲを昆虫針で300回以上刺して、かなりのストレスを与えましたが、元の状態に戻ってしまいました、ベニクラゲは、環境悪化やストレスなどにより、委縮し肉団子になり沈んだ後、ストロンを伸ばしポリプから、クラゲ芽を付けてクラゲとして若返る事が知られていて、久保田先生はこのサイクルを10回以上確認されています。
ベニクラゲは、この若返りで有名ですが、有性生殖でも不思議な事が有ります、刺胞動物はハート型卵割と呼ばれる分裂をするのが特徴です、北のベニクラゲは、過去のブログにも掲示していますが、放卵はせずに、プラヌラになるまで保育します、白浜のベニクラゲは放卵をし、水中で受精します、過去の実験では、どの部位が若返りに重要かを調べるのに、クラゲを切り分け、卵が混入しないように、生殖腺を取り分けていたところ、生殖腺を入れていた容器から、プラヌラと多くのポリプが発生していました、放卵の様子は、初めて見ます。
今回は、放卵から卵割まで実験を加えて解説して頂きました。
朝明るくなったところで放卵するそうです、実験では、シャ-レに入った、雌雄のベニクラゲを昨夜からアルミホイルで遮光しておき、アルミホイルを取り、光を与えてどれ位の時間で放卵するか測りました。
25分ほどで放卵しました、少しずつ落ちてくるのかと想像しましたが、拍動の水流の影響を受けて、かなり強く遠くまで飛ばされていました。(動画は有りません)
ベニクラゲの卵割(解説のモニター画面を撮影)

誰かが、「おしり」みたいと言うと、もう、お尻にしか見えません、「ハート型卵割」よりも、「美尻型卵割」の方がしっくりするかも。

2つに分かれています、卵膜を持っていないので、切り離す事が出来そうですが、切り離すとどうなるのでしょうか?

3つに分かれている、累乗的に分裂する筈なので、2つに分裂した後、片方だけが分裂して3個になったのであれば、分裂しなかった1個は大きい筈、分裂してどんどん小さくならなければ、全体が大きくなってしまう・・そんな事は無い筈。

どんどん分裂して、分岐したり3次元的に広がって行く。

この卵は2個分だが複雑な形になってきた、これがどのようにプラヌラとして繋がって行くのだろうか?次回はコマ撮り撮影でその過程を記録したい。
夜には、ヒメアンドンクラゲを探しに、灯火採集を行いました、1日目は2mm位の個体が多かったが、2日目には5mm位の個体も多く採集出来た。
10個体持ち帰りました3mm~5mm位です、このクラゲは拍動もせずに良く休憩をします、それが、カミクラゲの様に触手を伸ばしきったリラックスした感じではなく、触手を傘の中に入れて委縮したように丸まって、死んでいるように見えます。
アルテミアには反応して泳ぎ始めます。
ヒメアンドンクラゲの珍しい配偶行動について、京都大学瀬戸臨海実験所の河村真理子博士より、採集した雌雄個体を麻酔し、モニターに投影してライブ解説を行って頂きました。
その時は、フムフムと聞いていましたが、いざ説明しようとすると、えっ~と、雌雄が捕まって泳ぎ、雌が雄から精巣を取り込んで・・・うまく説明出来ない、再度問い合わせてみると、短文に起こして頂きましたので、そのまま掲載します、有難う御座いました。
1. まず雄の触手が雌の触手に付着し、雄は雌を引っ張りながら泳ぐ。
2. 雄は口を近づけるため雌を引き寄せる。
3. 雄の精巣が胃腔~口に糸状になって移動。
4. 雄の口から吐き出された精巣を雌が触手で受け取る。
5. 雄は雌を離し、雌はもらった精巣を飲み込む。
1~2時間後、飲み込まれた精巣は雌の卵巣付近に移動し、そこで受精します。
その後2日間、雌の体内で受精卵の発生が進み、雌は3000余りの胚の塊を吐き出します。
参考文献も教えて頂きました、有難う御座います。
R.F. Hartwick, Observations on the anatomy, behaviour, reproduction and life cycle of the cubozoan Carybdea sivickisi, Hydrobiologia 216/217: 171-179, 1991.
Cheryl Lewis A Tristan A. F. Long, Courtship and reproduction in Carybdea sivickisi (Cnidaria: Cubozoa), Marine Biology (2005) 147: 477-483.
持ち帰った雌雄のアンドンクラゲ

オス 矢印は精巣 成熟個体と思われる。

メス 矢印は卵巣 卵巣が小さいので、卵が十分育っていない若い個体と思われる。
(他のメスのヒメアンドンクラゲは、卵巣がもっと広がっていた)
先の解説にあるヒメアンドンクラゲが繋がって泳いでいる様子は、3個体が絡まっている状態でよく見られました、解けた後茶色く沈んでいる物が有ったので、卵では無いかな?と見てみると茶色い線の入った触手だけが絡んでいました。

持ち帰り、沈殿物を見ると、軟体動物の卵塊の様なものが見つかった。
(藻類の様な茶色のものは、海水の給水管に付着していた藻類)

まるでカモフラージュの為に、藻類を付けている様に見える。

卵の赤道上に眼点が続いている、卵の段階から明るさを知る必要が有るのか?
コマ撮りをして、900倍速で見てみると卵がぐるぐる回っている。
見辛いが、プラヌラは進行方向を軸にして回転しながら泳いでいる。

卵の段階でよく見えた眼点は、プラヌラになってもはっきり見える位置にある、クラゲの幼生の段階で出来るのかと思っていたが、何の為だろうか?
今年もタコクラゲが採集出来たので、10個体持ち帰りました、今年のタコクラゲは小さいように思う、ネットにはコペが大量に捕獲されていたので、餌不足は考え難い、発生が遅れたのだろうか?
昨年は、成熟した大型のタコクラゲを捕獲し、プラヌラのみ回収しリリースした、昨年のプラヌラはポリプに育っているので、そのうちに、クラゲを遊離させたいと思っています、上手く行けば、水槽ユーザー様に配布しますのでご期待下さい。
【JellyClub】
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