今新卒者より高年齢者雇用が優先なのか!? | 経営側弁護士による最新労働法解説

経営側弁護士による最新労働法解説

人事・労務に関連する労働法の最新問題や実務上の留意点などを取り上げて解説していきたいと思います。
また、最新判例についても言及します。

高年齢者雇用安定法では、60歳定年後、少なくとも再雇用基準を定めて、基準に該当するものについては再雇用をしなければならない。


近時、再雇用を巡る裁判例が増えているが、再雇用拒否については会社側が敗訴する例も増えている。

今後の実務対応としては、「再雇用は広く、但し労働条件を厳しく」とならざるを得ないだろう。つまり、60歳までの労働条件とは異なり、労働日数・労働時間・賃金いずれも下げる方法だ。


中には、月収20万円程度なら65まで雇用を続けることも容易ではないかという向きもあるが、中小企業にとっては、新卒初任給が20万円以下のところはザラである。

そうすると、安易に月20万円程度という訳にはいかないのである。


ある弁護士の受け売りだが、週3日、時給1000円、月100時間程度の労働条件になるとしてもやむを得ないだろう。

高年齢者雇用安定法は、年金制度崩壊による支給開始年齢の引き下げと表裏の関係にあるため、年金支給の遅れをカバーできるだけの賃金があれば充分なのである。

だからこそ、同法は高年齢者の労働条件について何らの規制も行っていないのである。

(もちろん最低賃金の問題はあるが)


因みに、最低限度の再雇用基準は守りつつ、優秀な技術者や幹部は良い条件で雇いたいというニーズもあると思うため、そのような会社は①最低限コースと②特別嘱託社員コースという2種類の再雇用コースを設けるのが良いだろう。


これらの問題は、結局会社の賃金原資総額の問題に帰する。つまり人件費のパイが限られており、これを新卒者と高年齢者が奪い合っている格好だ。


この点、高年齢者の法律上の保護に比べて、当然であるが、新卒者には何らの法的保護はない(採用の自由が企業に憲法上保障されているため。もちろん、内定まで行けば法的保護はあるが)。


年金制度崩壊のツケを新卒者のみに負わせてはならない!



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