本日のテーマ

【反対する者には現実を見せる】

 

 

世の中には、自分とは異なる考え方や価値観を持つ人がいます。

 

考え方が違えば、意見が食い違うのは当然のことです。

 

しかし、自分の考えを相手に理解してもらおうとしても、価値観や思想そのものが違えば、そう簡単には伝わりません。

そんな時、ただ議論を重ねるよりも、現実を見てもらう方が効果的なことがあります。

 

幕末の開国論者、勝海舟の話です。

当時の日本は、外国を排除しようとする攘夷派と、国を開いて外国と向き合おうとする開国派に大きく分かれていました。

攘夷の動きは激しく、開国を唱える者が命を狙われることもありました。

当然、開国派であった勝海舟も、その標的になり得る立場にありました。

しかし勝は、攘夷派の人たちと接する時、正面から議論して説得しようとはしなかったといいます。

「議論しても、なかなか考えは変わらない」

そう考えていたのでしょう。

そこで勝は、相手に現実を見てもらうことにしました。

攘夷派に大きな影響力を持っていた公家の姉小路公知(あねがこうじ きんとも)に、

「私の船に乗って、大阪湾をご覧になりませんか」

と声をかけたのです。

 

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当時、京都で暮らしていた公家たちの多くは、実際の海防の様子や外国船が行き交う海の現実を、自分の目で見る機会がほとんどありませんでした。

そこで勝は、言葉で説明するよりも、実際に海を見てもらおうと考えたのです。

姉小路公知はその誘いに応じました。

 

さらに、桂小五郎をはじめとする攘夷派の人たちも船に乗り込んだといいます。

勝は、大阪湾の様子を見せながら、こうした趣旨の話をしました。

「この状況で、本当に外国から日本を守り切れるでしょうか。

日本を守るためには、各地に砲台を築くだけでは足りません。

それ以上に、海軍をつくり、日本の海を守る力を持つことが必要です」

実際の海を目の前にして話を聞いた姉小路公知は、勝の考えに理解を示したといいます。

勝は後の日記に、

「大抵(たいてい)同意の旨なり」

と記しました。

 

勝は、相手の考えを言葉だけで否定しようとはしませんでした。

相手に現実を見せ、その現実をもとに自分で考えてもらったのです。

これは、とても大切な説得の方法だと思います。

人は、自分の考えを否定されると、かえって意地になってしまうことがあります。

しかし、事実や現実を自分の目で見れば、考えを改めるきっかけになります。

 

議論で相手を打ち負かすより、現実を見てもらう。

そして、相手自身に考えてもらう。

それが、時には何よりも強い説得力になるのです。

反対する人が現れた時には、

「どう説明すれば分かってもらえるか」

だけではなく、

「何を見てもらえば、自分で気づいてもらえるだろうか」

と考えてみることも大切ですね。

 

参考文献:『勝海舟の人生訓』童門冬二 PHP文庫