本日のテーマ
【得ることは失うこと】
仏教の経典に「般若心経」があります。
般若心経は、わずか二百六十二文字の短い経典ですが、その一つひとつの言葉には深い意味が込められています。
その中に、
「不増不減」
という言葉があります。
これは、
「この世のものは、本来、増えることも減ることもない」
という意味だとされています。
私たちは日常の中で、
「増えた」
「減った」
と考えます。
しかし、それは一つの面から見た姿にすぎないのかもしれません。
たとえば、生活の中では毎日ゴミが出ます。
私たちには、「ゴミが増えた」ように見えます。
しかし、そのゴミのもとをたどれば、すべて自然界にあったものです。
紙は木から。
ビニールは石油から。
金属は大地から。
つまり、私たちの身のまわりで何かが増えているとき、どこかでは何かが減っているのです。
何かを得れば、何かを失う。
何かがこちらに移れば、どこかから離れている。
そこには、必ずバランスがあります。
このことは、私たちの日常にも当てはまります。
誰かが勝てば、誰かが負ける。
働く時間が増えれば、自由な時間は減る。
欲しいものを買えば、お金は減る。
便利さを得れば、資源は失われる。
自分の得ばかりを求めれば、人としての徳を失うこともある。
大切なのは、得ることが悪いということではありません。
何を得ようとしているのか。
そのために何を失っているのか。
そのことに気づいているかどうかなのです。
人は、得ることばかりに目を向けると、欲に流されます。
失っているものに気づかないまま、もっと、もっとと求めてしまいます。
しかし、得ることの裏側には、必ず失うものがあります。
お金を得るために、時間を失う。
成功を得るために、心の余裕を失う。
便利さを得るために、自然を失う。
自分の利益を得るために、人の信頼を失う。
そうならないためにも、私たちは時々立ち止まり、考える必要があります。
今、自分は何を得ようとしているのか。
その代わりに、何を失っているのか。
そして、本当に失ってはいけないものは何か。
「得ることは失うこと」
この視点を持つだけで、物事の見方は変わります。
欲に流されるのではなく、何を大切にするべきかを考えられるようになります。
本当に大切なのは、多くを得ることではありません。
何を得て、何を守るのか。
何を手放し、何を失ってはいけないのか。
そこに、その人の生き方が表れるのだと思います。
蓮如上人の言葉に、次のようなものがあります。
「心得たと思うは、心得ぬなり。心得ぬと思うは、心得たるなり」
分かったと思ったときこそ、まだ分かっていない。
分かっていないと気づいたとき、そこから本当の学びが始まる。
「得ることは失うこと」
この言葉を、日々の暮らしの中で忘れずにいたいものです。