本日のテーマ
【感謝は悪魔払いの特効薬】
日本の哲学者、中村天風の言葉に、次のようなものがあります。
「不運になるのは心の悪魔のなせる業。ならば『感謝の気持ち』で、その悪魔を追い払えばよい」
とても深い言葉です。
人の心には、時として悪魔のようなものが入り込むことがあります。
不満、愚痴、怒り、ねたみ、不安、恐れ、慢心、油断……。
そうしたものが心を支配し始めると、人は物事を悪い方向に捉え、ますます不運を呼び込んでしまうのかもしれません。
では、その心の悪魔をどうすれば追い払うことができるのでしょうか。
天風氏は、それを「感謝の気持ち」だと言っています。
どんなことに対しても、ありがたい、ありがたいと感謝の心を持って生きること。
それが、心の悪魔を追い払う特効薬になるというのです。
雨が降れば、恵みの雨だと思う。
仕事で失敗すれば、神様が与えてくれた試練だと受け止める。
病気になれば、健康のありがたさを教えてもらったと思う。
ものの見方を少し変えるだけで、出来事の意味は変わります。
不満に思えば不運に見えることも、感謝で受け止めれば、そこに学びや気づきが見えてくるのです。
しかし、天風氏のヨガの師であったカリアッパ聖者の教えは、さらに厳しいものでした。
天風氏が病になり、ようやく治りかけたころ、聖者はこう問いかけたそうです。
「どうだ、元気になって嬉しいか」
天風氏が「はい」と答えると、聖者はこう言いました。
「バカ者。治ったことを嬉しがっているような人間は凡俗だ。悪いときに、それに負けなかったことを嬉しく思え。そんな気持ちだとまた病に冒されるぞ」
この言葉には、はっとさせられます。
病気が治ったことに感謝する。
それも大切です。
しかし、それだけではない。
本当に大切なのは、苦しいとき、悪いとき、その状態に心が負けなかったことに感謝することなのです。
病を治そうとする意思があった。
苦しみに負けまいとする心があった。
自分をあきらめなかった力があった。
だからこそ、人は立ち上がることができる。
そう考えると、感謝すべきものは結果だけではありません。
その結果に至るまで、自分を支えてくれた心にも感謝すべきなのだと思います。
生きていること。
苦しみの中でも負けずにいること。
今日という一日を迎えられたこと。
それだけでも、本当は感謝に値することなのかもしれません。
感謝とは、都合のよいことが起きたときだけに持つものではありません。
思い通りにならないとき、苦しいとき、悔しいとき、うまくいかないときにも、そこに何かを見出そうとする心です。
その心があるとき、人は不満に飲み込まれません。
愚痴に支配されません。
慢心や油断にも傾きにくくなります。
感謝は、心を整える力です。
そして、人生を悪い方向へ引っ張ろうとする心の悪魔を遠ざける力でもあります。
まさしく、感謝は人生の特効薬なのだと思います。
中村天風氏は、また次のようにも言っています。
「どこまでもまず人間を創れ。さすれば幸福は向こうからやって来る」
幸福を追いかける前に、まず自分の心を整える。
感謝できる人間になる。
そのとき、幸福は外から探しに行くものではなく、自分の生き方に引き寄せられてくるのかもしれません。
感謝の心を持つこと。
それは、人生を明るい方向へ向ける、もっとも身近で、もっとも強い力なのです。
参考文献:
『中村天風 心を鍛える言葉』岬龍一郎 著/PHP文庫