本日のテーマ 

【妥協しないプロの姿勢】

 

 

マチュアとプロの違いは何か?

この違いはいくつも挙げられるでしょう。

 

【アマチュア】は、

作ったものに

 自分が満足できるものを追究する…

【プロ】は、

 お客様の満足を追究する…

 

その他にも

 知識の深さ…

 視野の広さ…

 追究心…

 技術の向上…

などがアマチュアとの違いがプロには求められるでしょう。

 

一言に表わすと、「妥協をしない」という表現に集約されるかもしれません。

本日は、戦前の尋常小学校の修身(道徳)書に掲載されている「妥協しない」というお話です。

わたしはこれを読んだとき、改めて「妥協しないプロの姿勢」の大切さを感じるのでした。

 

――妥協しない――

円山応挙(まるやまおうきょ)は、毎日、京都の祇園の社へ行って、たくさんの鶏が遊んでいるありさまをじっと見ていました。人々は応挙の様子を見て、ばか者ではないかと思いました。こんなふうにして、一年もたって、ついたてに鶏の画(え)を描きますと、まるで生きているようにできました。そのついたては、祇園の社におさめられました。それを見る人々は、みんなりっぱだとほめるだけでしたが、ある日、野菜売りのおじいさんが、しばらく見ていたのち、「鶏のそばに草の描いていないのがたいそうよい」とひとりごとをいいました。応挙は、それを伝え聞いて、おじいさんの家へ行き、そのわけをたずねますと、おじいさんは、「あの鶏の羽の色は冬のものです。それで、そばに草の描いていないのがたいそうよいと思ったのです」と答えました。そのあとも、応挙は、町を歩いていても、鶏がいると足をとどめて、その様子をじっと見つめて、いつまでもいつまでも動こうとしないことが、よくありました。こんなに熱心であったので、応挙の描いた鶏には、だれもおよぶ者がありませんでした。

また、あるとき、応挙は、寝ている猪(いのしし)を描こうとしました。しかし、まだ、生きている猪を見たことがないので、よく来る柴売女(しばうりおんな)に、猪を見つけたら知らせてくれるようにたのんでおきました。

ある日、その柴売女が、「今、猪を見つけました」といって、知らせてきました。応挙は飛び立つ思いでさっそくかけつけますと、なるほど、竹やぶの中に、一匹の大きな猪が寝ていました。応挙は、じっと猪を見て、手早くそれを写生して帰りました。

まもなくりっぱな猪の画ができあがりました。そこである日、鞍馬(くらま)から来た炭売りのおじいさんに見せました。炭売りのおじいさんは、しばらく眺めていましたが、「これは、病気にかかっている猪を写したものではないでしょうか。猪は眠っていても、背中の毛が逆立ち、足にも力が入っていて、なかなか人を側に寄せつけない勢いがあるものです」といいました。そのあとで、さっきの柴売女がやってきて、「あの猪は、まもなく、あそこで死にました」と知らせました。応挙はせっかく苦心して描きあげた画を破ってしまいました。そうして、あらためて達者な猪の寝ているところを見て、精いっぱいの力をこめて描きました。それを炭売りのおじいさんに見せますと、「これです、これです。このとおりです」といって感心しました。世間の人も、この画をみてほめそやし、一時に応挙の評判は上がりました。(『修身の教科書』小池松次編 サンマーク出版より)

 

画像は、尋常小学校修身書 第四巻より

 

 

プロのこだわりがひしひとと伝わってきます。

「プロの妥協しない姿勢」を肝に銘じたいものです。