今年は国(厚労省)が3年に1度行う報酬改定の年だ。

 

この改定内容は、介護保険や障害福祉・児童福祉サービスを

提供している全ての事業者にとって最も重要なことなのだ。

 

国の方針は毎回のようにコロコロ変わる。

 

求められる資格もコロコロ変わるので、現場で利用児(者)さんに

関わっている従事者を軽視していると憤ることが多々ある。

 

 しかしながら、どれだけ不満を言っても国の制度に基づいて行っている

事業なので、制度に合わせたりついていかなければ淘汰されてしまう

ことは肝に銘じている。

 

このような状況において、今回の児童福祉分野の方針については

私としては心からホッとした。

 

 なぜなら、

今回の改定内容で国が【支援において

5療育(健康・生活)(運動・感覚)(認知・行動)(言語・コミュニケーション)

(人間関係・社会性)を全て含めた総合的な支援を提供することを基本とする】

ことを運営基準として求めたのだ。

 

当社では2017年から既に発達に必要な7領域(①言語理解②言語表出

③巧緻・粗大運動④対人交流⑤認知⑥遊びのスキル⑦適応行動)全てへの

アプローチを基本とする総合療育(発達支援)を打ち出し、パンフレット

にも載せていた。

 

しかしその少し前くらいからは同業他社の事業所が爆発的に

増えていて利用児童獲得を最優先にした「事業所の売り」

として、何かに特化した活動を全面的に打ち出す事業所が増えていた。

 

そのため、当社で働くスタッフからも「うちもウリを何か

打ち出さないとお子さんに来てもらえないのではないか?」

と度々意見が出ていたのだ。

 

それでも自分としてはそのたびに、「何か一つだけに特化をして関わるのは

スタッフとしても簡単だし覚えるのも楽だし響きは良いかもしれない。

でも、子どもの発達に必要な支援領域全てにアプローチをする

やり方でなければ、公費を頂いている事業としても、子どもの

健やかな発達をサポートする点においても「ただの習い事」と

同じにみられてしまう」等とスタッフに伝えてきていた。

 

 それがようやく認められた気持ちで今はいる。

 

それでも課題は山積だ。報酬単価は物価高や人件費増、現場で働く

福祉従事者の処遇改善と表向きでは言いながらも相対的には

子ども分野(特に通所)の報酬はほぼ上がっていない。というか、

試算の結果は様々な加算を算定しなければ下がるという結果が出た。

 

 だからこそ、方針が認められたことに満足などしていられず、

一人でも多くのお子さま(保護者様)に選んで頂ける事業所運営

や支援を目指さなければならないと思っている。

 

児童発達支援や放課後等デイサービスの事業所は、10名定員で行っているところが圧倒的に多い。札幌市では定員10名を超えないように指導を行っているが、事業者からは”お休みをするお子さんも多いのに10名を超えたら指導を受けるならやっていけない”との声も聞かれる。

 当社でもコロナ禍からキャンセル続きで経営的には全く楽ではない。そのため、何とか事業を継続していけるように各事業所の管理者(5か所)たちと打ち合わせを行ったり対策を進めている。

 事業を継続していくためには事業所の”損益分岐点”を把握しなければ対策の立てようがないのだが、一般的な通所支援事業所ではどのくらいの損益分岐点なんだろう?

ちなみに、当社ではだいたい220~230万/月が損益分岐点だが、聞くところによると定員を超えて受け入れをしないと黒字にならない!という事業者も多いようだ。

 

 そもそも定員を超えなければ黒字にならないというのは、事業として既に成り立っていないということになる。

 

 ではなぜそんなに損益分岐点が高い=経費がかかっているのだろう??

 

働いているスタッフにとっても、こんな視点で通所事業所を見ていくことも大切だと自分は思っている。

 

家賃が高すぎる!!とか、役員(社長)の報酬が高すぎる!!など、色々な要因があるだろうけど、来春に控えている医療や福祉の同時報酬改定では特に児童分野は厳しい改定になると予想されていることからも、早急に損益分岐点を低くすること=売り上げがそれほど多くなくても赤字にならない、という経営体質にすることが急務だと自分にも言い聞かせながら思案しているのだ。

 

今の時代は昔とは大きく違って、一つの会社で退職まで勤め上げることが

マレである。

自分自身も、今まで社会人として4回ほど転職をして今に至っているが、

全ての経験が生きていると感じている。

 

なので、自分の会社で働いてくれているスタッフから転職をしたいと相談された

場合でも、僕は反対はしないことにしている。

 

転職を考える時は人それぞれの理由や想いがあるのは当たり前であり、いくら自分の会社であっても、全ての人が満足できるような待遇や労働環境にするのは不可能なことは自分が良く分かっているからだ。

 

 お金(給与)が全てだと考えている人もいるし、大事なのはお金よりも労働環境とか楽さだと考える人もいる。

 

 自分が今まで転職してきたときに何を考えていたかというと、今働いている会社の状況が同業他社と比較してどのような状況なのか?また、その業界自体が今後の流れはどのようになってきているのか?ということである。

 

 自分が経営している分野である「児童福祉」などの福祉事業については、制度や報酬体系の将来的な方向性なども考えなければいけないのだ。

 

 10年前と比較すると、明らかに児童分野は報酬が引き下げられてきているので、スタッフ一人に係る負担は増えている。

大事なのは、それが制度の将来的な状況だと捉えることが出来るか、それとも「この会社だけ酷いからだ」と捉えるか、によって大きな違いとなるのである。

 

いろいろなことをたくさん考えて決断をすることが大切であるし、色々なところで働いてみることもそれ以上に大切だと自分は思っている。

 

外を知ってみて初めてそれまでの環境の良さが分かる時もあるし、逆に「外の方がやはり良かった!!」と思える時もある。

 

 すべては自分自身で決めて進んでいくことが人生なので、そのためにも多くの情報を集める努力が必要だし、一時的な感情や主観だけで頻繁に転職をすることはせずに「客観的な視点」を持とうとするよう努める気持ちはとても重要であると自分は思っている。

 

 

 

事業所の爆発的増加傾向は止まりつつあるが、既に都市部では多くの障害児通所支援事業所が乱立しており、質の低下が問題視されている。

 

 当社では平成19年から事業所をスタートさせて発達支援に取り組んできているのだが、僕が当時と比較して明らかに質が低下してきていると感じている点を挙げてみる。

 

 それは、通所してくれているお子さんの生活全体を見るという意識が明らかに欠けている事業者が増えていることである。

 

分かりやすく言うと、事業所に来ている時間以外はどこで何をやっていても「私たちには関係ない」と平然と言うのだ。

 

子どもたちの発達段階や将来のライフステージを見据えた支援を考えていくのが発達支援のあるべき姿だと僕は考えてずっとこの事業に取り組んできていて、そのためには自宅や他の日中活動の場での様子や課題点などについても保護者さんに寄り添いながら関わっていくように当社スタッフには求めている。

だからこそ、さまざまな関係機関などとの連携や情報共有も大切なのである。

子どもたちの発達課題は、通所事業所に来ている数時間だけでは到底分かるわけがないのだ。

 

しかし事業者に中には、そのような連携を面倒くさがったり、あからさまに「自分の事業所での活動以外は関知しません」というスタンスのところも見受けられる。

 

このような運営の方針というのは、現場のスタッフの独断というよりも、その組織のトップ(経営者)の意向による場合が圧倒的に多い。

 

これだけ事業所が多くなると、それぞれ特色を出そうと必死になること自体は理解出来るけれど、国の制度に基づいて公費による報酬支払いを受けて運営をする事業者として、やはりそのトップの資質や要件を厳格化することを本気で考える時期に来ていると僕は感じている。

 

 大切な子どもの発達支援を支えていく仕組みを維持していくために、また、悩みながらも我が子の発達や成長を真剣に考え子育てをしている保護者さんのためにも、質の良い支援が受けられるような社会になって欲しい。

お子さんの発達支援に長年携わっていると、保護者さんからさまざまなご相談を受けることがある。

その中でも多いのが「偏食」についてだ。

子どもの成長にはさまざまな栄養素を摂取することが大切なのは言うまでもなく、もちろん偏りなく食事が出来れば良いだろう。

 

しかし、私が関わってきたお子さんたちの多くは自閉スペクトラム症の特性をもっていることもあり、その対応には注意が必要だ。

 

単純な「好き」「嫌い」とは違い、味覚過敏や感覚の特異性によるものが多いことを考慮しなければいけないのである。

 

分かりやすい例をいうと、大人は好んで飲むことが多い「コーヒー(ブラック)」は子どもが口にすると「苦い!」と言って飲めないケースが圧倒的に多いのだが、それを「おいしい!」と言って飲むお子さんがおり、そのようなお子さんは味覚の特異性を持っているのだ。

 

なので、そのような味覚の特異性を持っているお子さんにとっては、一般的に多くの子どもたちが「美味しい」と食べることが出来る食べ物でも、全く美味しく感じないのである。

 

 このようなことを全く考慮せずに「とにかく偏食を無くしたい!」と必死になっている保護者さんが少なからずいらっしゃるし、そのような保護者さんはそのことだけで疲弊しているケースも多い。

 

 これは親にとっても子どもにとっても、良いことは一つもないと僕は感じる。

 

食事はもちろん栄養素を摂取するために大切な行為であるが、それが「苦痛」な行為になっては本末転倒ではないだろうか。

 

まずは食事をするという行為がイヤなことではなく、楽しかったりイヤではないという行為として毎日を過ごせることを目標にして欲しい。

 

 嫌がる物を食べさせることに拘り、疲弊し、その辛さやストレスを子どもにぶつけてしまうケースが多い。

 そうなってしまうと、誰のために何のために頑張っているのかもサッパリ分からなくなってしまう。

 

 僕が相談を受けてきた保護者さんには、「子どもは成長に伴って食欲が増してくるとそれまで食べなかった物も食べるようになるケースは多い」ことを伝えている。

 

まずは子どもと一緒に過ごしたり関わったりすることが「苦しく」ならないことが、子どもにとっても親にとっても大切なことなので、「ま、いいか!」という気持ちを

持てるよう意識していけたら良い。