数多久遠のブログ シミュレーション小説と防衛雑感 -4ページ目

99式自走155mmりゅう弾砲のメモパッド

現役時代に手に入れた、ちょっと変わったミリタリーグッズを紹介してみます。

第1回は、日本製鋼所のメモパッドです。


JSWというのは、日本製鋼所のことです。
日本製鋼所のHP
防衛機器のページ

写真がちょっとピンボケ気味となっておりますが、99式自走榴弾砲のイラストが入っており、「Type99 155mm Howitzer Self-Propelled」と書かれています。
イラストは、確かに99式自走りゅう弾砲なのですが、多少デフォルメされているのか、みょうにカッコイイです。
現物はもっと腰高です。
YouTube

これはいわゆるSP(販促)グッズです。
手に入れた経緯は、はっきりとは記憶していませんが、日本製鋼所の営業の方に頂いたことは確かです。
私は空自でしたので、当然りゅう弾砲の営業ではないです。

封をきらないまま、2冊ほど残っていました。

こういった販促グッズは、一般の方の手に入ることはほどんどないと思うので、結構レアかもしれません。(原子炉の圧力容器の営業あたりでも配ってたりするかもしれませんが)
オークションに出すつもりはありませんが、どの程度の値が付くものなのか気になります。
分かるマニアな方がいましたら教えてください。

組織防衛では結果マイナスに

昨年(2008年)9月に発生した海自の特警隊養成課程入校者の死亡事件ですが、海自警務隊が業務上過失致死容疑で地検に書類送検しました。

教官ら4人を業過致死容疑で書類送検 海自訓練死 」(朝日新聞09年6月10日)

以前の記事「特別警備課程での死亡事故について 」でも取り上げたこの事件、以前にも書いたとおり、たとえ訓練だったとしても、傷害致死事件とすべきだったと思いますが、あくまで訓練中の事故とする海自とすれば、業務上過失致死としなければならないのでしょう。
関わった隊員の将来のことを考えてのことかもしれませんが・・・

この事件は、本当に訓練だったとすれば、正直に言って信じられないほどの訓練管理の甘さ(訓練の継続可否判断や事故後の処置)が目に付いた事件ですが、事故そのものよりも、長期的な影響が気になります。

隊員の命よりも組織防衛を重視する海自(だけでなく自衛隊全体の問題でもある)の態度は、他の隊員やその家族に対して組織に対する不信感を与えたと思われます。
持続走(長距離のランニングのこと)訓練による死亡事故に対して、労災を認めないなどの事例(部隊ではなく中央が認めないようです)も合わせ、こういった事件が続くと若年労働人口が減少する状況において、優秀な人材のリクルートはどんどん困難になって行きます。

安易な組織防衛を行っていると、長期的には大きなマイナスとなるでしょう。

また、海自の組織には詳しくないですが、今回の事件は第1術科学校入校中の事件であり、特警隊の小隊長は、監督責任を含めても無関係だと思うのですが、この人まで送検された事には違和感を感じます。(送別のやり方が特警隊の慣例となっていたらしい事と関係があるのかもしれません。)

以下、記事全文のコピー
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 広島県江田島市の海上自衛隊第1術科学校で昨年9月、特殊部隊「特別警備隊」の養成課程の生徒だった3等海曹の男性(当時25)が、15人を相手にした格闘訓練中に意識不明になって死亡した問題で、防衛省は10日、現場で指導していた当時の教官や特警隊の小隊長ら計4人について、海上自衛隊警務隊が業務上過失致死容疑で広島地検に書類送検したと発表した。

 送検されたのは、特警隊の小隊長だった3等海佐(50)、近くで訓練を指導していた小隊長補佐の3等海尉(42)、訓練でレフェリー役をしていた教官の2等海曹(39)、男性と14人目に対戦した3等海曹(29)の計4人。

 発表によると、男性は08年9月9日、第1術科学校の体育館であった「徒手格闘訓練」に参加し、防具とグローブをつけて隊員15人を相手に順に1人50秒ずつ格闘。14人目に対戦した3曹のパンチをあごに受けて倒れ、意識不明となり、頭蓋骨(ずがいこつ)内の急性硬膜下血腫で同25日に死亡した。

 2曹は体育・格闘の担当教官だったが、男性が危険な状態だと把握せず、訓練を中止しなかった疑いがある。3曹は強いパンチを男性のあごに当てた過失の疑い、3佐と3尉は訓練の危険性を認識せず、事故を未然に防止するなどの注意義務を怠った疑いが持たれている。防衛省は、4人が容疑を認めているかについては「捜査中なので答えられない」としている。

 海自は、捜査とは別に事実調査を進めており、今後1カ月以内に最終報告をまとめる。防衛省は報告を踏まえ、関係隊員を処分する方針。
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臓器生産

軍事と全然関係ありませんが、興味深いニュースがあったので、取り上げてみました。

移植用臓器確保で画期的手法、ブタを使ってヒトの臓器を大量生産 」(テクノバーン09年6月5日)

豚臓器を人間に移植しても拒絶反応が起こらないよう遺伝子的に細工を加えた豚を生産し、移植用臓器を作るとのことです。
本来が豚臓器なのか人臓器なのかという点が異なりますが、士郎正宗氏のマンガ「攻殻機動隊2」に移植用臓器を豚で生産するシーンが出ていました。

医療が発展することは喜ばしい事ですが、遺伝子レベルで人間が弱化することにも繋がるでしょうし、果たして望ましいことかは疑問な気もします。

10年一昔と言いますが、SFがあっという間に現実になって来ているようです。私が年をとって、年月の流れを早く感じているだけかもしれませんが・・・

以下、記事全文のコピー
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臓器移植は内臓疾患に対する有効な治療法となるが、患者に適合する臓器を見つけることは難しく、臓器移植を待つ患者の多くが、臓器が見つからないまま死に至る場合が多いのが現実だ。しかし、このような移植用臓器を大量生産できる画期的手法が学術専門誌「iJournal of Molecular Cell Biology」に発表され大きな注目を集めている。

この研究発表を行ったのはShanghai Institute of Biochemistry and Cell Biology(上海生命科学研究院)のLei Xiao博士を中心とする研究グループ。

研究グループが発表した手法とは、遺伝子を操作を加えてブタの臓器をヒトに移植をしても拒絶反応が起こらないように変えた上で、更に、遺伝子操作が加えられたブタの幹細胞を使って移植用の臓器の複製を作るというもの。

研究グループは、その上で、実際にブタの幹細胞を製作することに成功。今後は、実際に、拒絶反応がでないように遺伝子操作を加えたブタを製作することで、移植用臓器の大量生産技術の確立を目指すとしている。
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仰天のコピー

街を歩いていると、こんなポスターを見つけました。

「憲法9条改正。」
「北朝鮮のミサイルから日本を守ります。」
憲法はまだしも、ミサイルから日本を守ります、にはビックリしました。
政党は幸福実現党。聞いたことのない政党名です。おまけになにやら怪しそうです。
家に戻りググッて見ると、幸福の科学にからんだ宗教政党・・・・。
リンクは張りません。アクセス元として記録が残るのもなんですので。興味のある方はググッて下さい。

某連立与党の宗教政党は、自らの事を宗教政党であるとは言っていませんが、こちらは公言しています。ポスターからも胡乱な雰囲気が出てますが、この辺に理由があったんですね。
ちなみに、私は敬虔な?無神論者、あるいは不可知論者なので、宗教政党は禁止しても良いとさえ考えてます。

さて、ミサイルから日本を守るとあった点が気になったので、どうやって守るつもりなのか、サイト内を見てみました。
すると、「北朝鮮が核ミサイルを日本に撃ち込む姿勢を明確にした場合、正当防衛の範囲でミサイル基地を攻撃します。」とありました。
以前の記事「敵基地攻撃に関する政治家の問題認識 」でも書いたとおり、ミサイル基地(あるいはTEL)に対する攻撃によって、弾道ミサイルの発射阻止を行うことは不可能です。
もちろん、純軍事的には攻撃を行った方がMDだけによって防衛するよりも確実なことは間違いありませんが、政治的な側面を考慮すると、マイナス面の影響の方が多いように思えます。

このあたり、技術的な可能性をちゃんと認識できないという点は、やはり宗教政党だからでしょうか。

F-22が高いかどうかはROE次第

ほとんどゼロかと思われてましたが、ほとんど針の先と言える程度とは言え、F-22を購入できる可能性が、ほんの少しは出てきているようです。
F22輸出解禁支持 イノウエ議員 売却価格は247億円 (産経新聞09年6月6日)
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ロイター通信は5日、米議会多数派民主党の重鎮ダニエル・イノウエ上院歳出委委員長がゲーツ国防長官と藤崎一郎駐米大使に書簡を送り、米空軍の最新鋭戦闘機F22Aラプターの輸出解禁に期待感を表明するとともに、輸出した場合、日本への売却価格は1機約2億5000万ドル(約247億円)程度になると伝えていたことを報じた。

現在、F22の輸出は軍事機密を守るため禁止されている。ゲーツ国防長官は5月の日米防衛首脳会談で、「オービー修正条項」と呼ばれる歳出法を理由に、日本への輸出は厳しいと伝えていた。歳出委員会が輸出解禁を支持すれば、F22を航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)の最有力候補と位置付けている日本側に取得の望みが出てくる。

米軍は1機約1億4000万ドルで調達している。日本に輸出する場合、輸出仕様にするための設計・改造費などを含め約1億ドルを上乗せした格好だ。7-9年で納入可能という。

F22はレーダーで捕捉しにくいステルス性を備えた世界最強の戦闘機とも言われている。ただ、イラクやアフガニスタンでの戦争に使われていないこともあり、ゲーツ長官は調達中止を決めた。これに対して、議会からは雇用の確保などを理由に生産継続を求める声が出ている。
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今回の記事程度で購入できる可能性を話しても詮無い事ですが、今回初めて具体的な価格が報じられていますので、果たしてコレが高いものに付くのか否かについて書いてみます。

輸出用にダウングレードしながら、その設計・改造費を上乗せして売ってくるというのは腹に据えかねる話ですが、まあこれは仕方がないでしょう。
ただしあくまで感覚的な話ですが、上乗せ分(1機1億ドル)は、本当に開発等で要する金額というよりも、この程度のふっかけなら買うだろうという思惑の金額に思えます。なにせダウングレードするだけで、飛行特性を変えるような改造はしないはずですから。
具体的な金額は、1機約2億5000万ドル(約247億円)になるとのことで、F-35を除けば、他のF-X候補機がだいたい1億ドル程度でしょうから、大雑把に言って約2.5倍の価格と言えます。

2.5倍と聞くと、おそろしく高いものに思えますが、完成していないF-35を除けば、他の候補機とは0.5世代以上の性能差があり、価格だけ考えた場合には、決して高いとは思いません。

ですが、ここで一つ重要な問題があります。
航空自衛隊の運用、特にその運用上の制限として課されるROE(Rules Of Engagement:交戦規定)を考えた場合、F-22は実に高いものにつく可能性があるのです。

F-22は、現状では世界最強の戦闘機です。演習でのキルレシオは、少し古いデータですが、ノーザンエッジ2006演習までに144対0(出典:軍事研究誌2007年5月号掲載の石川潤一氏の記事「F-22実戦行動で沖縄展開」)となっています。
ですが、これはF-22のアドバンテージであるステルス性能などを最大限に発揮できるBVR(Beyond Visual Range:視程外距離)を維持すればこそです。
実際、レッドフラッグ07演習では、格闘戦に持ち込まれたF-22が、F-16のサイドワインダーで撃墜判定されています。(出典:前掲記事)エンジン出力が大きいこともあって、F-117やB-2のように赤外放射を抑えることは困難ですし、ステルスと言えど近距離ではレーダーに映らない訳ではないからです。またF-22は、格闘戦で有効となるポストストール機動に優れる訳でもなく、オフボアサイト能力を持つ短射程AAMを搭載した最新式フランカーなどが相手の場合、格闘戦ではキルレシオが1(勝率50%)を切る可能性すらあります。

では、BVRを維持すれば良いということになりますが、そうは行かないかもしれないことが問題なのです。
航空自衛隊は、近年でも格闘戦での戦技競技会を実施していますが、これはなにも職人気質のパイロットが趣味でやっている訳ではありません。(そういう事情が無い訳でもないですが・・・)
「今時バカじゃないか」という声も(自衛隊内部からも)聞かれますが、空自には空自なりの理由、というか懸念が、その背景としてあるのです。
その懸念とは、一言で言えば政府に対する不信であり、フリーハンドで戦わせてもらえないかもしれないという思いです。
具体的にどういう事かと言うと、危機が発生した際でも、第3国の航空機が接近してくる可能性は排除できず、政府として一定範囲内に入り込んだ識別不能の飛行物体を、敵とみなして攻撃して良い、ということにしてもらえない可能性を懸念している、ということです。
また、自国あるいは友好国の航空機をレーダーやIFFなどにより、そうとは識別できない可能性もあります。(モード4を含めたIFFについて、確実なものだと考えている方もいるでしょうが、それはマチガイです。)
その結果として、VID(Visual Identification:目視識別)を行った上での戦闘を訓練しています。そしてこの状況は、当然ながら格闘戦になります。

もしF-22を購入できたとしても、VIDを必須とするようなROEの元では、F-22はそのアドバンテージを十分には生かせません。
そうなるのであれば、F-22の1機247億円という価格は実に高い買い物です。(具体的な金額が出てませんが、F-35でも同じことです。)

ROEは、決して固定的なものではなく、状況によって随時変わるものです。ですから、空自の懸念が杞憂である可能性ももちろんあります。
ですが、今まで政府(内局も含む)は事あるごとに自衛隊を縛ってきました。制服を着ていたものとして、正直政府(内局も含む)が自衛隊をオンハンドで戦わせてくれるとは思えません。
公開されていない運用関係の内規には、アレはしてはいけない、コレを行う際にはソレを行った上でなければならないといった規定が山のようにあります。
もちろん必要な規定もありますが、「余程自衛隊が信用できないんだな」と思わせるモノも決して少なくありません。

もしF-22を購入するのであれば、VIDなどを必要とすることなく、BVRでの交戦を可能とさせる(ROEを制約の多いものにしない)つもりがなければ、政府として高い買い物をすることになります。