ヤモリ来る

 

1月末、住処を壊され行き場を失ったヤモリを見付けた。

折りしもの寒波の最中、放っておけばそのまま凍えてしまう。自宅へと連れて帰った。

爬虫類なのだから冬は冬眠しているものだろうと思ったが、ネットで調べるとそうとも言えないらしい。適度の低温で代謝を落としてやり、そっとうずくまらせて置く位がちょうどいいような記述もある。

空気穴を開けたプラスチックのケースを用意した。

連れて来た空き箱から移し替えようと蓋を開けると、1匹はその瞬間を見逃さず、私の手に飛び移り、膝の上にジャンプ。そこから床へ飛んで、逃走を図った。

娘と二人で挟み撃ちにして捕獲。無事にケースに収納。その間もう1匹は、ただじっと物陰にうずくまって小さくなっている。こちらにも頑張ってもらってケースに移動完了。

隠れ場所を作り、霧吹きで湿気を保ち、お腹が空いた時の為にミルワームを数匹常に入れておいた。

ミルワームを食べる気配は全く見られなかった。隠れ場所に身を潜め、死んでいないかと不安になる位何もしないでうずくまっている時間がほとんど。代謝を落とすとはそういう事なのだから仕方ない所だけど、やっぱり心配だ。

 

          ヤモリは外来種?

 

2月27日の地元紙に「ニホンヤモリは外来種」という記事が掲載された。

東北大学の研究チームが調査した結果3000年前に中国から五島列島経由で九州に到着、本土へ渡ったと推察されるという。

3000年前……日本の歴史を本で調べると、旧モンゴロイドが暮らす縄文時代から、新モンゴロイドが移住して来た弥生時代へ移り変わる頃との事。

新聞には次のように書かれている

『外来種は、在来の生物に悪影響を与える侵略性から駆除対象になることもある。中国がルーツと判明した「3千年来の隣人」とどう向き合うべきなのか』

娘が悲鳴を上げた

「ねえ、止めようよ。3000年前でしょ?紀元前1000年でしょ?もう時効でしょ」

これを言ったら新モンゴロイドの血を引く現在の日本人も外来種になるんじゃないかなと、私も言う。

学術的にはどういう扱いになるのだろう。

 

            ヤモリ去る

 

2匹が我が家に来て1カ月が経過した。

ケースの中を、2匹とも動き回るようになった。もう大丈夫だろう。

自宅の周りに放したかったのだけれど、この辺りにはイソヒヨドリが常にいる。我が家の屋根にとまり、お向かいの外壁の虫か何かを盛んに狙っている。トカゲをくわえている所も以前に見ている。どこか他にしよう。

20年来誰も住んでいない、すでに廃墟同然になっている建物が近隣にある。そこだって鳥はいるだろうけれど、隠れる場所も多い。そこを選んだ。

ケースを開けると、地面に置く間もなく、1匹はいきなり、力強く飛び出した。そして一瞬で物陰に入り込み、その姿を消した。

もう1匹は驚いて隅に隠れ、じっと固まってしまって出て来ようとしない。我が家に来た時とちっとも変らない。ヤモリにもこんなにもはっきりとした個体差があるのだ。

手に乗せ、外壁に張り付かせると、静かに動き出し、隙間に身を隠した。

3月6日が啓蟄。生き物たちが目覚めるとされている季節。

昨日の夕方、コウモリが飛んでいるのを見かけた。すっかり暖かくなった。