の樹だと思うのですけど、忘れてしまいました。

まだ芽を吹く前です。

せっかくエナガやシジュウカラのいい止まり木になってくれていたのに……

 

 

正体不明の桜っぽい樹は今年も綺麗な花を咲かせた。

枝はどんどん伸び、花が散った後も、葉の綺麗な事と言ったらない。

樹の下に立つ度に、緑色の光が嬉しくて仕方ない。

ただ心配だったのは、幹がえぐれた深い洞。

あまり大きく育つと折れてしまうのではないだろうか?

支えが必要となるのでは?

そんな心配をしていた五月の最初、風の強い日に、樹は倒れてしまった。

洞は関係なかった。

根がすでに弱っていたのだ。

成長した幹と伸びた枝を支えるだけの力が根からすでに奪われていた。

可哀そうな事をしてしまった。

倒れた木は隣の土地の茂みとなっている笹藪に向かって倒れた。

すぐにでも片付けなければいけなかった所を、忙しい日々にかまけて、しばらく放置してしまった。

数日して、様子を見に行くと、樹はまだ枯れていない。

倒れたまま、葉はその色を保ち、何より枝に付いている小さな実が少し膨らんで来ている。

地に残った根が、諦める事なく、水を吸い上げ続けていた。

『まだ生きている……』

思い切って、様子を見る事とした。

それから一ヶ月以上。

実は食べられる程に大きくなった。

プラムだった。

やっと何の木か分かった。

倒れた枝から実を収穫した。

笹藪に倒れているのだから、楽な収穫では無かったものの、両手で包む位の量は採る事が出来た。

この樹の最初で、最後の収穫だ。

 

わが園のものとおもえば初わかな  はつかなりとも嬉しかりけり  樋口一葉

 

食べてみている娘に

「どう?」

と尋ねると

「全然甘くない」

「……ほんとだ」

でも、本当なら、きっとこれからだったと思います。

実は今回のこの件、かなり落ち込みました。