●中山七里 『恩讐の鎮魂歌』 講談社 | 新・駅から駅までウォーキング

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中山七里 『恩讐の鎮魂歌』
             講談社 2016.3.15発行 




恩讐の鎮魂曲/講談社
¥1,728
Amazon.co.jp




★本の内容(Amazon.co.jpより引用)


韓国船が沈没し、251名が亡くなった。
その事故で、女性から救命胴衣を奪った日本
人男性が暴行罪で裁判となったが、刑法の
「緊急避難」が適用され無罪となった。
一方、医療少年院時代の恩師・稲見が殺人
容疑で逮捕されたため、御子柴は弁護人に
名乗り出る。
稲見は本当に殺人を犯したのか?
『贖罪の奏鳴曲』シリーズ最新作!!
圧倒的迫力のリーガル・サスペンス!


★ここだけの話


『贖罪の奏鳴曲』『追憶の夜想曲』に続いて
弁護士・御子柴礼司が登場するシリーズ3作
目です。


ずっと読み続けてきましたが、御子柴礼司は
もはや悪徳弁護士ではありません。
むしろ必要以上に人の深層部分を探り出す術
にたけた人情派弁護士という印象を受けまし
た。
今回に限ってかもしれませんが。


ポイントとなるのは、「緊急避難」という
概念です。
その昔、刑法で習ったことを思い出しました。
あまり頻繁に出てきませんが、災害時には
起こりうる可能性があります。
自分が生き残るために、他の人に危害を加え
ても罪にならないという考え方です。


介護士の男性が殺されます。
その後、韓国船の沈没時に適用された「緊急
避難」で無罪となった本人だったことがわか
ります。
また医療少年院時代の恩師・稲見の一人息子
の死。


その周囲を探り出す御子柴。
いろいろなことが彼の努力で明らかにされ
ていきます。
そしてこれらがすべて一本の糸につながるの
です。
作者のこういうところがうまいですね。


しかしそれだけでなく、最後にもうひとつ
どんでん返しが用意されていました。
やはり中山七里の作品らしいところです。


『恩讐の鎮魂歌』は法で裁くことの難しさを
訴えた作品のような気がします。
同時に人間の奥深くに存在する情念を維持し
続ける、いわば復讐とよべるものを、今回
存分に感じ取ることができました。


御子柴の活躍する次回作、期待します。