●米澤穂信 『真実の10メートル手前』 東京創元社 | 新・駅から駅までウォーキング

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米澤穂信 『真実の10メートル手前』
         東京創元社  2015.12.25発行



真実の10メートル手前/東京創元社
¥1,512
Amazon.co.jp





★本の内容(Amazon.co.jp)


高校生の心中事件。
二人が死んだ場所の名をとって、それは恋累
心中と呼ばれた。
週刊深層編集部の都留は、フリージャーナ
リストの太刀洗と合流して取材を開始するが
徐々に事件の有り様に違和感を覚え始める。
太刀洗はなにを考えているのか?
滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執。
己の身に痛みを引き受けながら、それらを
直視するジャーナリスト、太刀洗万智の活動
記録。


『王とサーカス』後の6編を収録する垂涎の
作品集。


★ここだけの話


『王とサーカス』後の6編と内容紹介に書か
れています。
つまりこの意味は作者が『王とサーカス』を
発表したあとに書かれた6編ということです。
主人公の太刀洗万智のその後を描いている
わけではありません。
ですから彼女が、まだ新聞社の記者だった頃
のエピソードも出てきますので、決して成長
記録ではないのです。


6つの作品とも異なる語り手が登場し、その
相棒が太刀洗万智であり、彼女の生き方を
感じ取るというような書き方をしています。
毎回違う人物から見た彼女の評価は気になる
ところですが、正義感あふれる行動はいつも
変わりません。


彼女が真実をあばく6つの作品。
その中で「ナイフを失われた思い出の中に」
は、『さよなら妖精』に登場したマーヤの
兄がでてきます。
事件から15年後、仕事でモンテネグロの
事実上の首都ポドゴリツァ(確か15年前は
チトーグラードという名だった)から日本に
やってきたのです。
妹の友人だった万智に会うために。
ですが万智の追っている事件に協力するはめ
になります。
すべてが終わって、さて2人はどんな話を
するのでしょう。


1つ1つがジャーナリストとしての彼女の
生き様を見せつける内容となっています。
それほどのミステリ感はありませんが、1人
の人間をこれほど魅力的に育て上げてきた
作者の筆力はすごいものです。


今後も太刀洗万智の活躍を末永く書き続けて
ほしいと思います。