【お散歩日記 #20】
谷保駅と、ちいさなしあわせ。
text & photo by 文月
学校から帰る電車のなかで、益田ミリさんのエッセイ「今日のおやつは何にしよう」を読んでいた。
小説を読む時は、静かな場所が好きだ。だけどエッセイならば、別である。BGMがあると映画のような雰囲気が出て、非日常に浸れる。この日は、Selena Gomezのアルバム"Rare"の気分だった。
エッセイの中に、「エイスグレード」という映画を見た、と書かれていた。見てみようかなぁ、なんてことを考えていた。
電車の音、ヘッドフォンで包まれる音楽の音。本を読むひととき。そんな空間を味わいながら、ふと、ひとりじゃないような気がしてくる。
ひとりじゃないというのは、孤独ではないというのとは、まったく違う。
自分だけが孤独なわけじゃないんだなぁとか、小さなことに嬉しくなったり、悩んだり迷ったり、そんなふうに「生きている」誰かの存在を知るだけで、すこし救われる。
そうゆう部分を、この本は満たしてくれる気がした。
帰りの電車、駅のホームで、Suicaでメロンミルクという飲み物を買った。
価格は170円と少し高い。そうゆうのは無駄遣いだと、いつもぐっと堪えるが、今日だけはすこし贅沢をしちゃおう。よし。
うきうきとした気持ちで、自販機のボタンを押す。日差しの強いなか、たくさん歩いてきた1日のご褒美だ。
谷保駅の改札を出ると、ぱあっと開けた空が見える。それが綺麗で、ときどき、写真を撮ることがある。今日もその日だった。
鮮やかな夕焼けと、青空。空の隙間にできるグラデーションがとっても綺麗だった。
写真って、特別なものではないのかもしれない。上手くなくたっていい。
今目の前にあるもの。私が見えている景色、そのニュアンスを、切り取って残しておけるみたいで好きだ。