番外1 ψ 筆者模写 ムンク作「カール・ヨハン通り」F10

筆者にとって、当作品と「桟橋の少女たち」というムンクの二作が、美術史上数多知る名作の中でも別格に据えられる。「夜の絵画」というのも目から鱗であるが、感動が到達する我が心奥の場所が違う。こちらに向かうゾンビのような人の群れは無表情であるが、万言の無益を飲み込んですべてを語っている。窓の明かりで僅かに照らされる街は暗く、全ての音は強い力で吸い込まれたように静かである。何処か遠い所から響いてくる得体の知れないノスタルジー、筆者憧憬の「あの世とこの世の境にある風景」、おそらくムンクの生涯を覆っていた不安や恐怖すらも超越した、真の「シュールレアリズム」的世界があるかのようだ。