Ψ筆者作「パリ東駅」 F10 油彩

 欧米の対露姿勢は事の本質に及び得ない政治主義であり現象世界の域を出ない。旧東欧やウクライナの指導者は政治主義者であり、彼らがいかに欧米の「物資文明・文化」に憧れようと、アメリカがいかにその「力の論理」を行使しようと、事の本質に気づかなければ、愚かな歴史を繰り返し、数多の犠牲者を生むだけである。本質とは人間や国の生命、財産、生活保護の為の絶対的反戦平和であり、「モノカネ」や利害得失の世界で考慮される相対的「反戦平和」とは別物である。

 昨今内外のメディアから提供される情報は、そうした「本質」的視点から問題の解決を探るものか、アメリカ主導の、西側陣営の価値観、その世界戦略に沿ったものか、その意を汲んだ御用メディア込みの「大本営発表」であるかを見極める必要がある。そのメルクマールはアメリカ、日本、イギリス等関係国が過去どうであったか、自分達を棚に上げてないかを見れば明らかである。そしてそれは前述した通りろくなものではない。

 多くの「大本営発表」は明らかに政治主義的である。忠良なアメリカの隷属国である日本も当然そのお先棒を担ぐ。それは、端的に言えば、西側陣営を正義、ロシア、中国を悪とす宗教る「勧善懲悪劇」の設定に繋がる。昨今この時とばかり本邦では、対中戦略、改憲、核の共有などの主張が声高になって来ている。正に渡りに船、火事場泥棒的政治主義である。

 ロシアはヨーロッパから極東に及ぶ世界最大の国土を持つ。中国は世界最大の人口を持つ。核兵器はロシア一国でアメリカを凌駕する。この両国と友好関係にある国はいくつもある。それらはそれらで新陣営を構成できる。「勧善懲悪劇」を設定するということは、この中露中心の新陣営を敵に回すということである。   

 その新陣営は、冷戦時の東側陣営よりも巨大で強大なものとなる。この両陣営が対立するということは地球を二つに分断するということに他ならない。この方が遥かに恐ろしいことなのだ。それで平和が維持され、済が発展すると思う方がどうかしている。現象に目を奪われ、目先の利害を追うる者は、ちょっと考えると分かりそうなことにも気づかない。歴史を見れば明らかである。

 「大本営発表」の中には、「国連憲章違反」云々の今更寝惚けた様なことを言う向きがある。そもそも国連が戦争抑止のため役に立ったことなどない。アメリカの戦争行為には何も言わない。朝鮮戦争の時などアメリカ軍は「国連軍」を名乗っていたのである。ともかく、ロシアの行為は、その中にある「独立国家の主権は侵してはならない」という規定に反するということがロシア批判の中心的論拠である。それでは、その「主権」を超える価値は存在しないのか?例えば、中国のチベット・ウイグル問題、香港、台湾問題。どう贔屓目にみても中国の「主権」に属すとことなのは明らかである。香港は元々中国のものだったものを、アヘン戦争の勝利によりイギリスが強奪し、その後中国に返還したもの、台湾は毛沢東共産党と蒋介石国民党の内戦により出来た亡命政権であり、中国は一つと言っているのは北京だけでなく台湾もである。いずれも政治的にも歴史的にも民族的にも地理的にも国際法的にも中華人民共和国の「主権」に属すべきことは明らかである。1972年の田中角栄の訪中による「日中国交回復交渉」の結果、中国人民共和国政府を唯一の合法政府と認めたではないか。アメリカも国連も台湾を国家として承認していない。そのことを面と向かって言えない。だから、アメリカと日本の右派陣営が、「心にもなく」持ち出したのが「人権」と「民主主義」問題である。これらは「立派に」その主権を超えた価値観の設定ではないか!