Ψ筆者作「雨のノートルダム」 F5 油彩 

 先ずロシアの言い分である、ウクライナがNATOに入ることは自らの安全の脅威となり認められないというのが今回の侵攻の第一の理由である。EUは経済集合体であるが、NATOは対旧東欧圏、現対露の軍事同盟である。ロシアにしてみれば喉元にナイフを突き付けられることになる。実は半世紀以上も前、これと同じ状態にアメリカもおかれた。かの「キューバ危機」である。当時のソ連がキューバにミサイル基地を作ろうとしたが、これにアメリカが反発、ケネディは海上封鎖をし核戦争の一歩手前と言われた。アメリカにしてみればこれも「喉元にナイフ」となるだろう。この時はフルシチョフが折れミサイル基地を断念、戦争は回避された。

 筆者はこの例のように、欧米が何故ウクライナにNATO加入を断念するように言わなかったか理解できない。ウクライナがNATOに加入しないと早くから言えば、ロシアに侵攻の口実を与えることはなかった。少なくともNATO加入が、数多の戦死者、市民の犠牲、街の破壊、1000万以上の難民、原発の危機等と引き換えになるほど価値や意義あることとは思えない。第一、「NATOは集団安全保障」と言いながら現に戦争となっているではないか!現象世界の愚かさしか感じない。ウクライナのゼレンスキー大統領はコメディアン出身だそうだが、その辺りがフルシチョフのようなプロの政治家とはとても思えない。

 欧米は、ウクライナのNATO加入は「国家主権の問題である」つまり、ウクライナの自由であり勝手であると言ってこれを是認した。

 これも過去のことだが、アメリカは「一国が共産国家になれば周辺で次々共産国家が生まれる」という例の「ドミノ理論」によりベトナムに介入、グエン・ヴァンチュー、グエン・カオ・キの傀儡政権を作り、連日の雨霰の絨毯爆撃で数多の無辜の民を殺し、自らも6万の戦死者を出した。そして日本も、そのB52戦略爆撃機に沖縄嘉手納基地を提供し、ベトナム戦争を応援したのである。

 国家主権というなら、どの国がどんな政治体制を取ろうがこれもその国の自由、勝手であろう。これはどう説明できるのか!

 更にアメリカは、国連決議を経ず、「大量破壊兵器の〈無いこと〉を証明しろ」などという無茶苦茶な論理をもって第二次イラク戦争を仕掛け、数多の非戦闘員を殺戮した。CIAを使ってのの親米政権を作るための暗躍も数知れない。これらのことに関し、西欧も日本何も言ってないのである。ご都合主義も甚だしい。

 筆者は東欧のブルガリアに2回行ったことがある。ロシアを含めたその辺りはスラブ民族、東方正教会、言語・文字、その他生活習慣等で明らかに西欧とは違うのである。これを政治・経済の現象世界で割り切ろうとするのは無理がある。

 政治家・政治主義者は、自分たちに都合の良い現象だけを追い、歴史を含め「本質・真実」への視点が及ばない。実はこれが日本を含めた歴史の悲劇である。(つづく)