Ψ筆者作 上「モンサンミッシェル2」 F20 油彩
下「モンサンミッシェル1」(部分) F120 油彩


人ぞ知る名うての世界遺産である。本邦でもフランスを訪れるツアーなどでは必ず組み込まれる所で、東西の観光客で溢れ返っていた。前回の渡仏の際は余りの交通の便の悪さに断念したが、一度は見ておくべしと今回は高いホテル代覚悟のトライとなった。
パリからTGVでレンヌ、レンヌからバスで1時間強かかる。余りに知られた観光名所なので当初はさほどの期待はしてなかったが、今回の旅行では圧巻の一つであった。
それは、空の大きさである。今までこれほど風景の大きさを感じたことは無かったかもしれない。「空が丸い」と実感したのは初めてであった。360度水平線、地平線である、海と反対側も羊が遊ぶ原野が続く。その丸い空のドームに貼り付いた雲は、中心の影が濃い分輪郭がよけいまぶしく縁どられる。その巨大な透明ドームの中に、たった一つあるオブジェがモンサンミッシェルである。
ここについては一つ疑問に思うことがある。それは美術史上絵画作品としてのそれをほとんど見たことがないということである。古典主義系風景画も印象派も、隣のノルマンディーのエトルタやオンフルール、ルアーブル等は描いているが、ここの作品は筆者は知らない。画家達のフットワークからして交通の便の悪さは理由にならないだろう。
筆者が思うに、それは「単独モティーフ」の絵画的効果の脆弱性にあるように思う。「富士山は絵にするのは難しい」と聞いたことがある。それは「日本的精神論」から風呂屋のペンキ絵に至るまで、あまりにポピュラ―過ぎるということもあるが、造形的にはモンサンミッシェルと同じも単独オブジェだからである。
筆者もモンサンミッシェルは見たとおりそのまま描くしかない、むしろテーマは空と雲だと思った。