Ψ筆者作「青い世界の青いバラ」 F5 油彩
イメージ 1 青は可視光線の中でも紫の次に波長が短い。晴れた日の昼間の空の青さは、特定の物質の色ではなく光を反映した「状況」の色である。
 こうした青の波長も関係して青という色は物質を抽象化、正しくは非形象化する力がある。
 クロマキ―という映像の手法もこれを利用したものだ。例えば青い衣装を着た人間を同じ青い色で塗った壁の前に立たせると首だけしか見えない。 顔も青で塗ると、青の濃淡による凹凸しか見えない透明人間のようになる。こういう非形象化する力が青が他の色より最も強いということである。
 自然界にも青い物質は少ない。
 青いインコは人が作ったものだし青いザリガニは突然変異だ。「出藍の誉」の藍の実ぐらいしか思い浮かばない。チルチルミチルの「青い鳥」も捕まえることのできないものの象徴である。
 そうした中「ラピズラズリ」は貴重な青の顔料の原料であった。聖母マリアのマントの色にしか使わなかった時もある。(図像学上聖母マリアの衣装の色は、処女性を示す白以外には、赤と青に決まっていた。)
 シャルトル聖堂のステンドグラスの青は「シャルトル・ブル―」と言われ、一説にはカビの影響だとか爆弾の閃光の影響だとかまことしやかな説はあるが、今なお再現不可能と言われている。
 そして極めつけは我が「青いバラ」である。それは「不可能の代名詞」とされ、長く世界中の園芸家の憧憬、追求の的だった。バイオテクノロジ―で作ったサントリーの「青いバラ」は、未だ完全な青とは言えず、自然界での生育は難しいだろう。ついでにいえば、前に言ったことだが、、某外国メーカ―の絵具セルリアンブルーは15ML入り(普通は20ML)1本で8000円近くし、筆者の知る限り本邦では最高額である。
 青とはかほどに神秘と希少性にあふれている色なのである。そういう青を出したいと青バラを描くたびに苦労している。

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