フレスコ画は本来壁画である。壁画を実際に描くのは余程の条件が整備されない限り困難であろう。そこで壁画ではなく、他の素材同様、展覧会で発表したり、室内展示したり移動できることを前提とした、「パネル下地」の画法が求められるが、これが一筋縄ではない。
 フレスコは消石灰と砂を混ぜたモルタルが生乾きのうちに顔料を水のみで希釈して描く。他の絵具のようにメデュームは要らない。乾燥する過程で色彩は吸収され最後は透明な石灰の被膜で覆われるので堅牢な色面となる。
 先ずこのモルタル自体が重いので、モルタルを乗せる支持体も相当重いものでなければ支えられない。壁画の場合は石、コンクリート、レンガなど元々重いものなので問題はないがパネルの場合は、一考を要する。例えば建築用ラスボードなど石膏を糊で固めたものはモルタルを支えられるがそれ自体が重いし、「食いつき」を良くするための工夫も必要となってくる。筆者は耐水ベニアに超粗目の麻布を貼り基礎とした。                           イメージ 1
 ←パネル基礎
 
 多言を要するため仔細は省くがこのモルタルを作るのも面倒である。先ず家の中ではできない。庭やガレージ、作業小屋のような屋外が必要。やることは左官と同じなのだ。左官と同じく慣れるまで相当の修行を要する。
 
 
 
 フレスコに興味を持っていても実際には制作する人は少ない。描画そのものもいろいろ制約はあるが、何よりこの基礎作りが大変なのである。エネルギ‐の7,8割はこの下地作りにそがれる。
 これは、大粒の砂や砂利を入れた場合相当凹凸が出来る。この凹凸は中塗り以下の「食いつき」を良くするが、上手く処理しないと最後まで残り描画に影響する。このあと、中塗り、仕上げ塗りでだんだん平坦にしていく。重くなりすぎたり、支持体の強度が弱い場合はスタッコ(モルタル層)を薄くすることになる。イメージ 2
 
モルタルを塗った粗目の下塗り →
 
(つづく)