2013年12月1日付朝日新聞朝刊一面
≪日展洋画審査員に現金 入選求め作品写真も(見出し)≫
公募美術展「日展」の洋画分野で、主要会派の入選候補者が審査前に、応募作品の写真とともに現金や商品券を他会派の審査員に送っていたことが朝日新聞の調べでわかった。主要会派間で入選候補者を事前に推薦しあう慣行があり、金品は入選に向けて便宜を図ってもらう謝礼とみられる。
洋画の審査員は17人で主要7会派を中心に選ばれ、毎年10月に審査する。入選するには、他会派を含め半数程度の同意が必要だ。
審査員を何度も経験した日展幹部によると、審査員になると各会派が内部選抜した入選候補者100人以上から応募作品の写真が事前に郵送されてくる。約2千点の応募作品の中から事前に覚えてもらうためだ。「作品がよほど悪くなければ実際の審査で手を挙げる(入選に同意する)」という。この日展幹部はその大半に現金や商品券が同封されていたといい、「作品を事前に覚えるのに手間がかかるので、タダというわけにはいかないということだ」と自身も受け取ったことを認めた。
一方、複数の応募者も取材に対し、現金を同封して作品の写真を審査員に郵送したことを認めた。
中部地方の男性は所属会派の審査員に30万円を渡して他会派の審査員への口利きを依頼した。「他の審査員に話をつけた。その審査員に作品の写真と現金2~3万円を送りなさい」と言われ、昨年と一昨年に写真と現金を送り、2年とも入選したという。別会派の男性は今年九月、審査員経験者から「他会派も含め審査員に作品の写真と2万~3万円を送る準備をしなさい」と言われ、納得できずに日展への応募をやめた。
事後の謝礼も発覚した。日展前理事長の中山忠彦氏が所属する洋画会派「白日会」では10年以上前から、入選者から任意で1万円ずつ集めて自会派の審査員に謝礼を払ってきた。発起人が「(審査員から)心暖かなご指導とご配慮があった。御礼の気持ちを形であらわしてはいかがでございましょうか」と呼びかける文書を朝日新聞は入手した。今年の入選者約130人のうち約100人が応じ、中山氏ら審査員4人に計約100万円が支払われたという。中山氏は「会派として強制しているわけではなく問題ない」と話す。
筆者予想通り、当初の「書」から完全に「洋画」に問題が広がった。先ずこれも注釈を要する。先ず「内部選抜した入選候補100人」とは、即ち「内審査、下見会」の存在なくしてはあり得ないもので、それ自体が審査の公平性に悖るとは前回記事にも明らか。「主要七会派」とは、先に述べた通り、光風、一水、白日、示現、東光、創元、日洋各会である。「2~3万と作品写真」というのは依頼する側の数字で、記事の趣旨では審査員になると2~3万×100人以上、即ち2,3百万円以上が転がり込むということになる。後段の例は、先ず自会派の「ブローカ―画家」に口利き料30万円払い、話をつけたので他会派の審査員にも2~3万円払えと言われたというもの、この2,3万円も一人ではないだろう。つまりこの中部地方の御仁は一年につき4,50万払い、二年分の入選を「買った」ということになる。
審査員は各会派代表17人、半数程度で入選ということなので自会派の審査員だけでは足りない。だから他会派にも手を回せということである。
中山何某の「会派として強制しているわけではない」など噴飯ものである。強制される「心暖かなご指導と≪ご配慮≫」なんてあるだろうか!強制なら文字通り、後払いで入選を金で買うということになる。従わなかったら不利益を受ける懼れあるから従うのであろう。それに事の本質は、暗黙の因習、腹芸、裏で行われている不正の問題ではないか。強制などというすぐバレることをやるはずない。
断っておくが、これらは何処かの会派に所属している出品者の話である。「公募」の対象たる一般、無所属の出品者は、この当事者になることすらできない。
末端がこれだからヒエラルキーのトップの芸術院会員など数千万単位の金が動くという世評も頷けるというものである。
最早何をか言わんや!である。怒りや嘆きを通り越して笑ってしまう。一体こういう連中は創造者としてのプライドはないのだろうか!?何処かであったであろう、絵画芸術への愛や憧憬、自然や人間に通う純粋な造形モティベーション、日々の技術的切磋琢磨、これらが総てこうした行為で自ら卑しめ貶めてしまうことに気づかないのだろうか!?
勿論これは画家だけの責任ではない。筆者が「ガレキの山」と呼ぶ「画歴羅列主義」では「実績」は必要だろう。その画歴と役職でランク付けされるのが「年鑑評価型市場体系」である。このような価値観に頭のてっぺんから足の先まで支配されている市民社会に対しては何某かのアドヴァンテージを見せつけたい、そういうことだろう。
しかし、絵画芸術や絵描きの世界が総てこういうものだと思われては困る。自ら卑しめ貶めることを自ら許さないプライドある絵描きの存在を信じる!