以下は2013年8月9日付「落合莞爾」名でネット上に公開された文書である。
既に結審したことに関することであり、何故またぞろという気がするが、日付にあるごとくそれはつい一か月ほど前の新しいものである。その≪急告≫との表示も何のための急告であるのか、また「巷間の悪声」ともあるが、それが何を指しているのか不明であるが、事実をいえば筆者共著「佐伯祐三・哀愁の巴里」出版一年後でもあり、それに付随して以下の通り当ブログでも、「チタン白」以外の諸々の観点からも件の事件は「贋作」、「虚偽・捏造」に類するものとの論拠を示しており、念のため必要な一言を呈する次第である。なお判決もそのチタン白の件のみを根拠としたわけではない。
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さて、落合氏名義の当該文書に戻る。先ずこれを読んで納得できる人は余程の専門家を除きほとんどいないだろう。内容は、仔細で専門的記述によりいかにももっともらしく自己の主張の正当性を語っているいるように見えるが(これは落合氏ら「真作派」のレトリックの特徴である)、結論から言えばほとんど事件の本質とは関係ない。これはネットでも検索できる「チタン白」の科学的分析とその工業的開発に係る経緯を述べたものに過ぎない。ましてその道にどれほど造詣あるどんな人の筆によるものなのかも不明となっている。
一方判決にも影響を及ぼしたと思われる歌田、宮田氏ら修復専門家のチタン白に係る証言は、汎く認識されている客観的事実としてのものであり、これを自由心証主義に基づき採用した裁判官の姿勢にも合理性がある。
また彼らは専門家として正真正銘の佐伯作品を分析、修復した当事者であり、以下に仔細した通り、佐伯作品にはアナターズ、ルチル以前にチタン白そのものが使われていない。先の客観的事実とはこうした専門家としての経験に裏打ちされたものであり、単なる知見によるものではないということは明らかである。
(つづく)