
Ψ 筆者作 青バラシリーズ F0~F4 油彩
≪平和、自由、平等、繁栄、民主主義、言論の自由、法治、公共の福祉…≫これらは言わば国や社会を合理的に維持管理すべき規範であり方便であり、その限りにおいては結構なことであり、人間存在の社会的側面ではとりあえずは守るべきものとなろうが、内実は建前論であり総花的努力目標であり虚実混在であり御都合主義であり誠に胡散臭いものである。したがってその実体に関し、冷徹な視点や批判精神など相応の「知性」を以って対処しないと、文字通り「共同幻想」となる。
例えば、原発や米軍基地などもそうだが、ダム、企業誘致、飛行場、幹線道路等大規模施設は、「それが存在する地域に政府から多額の交付金が出、企業は地元に固定資産税納付や雇用で貢献し、その地域の経済に資する」と言うことで、これらが多く是認されし、沖縄でも福島でも日本中でそれを推進する保守政党が支持されてきた。
例えば、原発は「経済の繁栄」、米軍基地は「日米安保」による「平和維持」に繋がるという論理と札束で頬をひっぱたくような「恩恵」をちらつかせ、その支持をとりつけ現下に至った。しかし、原発はかくの通り、米軍基地は飛行機が落ち、米軍兵の婦女暴行等を目の当たりにし、初めてその問題点に気づく。つまり、その問題点を「想定外」とし「共同幻想」のみにしか視点を持たない、これが「保守」であり、その問題点を最初から指弾し、幻想に懐疑するというのが先に述べた知性というものだろう。
現在件の福島原発は、先行き見えない状況に陥っている。放射能汚染は農業、畜産、水産業、地場産業を窒息させ、汚染物質は土壌、水、大気を通じ向う10年否100年単位かもしれない、徐々に人間の生存環境に蓄積される。母乳にも既に検出されたという。ひとたびメルトダウンして溶け出した特定プルトニウムの半減期間は実に数万年なのである。避難住民は再び元の場所に帰れるかどうか判からない。犠牲は人間だけではない。家畜やペット、植物や水産物生態系全体に及んでいる。
「工程表」は絵に描いた餅という人もいる。そもそもその工程表を実行する現場作業員のことを考えているのだろうか?彼らは「加害者意識」故に決死隊的覚悟を以ってことにあたっているのかもしれない。しかし人権、人道上の話から言えばもはや限界は近い。被曝許容量をほぼ全員が超えるだろう。代替作業員はどこにいるのだろうか? 廃炉しようにも石棺措置すら容易にできないという、まさにこれは「国難」である!
≪向う30年以内に東海大地震の起こる確率は87%≫これは政府の「地震調査委員会」の報告である。そして1978年「大規模地震特別措置法」が制定された。これは8都県268市町村を対象地域とはっきり特定しているのである。静岡県はほぼ全域が含まれる。そしてそれは明日起こっても不思議ではないと言う。その真上に「浜岡原発」がある。ここは必ず壊れると言う学者もいる。どこでも「堤防補強」を言っているが、津波とは限らない。マグニチュードが小さくても直下型なら大きな被害が出る。「阪神淡路」は今度の「東北関東」よりはるかに小さいM7.3であったが直下型だったので件の大被害となった。
浜岡がやられれば最悪数千万人が被曝の可能性があるという説すらある。少なくても「京浜」、「阪神」の二大経済圏は分断される。日本の経済、否日本そのものが沈没するかもしれない。
こうした中、性懲りもなく「原発をなくせば経済が…」を言い、原発の現状、将来には沈黙しながら「がんばろう日本」のお題目を唱える。経済の発展、繁栄が人間の幸福に通ずるというなら、何故先回りして人間の幸福の方から現状、将来を見ないのか!?頑迷な保守とは最早「国賊」である!
追記
当記事アップ後の5月6日午後7時過ぎ、菅首相は緊急記者会見を開き、中部電力に対し浜岡原発の全号機について運転の停止を要請した。主たる事由は上記拙文にある、≪向う30年以内にM8以上の「東海大地震」の発生確率は87%以上である≫との政府機関の評価を受け、その差し迫る危険性を考慮したものとされた。
したがって、上記当該部分について、その後その主張に適う措置が一応とられたと言う事実を述べる。一応というのは、「安全な」堤防建設までの数年間の間の「停止」に留まると言うのでは全く意味がないといということである。被害は津波に限らない。直下型破壊もある。
いくつものプレートが交錯し、四面海に囲まれ津波の危険性がある地震国である本邦に置いて、原発の危険性は全国に及ぶ。とくに、東海大地震発生が見込まれる地域とフォッサマグナの地層で繋がる新潟や北陸地方は数多の原発がある。総ての原発を可及的速やかに廃止し、天然ガス、風力、太陽光、バイオマスなど新エネルギーに代えるべきと考える。