Ψ 常設ギャラリー掲示作「森の夏2」モノクロ(F30・油彩)  画像削除

 明度、彩度、色相とは画像ソフトでも分析される、ものの色彩を構成する三要素である。絵具を使用する絵の勉強法では、このうち明度に係るものについて特に専門に追究するということはないし、モノクロのデッサンでもそのことを強く念頭に置くということもあまりしない。
 明度とは読んで字のごとく「明るさの度合い」である。別の表現では、「トーン」、「調子」、「グラデーション」、「色幅」などとも言われる、極めて重要な造形上の概念である。
 したがって、この明度の的確な把握とは、古典絵画の世界においてはその成否に係るものであるし、今日においても美大入試などに備える勉強法では石膏デッサンなどを通じ徹底的にやらされることである。
 古典絵画で行われる、グリザイユ(灰色)、カマイユ(褐色)、ヴェルダイユ(緑系)などモノトーンによる下絵作業も、フォルムやトーン、立体感などの的確な把握は先ず色彩を抜いて行った方がやりやすいと言うこの合理的意義による。
 印象派以降、色彩やマティエールや諸々の「絵づくり」が優先されこの明度への関心は薄らいできたが、今日においても「この作家は絵を知ってるな」と感じさせる絵や、特別な絵画的美しさを感じさせるもの、絵のバランスやメリハリが心地良いものとは、作品傾向に関わらずやはりこの明度の的確な把握に起因するものが多い。
 これは「ヴァルール」に破調や狂いがないのみならず、そのヴァルール自体が美しいからである。このヴァルールとは一般に「色価」と訳されているが、それは≪ものともの、もののパートとパート相互間の、明度、彩度、色相に係る関係性≫と言う概念である。即ちヴァルールとは、色彩を除いた明度にも関係する概念であるから「色価」とは必ずしも的確な訳ではない。
 さて、上掲のように、PCの機能を使い、自分の色彩作品の色を抜いてみるというのも、明度の勉強方でよいかもしれない。この種の作品傾向において、調子の「飛び」、繋がりが悪いものはこのようにすると一目瞭然となる。