普通油彩は、何度も色を塗り重ねる。下層の色が、乾燥、半乾燥、濡れている状態、それぞれに応じ重ねられる色彩も違ったニュアンスになる。このニュアンスが画面のコクともなる。その乾いた下層と描き加えられた上層の絵具同士の関係は当然供に油性であるが、地塗層と「第一描画層」の関係も供に油性と言う意味では全く同じである。
即ち前者は安全で後者が危険などというのはあり得ない。この場合「食いつき」が悪くなる恐れがある場合とは下層をペインティングナイフで平滑に塗り過ぎ、かつそれが完全乾燥した場合である。その場合は一度下層に粘性の強い、例えばスタンドオイル、ダンマル樹脂、ベネチアンターパンタイン、あるいはその混合液、または油性のメディウムなどを塗る、あるいは荒めの紙やすりをかけるなど「抵抗」をつける。私は前記液を塗ったあとドンゴロスの毛を「繋ぎ」に振り撒くなどをする場合がある。要は筆跡の凹凸など「ひっかかり」があればよい。
繰り返すが「食いつき」が悪くなることを恐れていたのでは、絵具を塗り重ねて深い画面をつくることは出来ない。私は絵を描き始めた早い時期から地塗りをしてるが、そのようにして自然剥離した例はない。
そもそも無垢のキャンバスにいきなり描き出し、かつその第一層で終わらすなどというタブローはほとんどない。仮にあったとしてそれが安全のためというならお笑い種だ。生きてるかどうかわからない、かついくらでも修復可能な、何十年か先の心配のため、今の造形性を犠牲にするというのは愚の骨頂であろう。第一、支持体が油性キャンバスの場合、その表面と描き出し層との固着力なども保障の限りではない。事実そのようにして描いた薄塗りの絵をキャンバスの裏から、爪を立ててたら他愛なく皹が入ったと言う経験がある。地塗り込みの厚塗りならその種の皹は表面まで届かないだろう。
縷々述べたのは一般的に広く行われている「絵作り」に関することであるが、「地塗り」の意義は「古典主義・写実主義の傾向絵画ではさらに大きくなる。先ずそれによりキャンバス目を潰して平滑な画面にする。こうすることでキャンバス目に支配されない絵画空間の基盤となる。そしてその後の描写主義がやり易くなり、描写の「効果」も大きくなる。
「地塗りについて1」記事の冒頭の拙作は十分な地塗りの上に描いたものだ。コスチュームなど布の質感の違いやハエが飛べそうな空間感の表現には平滑な画面は必須のこと。
キャンバスに描かれた古典主義絵画は概ね平滑な、キャンバス目を潰す程度の厚塗りである。ただこれは無垢なキャンバスと違い、鉛筆、木炭などでトーンをつけながらのデッサンは取りにくい。ここにグリザイユ、カマイユなど、地塗りとデッサンの双方の要件を満たす画法の意義がある。
(おわり)
即ち前者は安全で後者が危険などというのはあり得ない。この場合「食いつき」が悪くなる恐れがある場合とは下層をペインティングナイフで平滑に塗り過ぎ、かつそれが完全乾燥した場合である。その場合は一度下層に粘性の強い、例えばスタンドオイル、ダンマル樹脂、ベネチアンターパンタイン、あるいはその混合液、または油性のメディウムなどを塗る、あるいは荒めの紙やすりをかけるなど「抵抗」をつける。私は前記液を塗ったあとドンゴロスの毛を「繋ぎ」に振り撒くなどをする場合がある。要は筆跡の凹凸など「ひっかかり」があればよい。
繰り返すが「食いつき」が悪くなることを恐れていたのでは、絵具を塗り重ねて深い画面をつくることは出来ない。私は絵を描き始めた早い時期から地塗りをしてるが、そのようにして自然剥離した例はない。
そもそも無垢のキャンバスにいきなり描き出し、かつその第一層で終わらすなどというタブローはほとんどない。仮にあったとしてそれが安全のためというならお笑い種だ。生きてるかどうかわからない、かついくらでも修復可能な、何十年か先の心配のため、今の造形性を犠牲にするというのは愚の骨頂であろう。第一、支持体が油性キャンバスの場合、その表面と描き出し層との固着力なども保障の限りではない。事実そのようにして描いた薄塗りの絵をキャンバスの裏から、爪を立ててたら他愛なく皹が入ったと言う経験がある。地塗り込みの厚塗りならその種の皹は表面まで届かないだろう。
縷々述べたのは一般的に広く行われている「絵作り」に関することであるが、「地塗り」の意義は「古典主義・写実主義の傾向絵画ではさらに大きくなる。先ずそれによりキャンバス目を潰して平滑な画面にする。こうすることでキャンバス目に支配されない絵画空間の基盤となる。そしてその後の描写主義がやり易くなり、描写の「効果」も大きくなる。
「地塗りについて1」記事の冒頭の拙作は十分な地塗りの上に描いたものだ。コスチュームなど布の質感の違いやハエが飛べそうな空間感の表現には平滑な画面は必須のこと。
キャンバスに描かれた古典主義絵画は概ね平滑な、キャンバス目を潰す程度の厚塗りである。ただこれは無垢なキャンバスと違い、鉛筆、木炭などでトーンをつけながらのデッサンは取りにくい。ここにグリザイユ、カマイユなど、地塗りとデッサンの双方の要件を満たす画法の意義がある。
(おわり)