「今まで自分が描いて来た絵がつまらなく思えてきた、絵と写真とは違うと思えてきた、もっと生きた絵が描きたい」とある人が語った。この人、私の見る限り潜在的な造形力は並でない。長年ポートレートを描いてきたそうだが今模写が主流だ。先ず油絵についてキャリアがないのに比し、よくこれだけこなせるものだと驚く。普通はそう簡単にはいかない。素材の重たさや乾きの遅さに手を焼いた苦闘の奇跡が現れるものだ。そうした戸惑いは微塵も見られずグイグイと仕上げている。ポートレートの表現力もよく他で見かける背伸びした一杯のものでない、無理のない、骨太のキャパシティーを感じる。ソフトパステルも何年もキャリアのある人が描くもののようだ。
 おそらくポートレートも模写も本気でやれば一級の描き手になるだろう。その意味ではもう誰の助言も教示もいらないだろう。
 その人が冒頭に述べたようなことを語った。私の立場からすれば歓迎すべきことだ。つまりそういう資質を本格的な絵画芸術に生かさない手はない。その数奇な人生に照らしてもそれを何らかの表現に結び付けないのは惜しいと思う。
 勿論決定するのは本人だ。今までのようなものが一番合ってるというなら何も文句はない。しかし件の意思がある以上私は私なりの立場で問われた事に答えて来たしこれからも答えたい。そういう人に「これからも写真をよく見て頑張ってください」と言えるだろうか?冒頭の彼の不満は発展への入り口なのである。
 以下はその回答に当たる従前からの私の見解と同趣旨の他者の見解である。
 
私の見解
http://blogs.yahoo.co.jp/asyuranote/585661.html
≪私は以下は一定に是認している
〇模写については先達の技法を「追体験」し自己の造形性の参考にすると言う意味では有効な修行法。
〇「写真に「描かされる」ことのない、即ちそれをコントロールできる造形性や自己の絵画世界有している描き手が「資料」として写真を援用すること。及び取材の効率のための同左。
〇ハイパーリアリズムなどの特別な表現による同上。
〇肖像画など職業的要請に基づくものの同上。≫

画家1の見解
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=GN&action=m&board=1000003&tid=a4ia4a6a47a4bfa4ia4a6a4dea4afa4aba41a4ka4na1a3&sid=1000003&mid=7699

画家2の見解
http://www003.upp.so-net.ne.jp/ikkigaki/f-enohanasi/sissly.htm
ここのポイントは≪写真から描いていたのでは百年待ってもデッサン力はつかな い。絵というものは不安と緊張のなかから生まれるのだ


オリジナリティーに係る転写の問題提起
http://www.jttk.zaq.ne.jp/afk/dl/dl116.html
ここのポイントは≪少し描いてみればすぐに解ることだが、実体を見て描くより写真を見て描くほうがはるかに簡単である。さらに、写真を見て描くより絵を見て描くほうが容易である。