佐伯祐三が作ったとされるキャンバスを再現してみた。伝えられている情報は複数あるがその原理を踏まえ画面の安定に配慮しつつ一応こういうものだったであろうという感じのものができた。この半吸収地を作るのは初めてでかなり手探り状態で後からああしとけばよかったというとこはあるが初めての割にはまぁまぁだろう。
以下覚え書き。
テンペラなどの支持体とする場合普通はパネルに麻布を「貼って」その上から下地剤を塗る。今回の場合は木枠に直接麻布を「張って」から下地剤を塗る。これが先ず難しい。麻布は水分を得てビローンと伸びてしまう。最初からこれを計算するが無理に強く張りすぎると乾燥後、極端な場合木枠を曲げるほど張りすぎてしまう。
かといって撓んだままだと均一に塗れないし折れ跡、たわみ跡がついてしまう。張る前に膠引きするのはパリンパリンの凹凸が出来て難しい。一度麻布を洗濯して乾かしある程度収縮させておくのが良さそうだ。
乾燥後も雨の日などはキャンバスの裏側が湿気を吸いどうしても伸びる。この収縮の繰り返しが亀裂の一因とも言われるのは普通の油性キャンバスでも同じこと。膠による弾力のない硬い支持体なので物の角が当ったりすると跡が元にもどらないかもしれない。裏も塗ることも一考。(私はテンペラ吸収地はパネルの裏も塗る)
最大の難所はなんと言っても「乳化」だ。バランスを欠くと油性と水生の分離を生む。油が多いと「油ダマ」ができる。膠の温度も難しい。冷えすぎるとゼラチン化してしまう。暖めすぎると逆に乳化が難しくなる。あるいは刷毛ムラ、チジミ皺や気泡、気泡がはじけた跡の「クレーター」など温度差、乾燥時間差等により問題が生じる。一部でそれらが残ってしまった。これは仕上げ塗りや研磨により改善されるが、大勢に影響ないし佐伯の画風に適った、委細構わない荒削りな画面もある程度残すべきと考えこれらは省いた。
少なくても伝えられている油シミ、膠のツブツブ(乳化の不完全)はない。
今回のもう一つのポイントは「マルセル石鹸」だ。これは安定性とアルカリの作用について将来に向かって不安を残すが、今回みる限りその役割は以外に大きいと思った。。「エマルジョン」の意義は前回述べたので割愛するが、この半吸収地の技法は実は石鹸も鶏卵も使わずつ混入のプロセスを換えるだけの技法もある。しかし石鹸を入れると確かに馴染みはよくなる。ドロッとした混合液に油玉のようなツブツブが残っているがこれがサラッとなる。ただ石鹸の分量は勘。
乾燥後の画面がスベスベしてて絵の具の乗りが不安だったが、ちょっと筆を走らせた限り問題ない。確かに当初は艶の失せた吸収地の感触がある。これは「早描き」に繋がるかもしれない。
使用材料
〇麻布
〇膠
〇亜麻仁油
〇白亜(体質顔料)
〇亜鉛華(白色顔料)
〇マルセル石鹸
以上
以下覚え書き。
テンペラなどの支持体とする場合普通はパネルに麻布を「貼って」その上から下地剤を塗る。今回の場合は木枠に直接麻布を「張って」から下地剤を塗る。これが先ず難しい。麻布は水分を得てビローンと伸びてしまう。最初からこれを計算するが無理に強く張りすぎると乾燥後、極端な場合木枠を曲げるほど張りすぎてしまう。
かといって撓んだままだと均一に塗れないし折れ跡、たわみ跡がついてしまう。張る前に膠引きするのはパリンパリンの凹凸が出来て難しい。一度麻布を洗濯して乾かしある程度収縮させておくのが良さそうだ。
乾燥後も雨の日などはキャンバスの裏側が湿気を吸いどうしても伸びる。この収縮の繰り返しが亀裂の一因とも言われるのは普通の油性キャンバスでも同じこと。膠による弾力のない硬い支持体なので物の角が当ったりすると跡が元にもどらないかもしれない。裏も塗ることも一考。(私はテンペラ吸収地はパネルの裏も塗る)
最大の難所はなんと言っても「乳化」だ。バランスを欠くと油性と水生の分離を生む。油が多いと「油ダマ」ができる。膠の温度も難しい。冷えすぎるとゼラチン化してしまう。暖めすぎると逆に乳化が難しくなる。あるいは刷毛ムラ、チジミ皺や気泡、気泡がはじけた跡の「クレーター」など温度差、乾燥時間差等により問題が生じる。一部でそれらが残ってしまった。これは仕上げ塗りや研磨により改善されるが、大勢に影響ないし佐伯の画風に適った、委細構わない荒削りな画面もある程度残すべきと考えこれらは省いた。
少なくても伝えられている油シミ、膠のツブツブ(乳化の不完全)はない。
今回のもう一つのポイントは「マルセル石鹸」だ。これは安定性とアルカリの作用について将来に向かって不安を残すが、今回みる限りその役割は以外に大きいと思った。。「エマルジョン」の意義は前回述べたので割愛するが、この半吸収地の技法は実は石鹸も鶏卵も使わずつ混入のプロセスを換えるだけの技法もある。しかし石鹸を入れると確かに馴染みはよくなる。ドロッとした混合液に油玉のようなツブツブが残っているがこれがサラッとなる。ただ石鹸の分量は勘。
乾燥後の画面がスベスベしてて絵の具の乗りが不安だったが、ちょっと筆を走らせた限り問題ない。確かに当初は艶の失せた吸収地の感触がある。これは「早描き」に繋がるかもしれない。
使用材料
〇麻布
〇膠
〇亜麻仁油
〇白亜(体質顔料)
〇亜鉛華(白色顔料)
〇マルセル石鹸
以上