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Ψ筆者作「夜のカフェ」 F3油彩

 パリを発つ前の日、この街に「別れの挨拶」でもしとこうと思い夕暮れ時モンマルトルの丘に登った。
 サクレクール前の階段に腰を下ろし暮れなずむパリの街を見下ろした。この街は緯度が高いので夜の8時過ぎても夕方のように明るい。若者や老夫婦が何をするでもなく、同じような時を過ごしている。
 嗚呼、いいなこの街!ちっとも無理しているとこない。同じ貧乏するならこういうとこのが絶対良いな!中身が通じない言葉なら、いっそ全く通じない方が頭に来る事ないし喧嘩しなくていいし。「故郷は遠きにありて思うもの」って言うしな。
 煙を吐くことのない煙突や明かりが灯りる窓窓をみながらふとそう思ったりした。

 モンマルトルの丘の上にテルトル広場というのがある。パリに行ったことがある人なら必ず行くとこ。世界中から集った絵描きが観光客相手に似顔絵などを売っている。
 その中の日本人とトモダチになった。あれは数が多くローテーション制になっているそうな。例えば「店」を出せるのは月、木だけであとは自宅待機か、付近で客を捕まえカフェかなんかで「商売」をするなど。然るべきとこへ申請して一定の税金も納めるらしい。
 そのなかに中国人らしい画家がいた。これは上手かった!普通肖像画は輪郭からアタリをとりながら、包囲網をだんだん狭めるように形を決めていくが、その画家はいきなり目のディテ-ルから始める。
 仕上がった時はちゃんと収まり、似てるし立体感等もでてる。このような描き方は平山郁夫が風景スケッチでやっていた。相当の「慣れ」が必要だろう。
 自分の「造形ポイント」を持った画家にはどんなアカデミズムも適わない。 

 モンマルトルの楽しみは思わぬところで「見慣れた光景」に出会うという事。私もあった。サクレクールの裏側の階段をおりていたら途中フランス人らしい若い女の子に「パードン、ムッシュー!」と日本では絶対に言われる事のない(当たり前だけど)声をかけられた。シャッターをおしてくれということだった。ちょうどよかったので私も頼んだ。
 しばらく歩いて何気なく振り返ると「ん!?、こ、ここは≪コタンの袋小路≫だ!!」私の画室に昔から飾ってあった、ユトリロが描いた、正にその場所であった。これには感激した。あの女の子に遭わなければここにはこなかったかもしれない。

 そんな古き良きモンマルトルはちょっと歩かなければならない。テルトル付近は観光地なので、レストランなんて日本語のメニューがあったりして白気たりする。