せっかく旅をするなら、溜め息が出るほど素敵な空間で目覚めたい。
「どうせ寝るだけ!」という宿選びは、独身時代に置いてきた私です。
でも夫は言う。
「宿は寝るだけ。ごはんが美味しければ民宿でいい」
旅のたびにぶつかる、この価値観のズレ。
過去には「空間は完璧、でも食事が惜しい…」という苦い経験もあった。
だから今回は、絶対に妥協しない。
長男の小学校卒業祝いの旅行。
家族の一生の思い出に残るような時間にしたい。
そう決めて、ひたすら検索画面をスクロールしていたときに出会ったのが、広島・鞆の浦の古民家宿だった。
このときまで「鞆の浦」という名前すら知らなかった。
アニに聞いてみると、「“崖の上のポニョ”の舞台だろ」と即答。食だけじゃない、この人の知識量よ…。ちょっと悔しいけど、さすがだ。
実際に訪れた鞆の浦は、まるで時間が止まったような港町だった。
昔から潮の満ち引きを待つ“潮待ちの港”として栄えた場所で、その名残なのか、時間の流れまでゆっくりに感じた。
古民家の扉を開けた瞬間、空気が変わる。
静けさと、やわらかな光と、どこか懐かしい匂い。
いちばん驚いたのは、子どもたち。
それまで今回の旅のハイライトは「フェリー!」だったのに、宿に着いて数分で「ここが一番!」に塗り替わった。
ふたりの日記にも、びっしりとこの宿のことが書かれていた。
食事も本当においしかった。
▼こっちは子どもごはん。
家族みんなでカウンターに座り、シェフと食材や土地について話す時間。
こんな旅ができるようになったんだと、ふたりの成長も感じた。
フェリーの旅情すら上書きしてしまうほどの場所。
それが、鞆の浦だった。















