古いサーファーなら知っていると思うけど、外房の大原と御宿(おんじゅく)の間に、洞窟を抜けて浜に向かうサーフポイントがあった。
断崖絶壁の岩場の下にある、数十メートルほどの小さな浜。ビーチからはクルマが見えないので、車上荒らしで有名だったそうだが、人工物が何もない、自然の音しかしないその浜辺は、時代、場所、すべてを超えて、なんとも不思議な気分に浸れて大好きだった。当時飼っていた♂イヌを連れて、しょっちゅうその浜を訪れてはリード無しでぶっ放したものだ。
 
で、「サーフポイントがあった……」。
なぜ過去形かというと、何年か前、落石事故があって家族連れが亡くなったとか、何人もが崖の上から身を投げたとか、ウワサはいろいろあるようだけど、ある日ふらりと訪れてみると、鉄の檻で入り口が封印されていた。ゴツい鎖がグルグル巻き付けてあり、大きな南京錠でロックしてあった。ショックな光景として私の心に刻まれた。


先日、夏休みで房総に滞在していたとき、その日は風が強すぎて、プールにも海にも入れない。ヒマそうな男たちが(夫と長男ですが……)部屋のなかで退屈そうにゴロゴロしていたので、ドライブでもしようかと家族全員クルマに乗せた。あの浜を探してみよう。



まずは御宿へ。
「このあたりをドライブするなんて、お父さんがまだ生きていたとき以来よ」と、ばあさん(実母です)は懐かしそうだった。



ガッツ(次男)の肌がふたたび乳児湿疹でガサガサに滝汗
海風は肌にいいんだと大昔の人みたいなことを言い、強風の御宿で海風浴。早く治って。



さて、いよいよ例のビーチ探し。

エグさん(夫)は昼くらいからそうそうに酒を呑んでいたので私が運転。小猿(長男)、豊(イヌ)、行商気分でベンチシート移動。ばあさんとガッツは後ろ。



「ドン・ロドリゴ上陸地」と書かれた看板。なんだそれはと、クルマを止める。



このあたりは地層がむき出し。
雰囲気は良いのだが、やはり崖崩れや落石が多いのだ……。

結局、例のサーフポイントは見つけられなかった。このあたりかなというのは、なんとなくあったけど、たぶん鉄扉を草や木が覆った。自然の勝ちというわけだ。


後日、基地から近い小料理屋でみんなで呑み、代行を呼んだ。
ドライバーの男性にその浜の話をしたら、「あそこ、めちゃくちゃ出るって話ですよー! 地元民は絶対近づきません!」と言っていた
オバケ

あと、その旅ではエグさんとサーフィンした。エグさんは「ドン・ロドリゴ」というフレーズが妙に気に入ったそうで、サーフィン中ずっと心のなかで「ドン・ロドリゴ」を連呼していたとか(笑)。
私はというと、後から海に入ってきた細くて真っ黒なサーファーが、TRFのSAMさんに似ていて、沖へパドルしながら「
EZ DO DANCE」を口ずさんでいた。

そんなふうに過ごした外房の旅から戻り、もう1週間。ああ、夏が終わってしまう。
 
今日、仕事部屋でゴソゴソ探したら、あの浜の写真が出てきた。

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いまは亡き、愛すべきアホイヌのへんこチン♂
ひどく痩せっぽっちな22歳の私……
ポーン


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