愛しい3の日を君に贈る -9ページ目

愛しい3の日を君に贈る

この人生を命ある限り届けたい。

今でも忘れられない出来事


お母さんが帰宅する17;50分


カシャカシャと大量のビニール袋をもち、勝手口が開く。

時間になればそんな母親をいつも出迎えていた。


「おかえり。」

「あ、ただいま。」

目を合わせた挨拶は数えるほどくらいでお帰りの挨拶はいつも横顔

それくらい仕事と家族を養う家事の両立は簡単じゃない


あの頃の私はいつものことで特に何も感じなかった。



父親と母親はあまり喧嘩をしない。

…しないと言うか、出来る時間もそれほどなかった


3人も子供を持つ母親の心には満たしきれない育児とジレンマが積み上がっていった


特に父親は働き盛りで帰宅時間も遅い。

父親を出迎えた記憶は無いに等しい。


「家庭よりも仕事」

父親にとっては、男としての誇り、父親としての役目であり、家庭を守ることだった。


当然、母親は、ストレスたっぷりの仕事から帰宅し、買い物してきた食材をなれた動作で仕舞いながら、静止できない騒がしい子供らの声をバックミュージックの如く、夕食を作る。

後片付けに、お風呂、寝かしつけ…母親の顔よりも背中を見てきた記憶が育児というものを物語っている。



同居であれば、祖母に手伝ってもらうのだろうが、それをあえて選択しなかった。

自分の育ってきた家庭で幾度となく嫁姑の関係や自身の母の我慢を見続け母親には痛烈に消したい記憶として刻まれているからだった。



話を戻す

その日は暗い暗い夜だった…


「何で分かってくれやんの!」

「何が!」


初めはそっとして聞いていたが

ボリュームが家中、大音量に鳴り響き始めた。


…大大大喧嘩。



「やめて。お願い。やめてよ⁉︎」

2人を見上げて2人の間に入り必死に喧嘩を止めようとしたのは…

到底2人の背に届きそうもない自分だった。


きっと、同じ空間にいたはずなのに…

兄や弟の姿はない



「もういい」



ガラッ!

タッタッッタ…



「お母さん!」

真っ暗な外へ飛び出してしまった。


「…」

何が起こったのか

何でそうなったのか


どうして追いかけてやらないのか…


「お母さん!」

母親の後を追いかけ…車の中で泣いていた姿を見つけたのは、それ以上に号泣する自分だった。


幸い鍵がかけられていなかったことで何も言わず、助手席に座り…

裸足の母親に何も声をかけてあげることがでずにいた。


ただ、傍にいることしか出来なかった。


この喧嘩がまるで全てを引き裂いているように感じ、自分は生きた心地がしなかった。

もう二度と両親が一緒にならないかもという覚悟さえ感じていた。


その日は生まれて初めて母親の涙と一緒にはだしのまま過ごした夜だった。