日本に帰るため、最後に大事な形見として先生から八極棍という棍棒の武器術を習っているが、八極棍を日本人で正式に習えたのは僕が初めてになるそうだ。
元々台湾に八極拳を広めた劉雲樵老師は、八極棍が得意だったが古い弟子でもよっぽど心を開いた者にしか教えなかったため、台湾でも八極棍ができる八極拳士はあまりいないらしい。
ましてや、日本人で八極棍を習えた者など皆無なのだそうだ。そんなことも知らず、先生に日本に帰ることを告げた日、帰るまでに何か習いたいものがあるかと聞かれ、僕はすぐ八極棍と言ったが、日本人が習うには相当の壁があるものだった。
それを惜しげなく教えてくれた先生に感謝の念は尽きない。
さらに、今日先生から日本で武術を教えてもよいという許可も受けた。まだ僕は当分指導者になる気はないが、先生の気持ちがうれしかった。
僕は台湾に来て、3人の先生から武術だけではなく様々なことを学んできた。
それらはすべて貴重なものばかりで、考え方や人生観まで変えるほどの素晴らしいものばかりだった。
性格上どうしても直接口に出したり気持ちを表現することは苦手なのだが、感謝の気持ちを持って台湾から飛び立つ。
ありがとうございますと心から言える先生方に出会えたこと、台湾での生活は貴重な経験ばかりだった。