「オヤジさん」第4回 

 やっと田舎に着いた親父は、私が入院している黒羽という街の医院に駆け込んで来た。そのときは、私はお袋の兄弟たちに助けられて、20キロの道のりをリヤカーに乗せられ、この街の小さな医院に入院していたのだった。道々、今にも息を引き取りそうな私を、お袋はどんなに不安だったろう。

 入院して直ぐ、医者は私の身体から膿みを出すための手術をした。今もその跡は生々しく手足に残っている。注射の跡もたくさんある。

 お袋は、弱りきったそんな私の身体を抱いてくれていた。親父は着いてからまる一日、心配な気持ちを抑えてじっと医者の診療を見ていたという。

 医者の説明によると、丹毒そのものは峠を越したと思われるが、注射等によって身体の抵抗力がなくなり、手術や注射の跡が直ぐ膿んでしまうし、体力の衰弱もはなはだしいので危険な状態だという。

 親父は、息子は直るのかどうか、直せる自信はあるのかと詰め寄ったそうだ。“初めての息子を死なせてなるものかと必死だったもんな”親父は晩年、酒に酔ってはそう言っていた。

 医者は、実は治療法がわからず困っていると言ったらしい。親父は直ぐ上の兄にも相談し、良い医者はいないかとあちこち聞いてまわったそうだ。そして、宇都宮に名医が居るという情報を得ると、すぐさま私を抱いて宇都宮に飛んだ。