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九連休という年末年始のお休みで鈍った身体と頭を休み明けの一週間でようやく元に戻したと思ったら、もう1月の半ば近くなってしまった。

 

このままだと、もう1ヶ月、もう3ヶ月、もう半年、もう今年のあと僅か・・と時の流れの速さを嘆く事になってしまうと焦る。

 

今年は運動不足衰え気味の身体を手入れするつもりでウォーキングの距離をもう1km増やす誓いを建てたが、他にも何か成すべきか?

 

ぐだぐだ考えていては、時は新幹線、いやリニアの様な速さで過ぎ去っていく・・

 

まあ自分としては、今年も例年通りブログで週一ペースで本の紹介を行う誓いは建てているのだが・・・

 

閑話休題

 

はい、それでは、本の紹介へと戻りましょう。

 

本日紹介する作品は、門井慶喜さんの時代小説『江戸一新』です。いつも通りあらすじ紹介から参りますのでよろしくお願いします。

 

 

【あらすじ】

時は江戸。四代将軍徳川家綱の治世。明暦3年1月、江戸は燃え尽きた・・

1月の半ば、本郷、小石川、麹町の3箇所から出火した火は折からの北風に煽られ、3日間延焼を続け、江戸の街の六割を焼き膨大な死傷者を出した。

この国難とも言える大惨事からの復興を背負うことになったのは代官の息子に生まれたのにも関わらず先代将軍・家光の小姓から立身出世を遂げた老中首座の松平伊豆守信綱。

信綱は単に元の江戸の街を再建するのではなく、思い切って江戸の都市構造をも作り変える事を構想する。果たして信綱はこの難事業を成し遂げられるのか?・・・

 

【解説】

 

①本作の著者は門井慶喜さん

 

本作の著者は門井慶喜(かどいよしのぶ)さん。1971年群馬県桐生市生まれの54歳

同志社大学文学部文化学科文化史学科卒。大学卒業後、2001ねんまで帝京大学理工学部職員として勤務。

2003年、『キッドナッパーズ』でオール讀物推理小説新人賞受賞。メジャーデビュー。

2016年、マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)受賞

2018年、『銀河鉄道の父』で第158回直木三十五文学賞受賞。

現代小説も時代小説も発表する作家さんです。

 

代表作

・キッドナッパーズ

・天才たちの値段

・女子校時代ライブラリー

・エルミタージュへようこそ

・東京帝大叡古教授

・家康、江戸を建てる

・ゆけ、おりょう

 

②明暦の大火とは?

 

明暦の大火とは、江戸時代、四大将軍徳川家綱の治世、明暦四年1月18日から20日の3日間延焼し江戸城外堀内の六割を消失させ死者3万人以上出した大火事の事。この大火で江戸城を始め武家屋敷、市街地の多くが消失した。ローマ大火、ロンドン大火と共に世界三大大火に数えられる。

 

 

③松平信綱とは?

 

松平伊豆守信綱(まつだいらいずのかみのぶつな)は江戸前期の大名。武蔵国忍藩藩主、同川越藩藩主。三代将軍徳川家光の小姓⇒御小姓組頭⇒老中⇒老中首座

 

慶長元年、徳川家康家臣で代官であった大河内久綱の長男として生まれる。慶長六年、叔父の松平右衛門太夫正綱の養子となる。(自身から願い出たとも言われる)

慶長8年、将軍世子徳川秀忠、将軍徳川家康に拝謁

慶長9年、徳川秀忠の嫡男、家光が誕生すると家光付き小姓に任命される。

慶長16年、元服。

現和6年、500石取りに。

現和9年、御小姓組番頭に任命。800石取りに。家光の将軍宣下の上洛に従い、従五位下伊豆守に叙位・任官。

寛永元年、家光の上洛に再度従う。2000石取りに。

寛永5年、相模国高座郡、愛甲郡で8000石の所領を与えられて合計1万石の大名となる。

寛永7年、上野国白井郡・阿保郡などで5,000石を加増され1万5000石取りとなる。

寛永9年、大御所秀忠死去。家光の日光山参詣に従う。11月には老中と小姓組番頭を兼務する。

寛永10年、阿部忠秋、堀田正盛、三浦正次、太田 資宗、阿部 重次らと共に六人衆に任命。阿部忠秋や堀田正盛らと共に家光より老中に任じられ1万5000石加増で3万石で武蔵忍に移封される。

寛永11年、「老中職務定則」と「若年寄職務定則」を制定。

寛永12年、それまで兼務していた小姓組番頭を罷免された。 寺社奉行や勘定頭、留守居などの職制や月番制などを定める。

寛永13年、江戸城普請監督を務める。朝鮮通信使の日光参詣では惣奉行を務める。

寛永14年、島原の乱において幕府軍の総大将を努める。

寛永15年、寛永15年(1638年)11月に土井利勝らが大老になると、信綱は老中首座になって幕政を統括した。

寛永16年、島原の乱の勲功で3万石加増の6万石で川越藩に移封。玉川上水、野火止用水の掘削、キリシタンの取り締まり強化の為、武家諸法度改正。

慶安4年、家光没後はその息子で第4代将軍となった徳川家綱の補佐に当たり、家光没後の直後に起こった慶安の変を鎮圧。

承応元年、老中暗殺を目的とした承応の変鎮圧。

明暦3年、明暦の大火の対応に務める。

寛文2年、病に倒れ出仕できなくなり、嫡男の輝綱が代理として出仕した。3月16日没。

 

【感想】

 

本作の著者である門井慶喜さんを語る時、2019年1月2日と3日と2夜に渡ってNHKで放送された正月時代劇『家康、江戸を建てる』の原作者であると言えば判ってもらえるだろうか。

 

かのドラマでは、豊臣秀吉の命で関東に国替えされた徳川家康と家臣達が低湿地で何もない江戸の地を開拓改造して徳川の世260年の礎を築いていく様を、治水工事、貨幣鋳造、飲料水の確保、江戸城石積み、天守の建設の5つのお話を構成して描いた艱難辛苦と勃興を感じさせる傑作ドラマでした。

 

そして、今回紹介する作品『江戸一新』では、江戸時代前期の明暦の大火によって消失した江戸の街の再建を主導した宰相・老中首座松平伊豆守信綱奮闘を描いた作品になっています。

 

明暦3年、1月18日~20日の3日間に渡って猛火を振るった大火は江戸城外堀内の6割を燃やし尽くし多くの犠牲者を出して鎮火しました。跡に残ったのは荒廃した江戸の街。その江戸の街の再建を担う事になったのは『知恵伊豆』と呼ばれる老中筆頭の松平伊豆守信綱。

 

この松平伊豆守信綱という人物がとんでもなく優秀な官僚!それは彼の出世具合からも判る。上記の解説「松平信綱」の項を見てもらえば彼の凄さが判るが。しがない代官の息子の生まれながら、後に三代将軍となる徳川家光の小姓として出仕してからの上り調子がとんでもない。

 まず将軍秀忠に、幼い嫡子の家光のお側に付かせて一緒に生活させる「小姓」の一人に抜擢された時点で彼がどれだけ優秀であるかが判る。そして出世コースである家光の筆頭格の寵臣の一人となり将軍となった家光を支える信綱は当然、加増また加増である。もちろんその出世には彼の優秀さがあっての事。

 後に家光が息子で第四代将軍となる家綱を補佐させる為に阿部豊後守忠秋と共に老中に残した事でも判る。(寵臣は普通使えた主君が退任すると一緒に退任する)

 

そんな彼が、阿部忠秋、酒井忠清の幕閣と共に、単に元の江戸の街を再建するのではなく、江戸の街自体を大きく拡張し、火事に強く、戦乱の無い世に相応しい巨大都市に作り変える事を画策します。それはとんでもない大事業で、火災によって江戸の街が焼け野原になった事で行えた都市の大改造!「災い転じて福となす」を地で行ったお話。

 

もちろん、そんな大事業に困難や問題が無いわけが無い。数々の難題が巻き起こり悩ませるが、ソコは「知恵伊豆」町奴の頭である花川戸の長兵衛との交流を介して情報収集し老中衆と知恵を絞って解決していく。

 

特にこの作品で印象的なのが、江戸の街がある程度再建された所で、「復興宣言」を幕府に出させる所。江戸の街がそれなりに再建されたとしても、まだまだ立ち直れていない「復興」に取り残されている人もいる。それを承知の上で、あえて「江戸の街は復興した」と宣言を出させる信綱に一国の官僚、宰相としての凄みを感じさせられた。

 

「江戸の街再建?」「政治のお話で難しそう?」と思う方がいるかもしれませんが、そんな事はありません。信綱が、信綱の姉おあんとその弟子おとき、町奴の頭である花川戸の長兵衛との交流をする様や、こっそり市井に出かけて情報収集する等、結構くだけた場面もあって、楽しく描かれていたりもする。そこは著者の筆致の妙。

 

そんな江戸の街の再建改造話と共に松平信綱の生涯が生き生きと描かれている本作是非一読をしてみて欲しい。お薦めです。

 

という事で本日はここまで!じゃあまたね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※当ブログにはnipperさんのイラスト素材がイラストACを通じて提供されています