ブログ主です。当ブログへのご訪問ありがとうございます。
早い人はもうお盆休みに入っていると思いますが、どうお過ごしでしょうか?
お盆休みとなると、お墓に参る機会もあると思いますが単独で行かない様にという忠告をSNSでしているお坊さんがいらっしゃいました。
理由は熱中症!
お墓参り&お墓のお掃除をしに来て、墓石の前で倒れている事が結構あるそうなので注意が必要とのこと。日中を避け、朝早く、あるいは夕方以降に来て欲しいとの事。
なるほど注意しなくてはですね。
先祖の墓前で亡くなっていたのでは洒落にならないですからね。
閑話休題
はい、それでは本の紹介へと参りましょう。
本日紹介する作品は、久々! 宇江佐真理さんの時代小説、
『為吉 北町奉行所ものがたり』です。
いつも通りあらすじ紹介から参りますのでよろしくお願いします。
【あらすじ】
為吉は幼いころ呉服屋の跡取り息子だったが、両親を押し込み強盗に殺されていた。その後、北町奉行所付きの中間となっていたが、両親を殺した盗賊集団の首領がある宿に潜伏しているとの知らせが届く。中間として狩猟の捕縛に参加する為吉。捕縛はあっさり成功し。首領の縄を取る事になった為吉、途中厠に寄った首領の発したひと言は為吉の心に大きな波紋を広げる・・
【解説】
①本作の著者は宇江佐真理さん
本作の著者は当ブログでもお馴染みの宇江佐真理(うえざまり)さん。
1949年、北海道函館市生まれの75歳。
函館大谷女子短期大学卒業後はOL生活を経て主婦になる。
1995年、『幻の声』で第75回オール読物新人賞受賞で作家デビュー。
1999年、『髪結い伊三次捕物余話』が『髪結い伊三次』として中村橋之助主演でテレビドラマ化
2001年、『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞受賞
2010年、『雷桜』が岡田将生、蒼井優ダブル主演で映画化。
2014年、乳がんの為函館市の病院で死去。66歳没。
主に時代小説を書いた作家さんです。
代表作
・『髪結い伊三次捕物余話』シリーズ
・『泣きの銀次』シリーズ
・『古手屋喜十為事覚え』シリーズ
・酒田さ行ぐさげ 日本橋人情横丁
・余寒の雪
・斬られ権佐
・アラミスと呼ばれた女
【感想】
本作は時代小説を得意にした著者がご病気により亡くなった翌年に刊行された北町奉行所周辺の人間模様を描いた連作長編物語です。
著者の宇江佐真理さんのデビュー作『幻の声』から連なる『髪結い伊三次捕物余話』も奉行所同心の手下として市中の声を聞いて周る小者である髪結いの伊三次とその周辺の人間模様を描いた連作時代小説でした。
本作は江戸時代の北町奉行所周辺の人物を取り上げ、その人間模様(人間ドラマ)を描く1話毎完結する連作短編小説スタイルです。
お話は6話。
・奉行所付き中間為吉
・下手人磯松
・見習い同心一之瀬春蔵
・与力の妻村井あさ
・岡っ引き田蔵
・下っ引き為吉
身分の違い、立場、性差も違う5人の人物の目線で語られる人間模様(人間ドラマ)はなんとも言えない風情や人間の感情の複雑さや機微を描いていてじんわりと胸に染みいってきます。
今回このブログで取り上げたいお話は『下手人磯松』!
品川の飯盛宿(飯盛り女宿とも言われ、客が求めれば女給と一夜を共にできる売春宿)大黒屋で働く飯盛り女(ウエイトレス兼売春婦)の腹から生まれ、その後生みの母親に捨てられた磯松のお話。
捨てられた磯松は飯盛宿大黒屋で育てられ幼い頃より下男扱いされるも、物覚えも悪く愚鈍だったので周りから舐められ虐められていた。そんな磯松の唯一の味方は大黒屋のお内儀で磯松を可愛がってくれていた。
しかしそんなお内儀が若くして他界。すると大黒屋の主人はお内儀の喪が開けないうちから飯盛り女出身の女を新たなお内儀として店に入れる。そして新たなお内儀は我が物顔で店のものに強く当たる様に・・・そんなある日磯松は店の主人と新たなお内儀に呼び出され説教を受けていたのだが、ある一言を聞いたとたん、キレて店の主人、お内儀、先輩3人を殺め逃亡してしまう・・・
その後、あっさり捕まった磯松が奉行所の中間為吉に語った犯行のきっかけとは・・
いやーネタバレというかほぼあらすじ全部語ってしまいましたけど、一見大人しい愚鈍な男とされた磯松には自分の胸に刺さる大嫌いなワードがあった。
周りから虐められて何度も聞かされるワードであったが、自分に優しくしてくれていたお内儀さんが居たから耐えられていたが、その庇護者であったお内儀が亡くなった事で理性を繋げ留めていた鎖がハズれ、禁句であるワードを聞かされた磯松はキレ、犯行に至った。
いやーそういう事ってあるよね~なお話。人間感情の奥底にある黒いものを呼び覚ます禁句は人それぞれある。全員にあるかどうかは知らねども、かなり多くの人にも「言われたくない一言」「ずっと言われ続けてきたが内心ずっとムカついていた一言」があると思うんだ。
皆それを、立場、理性、すがるもの、によってキレないように押さえつけて生きているんじゃないかと・・・そんな人間の心の奥底をチラ見せした本エピソードはなんとも言えない感慨深さがあった。
こういう一見普通の人物の黒さ、ずるさ、を描くのが宇江佐真理さん上手いよね。もちろん、人間の温かい部分、無償の愛なんかを描かせても上手いけどさぁ。
それにしても宇江佐真理さんの病死は痛かった。宇江佐さんの病気がなければ、本作も長く描かれて『髪結い伊三次捕物余話』シリーズの様な傑作シリーズになるかもしれなかったのに。本当に惜しいと思いました。
まあお薦めできる人情時代小説なので何処かでこの作品を見かけたら是非手に取る事をお薦めします。
本日はここまで!じゃあまたね!