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本日12月17日は、NHK大河ドラマ『どうする家康』の最終回の放送日です。

自分は最初の2話程度見て視聴を辞めてしまったんですが、結局どれほどの視聴率を稼げたのでしょうか?

 

近年は視聴率の低下に苦しむNHKの大河ドラマ、昨今は1クール(10~12話)放送前提が当たり前になった民放連続ドラマに対して。国民から受信料を楽して取れるNHKだからこそできる1年間を掛けて放送できるドラマは貴重なコンテンツです。

なので少しでも良い作品を造り続けていって欲しいものですね。

 

閑話休題

 

はいそれでは、本の紹介へと参りましょうか。

 

本日紹介する作品は、岳真也さんの『家康と信康 父と子の絆という時代小説です。

いつも通りあらすじ紹介から参りますのでよろしくお願いします。

 

 

 

 

【あらすじ】

時は室町、戦国時代。三河国の大名・松平元康(徳川家康)は決断を迫られていた。嫁である瀬名姫が敵である甲斐武田家と通じているというのだ。同盟者である織田信長は態度いかんによっては攻め入ってくるだろう。

苦渋の決断をする家康。

そして時は経ち、天下分け目の関ケ原戦い。家康の前に現れたのは・・・

 

 

【解説】

 

①本作の著者は岳 真也さん

 

本作の著者は岳 真也(がくしんや)さん。1947年東京生まれの76歳。

慶應義塾大学経済学部卒、同大学院社会学研究科修士課程修了。同大在学中から執筆活動を行っていて同大を中心に発行されていた文芸誌『三田文学』に『飛び魚』が掲載され作家デビュー。

文芸同人誌『蒼い共和国』を創刊。同人誌『えん』『二十一世紀文学』『えん21』などを主宰。

2011年4月に歴史作家クラブ創設時代表幹事となる。

2012年5月それまでの功績により、第1回歴史時代作家クラブ賞(実績功労賞)を授与

2021年『翔 wing spread』で第1回加賀乙彦推奨特別文学賞受賞

代表作

・湯屋守り源三郎捕物控シリーズ

・ぼっこれ大江戸妖かし草紙

・真田昌幸-天下を飾る者

・織田有楽斎:利休を超える戦国茶人

・行基 菩薩と呼ばれた僧

ほか

 

主に時代小説、歴史エッセイなどを発表する作家さんです。

 

 

②松平信康切腹と築山殿殺害事件とは?

 

時は室町戦国時代、対立する尾張の織田家と駿河&遠江を支配する今川家の間にある三河の松平家は常にどちらかの勢力に属する事で生き延びていた。そんな松平家の当主松平広忠の嫡男として生まれた竹千代(後の徳川家康)も数え6歳で織田家の人質に2年後父広忠の死の後今度は今川家の人質になって養育、今川家家臣の関口氏より瀬名姫を嫁にもらい、以後松平家は今川家の家臣として生きる事になった。

 

ところが永禄3年織田家に侵攻した今川家の軍勢が織田家当主織田信長に敗北当主今川義元が討たれ以後今川家の勢力が衰弱。そこで今川家家臣となっていた松平元康(後の徳川家康)は今川家より独立、織田家と同盟を組む事となった。

 

その後蜜月関係を続けていた織田家と徳川家は徳川家嫡男松平元康に織田信長長女徳姫が嫁ぎより絆を深めようとしていた。その元康は松平家の嫡男として勇猛さが讃えられる武将に育ったが、天正7年9月15日に信康の家臣大岡弥四郎らが敵である甲斐国の大名武田勝頼に内通して謀反を企んだことを理由に信康は家康の命により切腹させられ、その企てに協力していたと家康正室築山殿(瀬名姫)も殺害された。

 

この事件の詳細は資料も少なく不明な点が多く、一説には元康の嫁になった徳姫と今川家家臣関口氏の娘だった築山殿との嫁姑の仲が悪かった、又は、元康と徳姫との夫婦関係が悪く、徳姫が実父に元康と築山殿の行状を伝えた為、織田信長が徳川家に二人をなんとかしろと伝えたところ同盟維持の為に家康が二人を処分した・・などという説が語られている。

 

詳細が不明な事件なので、小説やドラマの創作ネタとして使われやすいエピソードである。本作もその1作!

 

 

【感想】

 

本作は、戦国武将徳川家康の天下取りと徳川家康嫡男信康切腹と正室瀬名姫(築山殿)エピソードを絡めた徳川家康の半生を描いた時代小説です。

 

細かな経緯は上記解説に書きましたのでお話の概要を言うと、

 

前半は、戦国大名として独立し生き抜いていくために奔走していた家康。正室である瀬名姫(築山殿)と嫡男嫁の徳姫との嫁姑の仲や嫡男信康への気配りが疎かになってなってしまった事で、正室瀬名姫&嫡男の信康の敵国甲斐武田家と密通、謀反話が起きてしまう。同盟者織田信長に事を知られ同盟維持&徳川家が攻められない様に泣く泣く正室と嫡男を殺さなければいけなくなるエピソード。

 

後半は、時は経ぎ、天下取りに燃える家康が天下分け目の関ケ原の戦いに挑もうとしていたその時、亡くなった正室瀬名姫の幻が嫡男信康の首を持って現れた後のお話。

 

と2つのパートを持って徳川家康の半生が描かれています。

 

本作は、前半は戦国時代の武家の非情さと己を殺し家と家臣を護らなければいけない武家の当主の苦悩を。後半は天下取りに向かう家康が事あるごとにそばに寄り添う幻と語らう親子愛のお話で、家康の半生と「築山殿殺害、信康切腹事件」というエピソードを絡めてこういう風に持ってきたかと感心したお話でした。

 

この「築山殿殺害、信康切腹事件」を描いた作品には、『上田秀人 著 継ぐ者』の様に、成長著しいが周りへの気遣いや政略に疎い嫡男信康との親子の仲が上手くなくなくなった末に信康と対立した家康が信康を切り捨てるという感じの「ブラックコーヒーの様な苦さ」を感じる筋の作品が数多くありますが、本作は親子関係がそこまで仲が悪くなったわけではなく織田家との同盟維持、敵対化阻止の為、真に残念ながら息子を斬らざるを得なかった武家の当主の悲哀が描かれていますし、亡くなった息子も自分が死なねばならなかった事を理解して自分の死後も父親を心配します。

 

その辺りに何とも切ない雰囲気が漂い。またどこか救われる感じが作品世界から漂ってきて本作を推してみようかと思いました。

 

ということで、戦国時代の非情さが感じられるエピソードを絡めた作品ながらも悲惨で終わらない物語。

 

是非一読を・・・

 

ということで本日はここまで!じゃあまたね!

 

 

 

 

 

 

 

※当ブログ記事には、うさのたくみさん、ばななさん、のイラスト素材がイラストACを通じて提供されています。