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昨今、年末年始に見られなくなったモノに、「赤穂浪士の討ち入り」を題材とした長時間の時代劇ドラマがあります。

 

昔は、4時間から長いものだと12時間も掛けた大作が年末年始のお茶の間のTVで見られたものでしたが・・・テレビ局に金が無くなったのか、あるいは時代にそぐわないとされたのか、作品化されなくなってしまいました。

 

自分は、実際に起きた「赤穂浪士の討ち入り」に関しては否定的な立ち位置なんですが、「劇」として見ると本当に良く出来ていて、起承転結もしっかり。本筋以外のサイドエピソードもたっぷり。日本人のメンタリティーにピタリとハマる傑作なのだと思います。

 

そんな傑作ドラマの新作が昨今では造られない!見られない!のは残念でなりません。

 

閑話休題

 

はい、それでは、本の紹介へと参りましょう。

 

本日紹介する作品は、2023年、直木三十五賞と山本周五郎賞のW受賞した時代小説&ミステリー作。永井 紗耶子『木挽町のあだ討ち』です。

いつも通りあらすじ紹介から参りますのでよろしくお願いします。

 

 

 

【あらすじ】

 

ある雪の降る夜に芝居小屋のすぐそばで、美しい若衆・菊之助による仇討ちがみごとに成し遂げられた。父親を殺めた下男を斬り、その血まみれの首を高くかかげた快挙はたくさんの人々から賞賛された。

 二年後、菊之助の縁者だというひとりの侍が仇討ちの顚末を知りたいと、芝居小屋を訪れるのだが・・・

 

 

【解説】

 

①本作の著者は永井 紗耶子さん。

 

本作の著者は永井 紗耶子(ながい さやこ)さん。1977年静岡県生まれの46歳。

静岡県島田市生まれだが育ちは神奈川県横浜市。慶應義塾大学文学部卒業後、産経新聞記者を経てフリーランスのライターに新聞や雑誌に記事を提供。

2010年、時代ミステリー小説『絡繰り心中』で「第11回小学館文庫小説賞」受賞。同作は『恋の手本となりにけり』と改題されて刊行。メジャーデビュー。

2020年『商う狼 江戸商人 杉本茂十郎』で第3回細谷 正充賞」受賞、「第10回本屋が選ぶ時代小説大賞」受賞。

2021年『商う狼 江戸商人 杉本茂十郎』で第40回新田次郎文学賞」受賞。

2023年『木挽町のあだ討ち』で「第169回直木三十五賞」受賞、「第36回山本周五郎賞」受賞。

 

代表作

・『恋の手本となりにけり』

・『大奥づとめ』

・『商う狼 江戸商人 杉本茂十郎』

・『女人入眼』

・『木挽町のあだ討ち』

 

②『仇討ち』って何?

 

仇討ち(あだ討ち)とは、主君・親兄弟などを殺した者を討ち取って恨みを晴らすことです。江戸時代、武士階級においては「喧嘩両成敗」を原則として紛争を処理していたので、当事者の不合理感を補う制度として、法の上でも認められ、慣習として公認されていました。明治6年(1873)禁止されました。

 

仇討ちを行う際は、旗本なら幕府に、藩士なら藩に届け出を出し、討ち取るべき者が領外に出ていた場合、逃亡先の統治者(江戸、藩の町奉行)に届け出を出さなければなりませんでした。そして事が終わった後は当地の役人に遺体(首)を確認してもらい事の成就を承認してもらう必要があるのです。

 

武士階級に置いては親が殺された場合家を継ぐ立場の息子は仇討ちを成功させないと家を継げない場合が多く、成功せず没落する事も多くありました。

また子が殺された場合は、親が仇討ちをする事は禁止されています。

 

【感想】

 

時代小説でありミステリーな本作は2つの著名な賞を取るだけある傑作です。

 

父親を殺して逃亡した下男を追い江戸木挽町にやってきた菊之助は芝居小屋森田座に身を寄せて仇を探し博徒となっていた下男の作兵衛を待ち伏せ見事仇討ちを成功させた。

 その二年後、菊之助の縁者を名乗る武士が森田座を訪ねてきて、あの仇討ちについて話を聞きたいという。森田座の衆はその男に自分達の生い立ちと共に仇討ちの様子を語るのであったが・・・という感じで始まるお話。

 

菊之助の縁者なら菊之助本人から仇討ちについて話を聞けばいいのに、まるで何かを探ろうとするかのごとく話を聞きに来た時点で、怪しい空気が流れる。ミステリー臭がぷんぷんである。

 

それに気がつかない?芝居小屋の森田座で働く人々は、菊之助の縁者ならと自分の生い立ちと共に気軽にあの仇討ちの様子を語る。

 

一人目、女郎の子で元幇間だった木戸芸者の正さん。

二人目、元御徒士(旗本)の次男坊だった立師の与三郎

三人目、元物乞い、隠亡(遺体焼き)に育てられた子で女形兼衣装係の芳澤ほたる

四人目、小道具師の久蔵爺さんと女房のお与根さん

五人目、元旗本の次男坊で戯作者の篠田金治

 

皆理由(わけ)あって最下層身分で流人扱いの芝居小屋に堕ちてきた・・そんな彼らは、仇討ちをしなければいけない立場に心苦しむ菊之助にそっと寄り添う。

 

秀逸な人情話は読者の心揺さぶり、目に涙を浮かべる事も。

 

自分は四人目、小道具師の久蔵爺さんと女房のお与根さんの語りのところで胸が詰まってしまいました。

 

そして話を聞き、国元に帰った男は菊之助と語る・・・仇討ちの真相を。

 

ラストに明かされる真実。仇討ちが木挽町という場所であったということ。江戸の最下層で生きる人達が助けた「見事な仇討ち」。痛快。

 

 

いやー傑作です。何処かで本作を見かけたら、是非手に取ってみてください。お薦めです。

 

ということで本日はここまで!じゃあまた!