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先週はSNSなどで、駅内を巡回し痴漢や盗撮犯の疑いがある人物を私人逮捕してその様子を動画撮影しSNSに上げる自警団系(私人逮捕系)ユーチューバーが話題になりました。
このユーチューバーは、普段から鉄道の駅内を仲間と共に巡回し、痴漢や盗撮をしていると疑われる人物を私人逮捕し警察に引き渡すまでを動画撮影しyoutubeなどのSNSにupし再生回数を稼いで収入を得ていました。
「私人逮捕」というのは警察官や検察官などの司法警察職員以外の一般人が逃走の恐れがある現行犯の容疑者を逮捕し警察官らの司法警察職員に引き渡す事です。
ただこの「私人逮捕」は条件がきっちり決まっている他、逮捕した相手に過剰な暴力を振るうなどした場合、逆に罪に問われてしまう事もある大変適用が難しい事柄です
特に私人逮捕を行っても容疑者が罪を犯したと証明できない場合は、冤罪で拘束したと見なされ、名誉毀損や暴行罪、監禁罪で逆に逮捕される危険があるなどデリケートな行動であるのに、このユーチューバーは数多くの私人逮捕の様子を動画に撮ってSNS上で公開していました。しかし多くの私人逮捕された容疑者は犯罪要件を立証できず結局釈放されているとの事です。
9月19日、埼京線の駅で起こった事例はその私人逮捕の危うさを露呈したもので、ある人物を痴漢の現行犯だと私人逮捕した件のユーチューバー。しかし痴漢されたとされる女性も周りの方々も「触られていない」「触っていなかった」と証言。駅構内の駅員が被害者とされる女性に事情を聞こうと駅舎に誘導しようとすると、件のユーチューバーが駅員の肩を掴むなどして制止させようとする騒ぎを起こし、電車は遅延、件のユーチューバーは警察に連行されたとの事。
この案件も被害者がいないので明らかな「冤罪」という案件ですが、動画は公開されていて。こういう動画を世間に晒す方が犯罪ではないのか?と思えるのですが皆さんはいかが思いますか?
こういう一件正義感のある行動に見せかけて、実は再生数稼ぎで収入を得る事を目的に活動する自警団系(私人逮捕系)ユーチューバーの活動、冤罪案件が数多く起こっていると思われるので辞めてほしいと思います。
閑話休題
はいそれでは、本の紹介へと参りましょうか。
本日は先週に続いて伊岡瞬さんのミステリー、「瑠璃の雫」を紹介したいと思います。いつも通りあらすじ紹介から参りますのでよろしくお願いします。
【あらすじ】
アル中の母と昔幼い次男の息を止めた弟と暮らす小学6年生の杉原美緒は鬱屈した日々を送っていた。ある日、母がアル中で再度の入院になった事で母の従姉妹である吉岡薫の元にお世話になることになった美緒と弟の充。母と弟に憎しみに似た感情を覚えもやもやする美緒は、ある日薫叔母さんの店の常連で一人暮らしの元検事・永瀬丈太郎と知り合う。一人暮らしの老人永瀬のお世話を積極的に行う叔母の薫に連れられて丈太郎の住まいを訪ねた美緒と充。丈太郎との交流が深まるに連れ、美緒の心は次第にほぐれていくのだが・・・
【解説】
①本作の著者は伊岡瞬さん!
本作の著者は伊岡瞬さん!
1960年東京武蔵野市生まれの63歳。
日本大学法学部卒業後広告会社勤務を経て、2005年『約束(いつか、虹の向こうへ)』で第25回横溝正史ミステリ大賞受賞とテレビ東京賞をW受賞でメジャーデビュー。
2016年、『代償』で啓文堂書店文庫大賞受賞。
2019年、『悪寒』で啓文堂書店文庫大賞受賞。
2020年、『痣』で第6回徳間文庫大賞受賞。
主にミステリー作品を発表する作家さんです。
【感想】
先週ご紹介した「悪寒」は、なんとも言えない嫌な結末と読後感で「嫌ミス」らしいミステリーでしたが、今回の作品も「嫌ミス」とは言えないものの何とも複雑な想いを抱かせてくれたミステリーです。
今作は、慢性のアルコール中毒を患い度々救急車のお世話になるシングルマザーの母と幼い日に赤ん坊の次男の頭を布団に押さえつけて窒息死させた弟との暮らしに鬱屈した想いを抱える美緒と昔娘を誘拐され行方不明になったままの過去を抱える一人暮らしの元検事の老人との長きに渡る交流を描いた作品です。
アル中の母、次男を殺した弟、出ていった父、イジメ、過酷な環境でネガティブにならざるを得ない主人公の少女。自ら自傷行為を繰り返し、時に弟の死を願う主人公。自分が同じ立場だったらやはり鬱屈としているか?心折れるか?しているだろうというシチュエーションに重い気持ちのまま読み進める自分がいた。
そこに登場する妻を亡くし寂しい暮らしをしている寡黙な老人。元検事だという孤独な老人との交流で鬱屈した想いが霧散していく主人公。
そんな中ある日老人の身にとんでもない不幸な事件が起きて・・・という事から主人公の少女は孤独な老人が抱えていた不幸な出来事の謎解きを始めていく・・・そして謎解きの果てに訪れる結末とは・・・という全体的に重い展開で進む物語で、ラストに老人の抱えていた不幸で悲しい出来事の真相も主人公の少女がずっと抱えていた疑念も解決するが、加害者が逮捕されるわけでもなく法の裁きを受けるわけでもない結末での終了はなかなか新鮮な気持ちで読み終えられた。
そして疑念を解決した主人公がどう反応したのか?それを是非読んで確認して欲しい。
ということでなかなか感慨深いミステリー?ミステリー?ミステリーなのかなぁ?主人公の成長の物語という方が良いと思う作品。是非読んでみてください。お薦めです。
ということで本日はここまで!じゃあまたね!
※当ブログ記事にはしばいぬだいすきさん、ロク子さんの写真素材が写真ACを通じて提供されています。