昨年末から新年を開けて感染が拡大し続けている新型コロナウィルス感染症の猛威が止まらなくなっている。

昨日の全国の新規感染者数は2日連続で8万人を超えるまでになってしまった。

日々増大し減少する気配する新規感染者数。その影響により全国の多くの都道府県が蔓延防止措置を発動する事態になっている。

 

この事態によって全国の多くの飲食業を営む方々やお勤めの方々が窮地に追い込まれている。もちろん飲食業界のみならず、飲食業界と関係ある製造業、農水産業の方々の業績は落ちていくことだろう。

もちろんそれだけではなく、多くの産業にも大きな影響をもたらしている。

 

その中でも芸能関係に目を向けてみると、今月半ばに至って多くの演劇公演、コンサート、ライブ公演が中止の決断をせざるを得ない事態になっている。

 

昨年末前には新型コロナウィルス感染症の新規感染者数が極小となり2年に渡って公演を自粛してきた芸能関係者も公演が開けそうだと明るい兆しを感じていた中、年明けより急速に新型コロナウィルス感染症の感染拡大が広がり、公演を中止せざるを得ない状況に追い込まれている。果たして芸能という業界がどこまで持ちこたえることができるのか?と心配でなりません。

 

人は食って働いて寝てだけでは生きられない。それいがいに「楽しみ」「癒やし」がなければと思うのです。そういうことを思うと早くこの新型コロナウィルス感染症の猛威が収まることを切に思います。

 

閑話休題

 

さてそれでは本の紹介へと行きたいと思います。本日紹介する作品は、恩田陸 著 『 蜂蜜と遠雷 』です。いつも通リあらすじ紹介から行きますのでよろしくお願いします。

【 あらすじ 】

 

開催回数はまだ6回と歴史は浅いが近年このコンクールの覇者が音楽界の寵児となる事例があり評価が上がってきた芳ヶ江国際ピアノコンクール。

そんなコンクールに参加する為に事前選考をくぐり抜けてきた世界各国の若きピアニスト達が芳ヶ江市のコンサートホールに集結する。

一度は音楽家への夢を諦めサラリーマンとなっていた妻子持ちの青年。多くの者が才能を認める天才でジュリアードの王子さまと呼ばれる若き俊英のピアニスト。天才少女と呼ばれ早くからメジャーデビューを果たしながらも母の死を機にピアノが引けなくなり音楽界から離れていた少女。つい先頃亡くなったピアノ界の大御所にして実力者だったユウジ・フォン・ホフマンが送り込んだ演奏歴やコンテストも経験がない謎の少年。果たして彼らの誰が至高の座に至るのか?今二週間に渡って競われるピアノコンクールの幕が開く。

 

 

【 解説 】

 

①この作品の著者は恩田陸さん。

この作品の著者は恩田陸さん!1964年宮城県仙台生まれ。学生時代から本と音楽が身近にある家庭で育ちピアノを習い事としていた。大学時代は大学のビックバンドのオーケストラでアルトサックスを演奏していたそう。大学卒業後はOLの傍ら執筆活動をしていたが入社4年で会社を退職。1991年退職後に書き終えた『六番目の小夜子』が第三回日本ファンタジーノベル大賞候補作になり1992年同作刊行を持ってメジャーデビュー。

2004年(平成16年)、『夜のピクニック』で、第26回吉川英治文学新人賞受賞。

2005年(平成17年)同作で第2回本屋大賞受賞。

2006年(平成18年)、『ユージニア』で、第59回日本推理作家協会賞を受賞。

2007年(平成19年)、『中庭の出来事』で、第20回山本周五郎賞を受賞。

2017年(平成29年)、本日紹介する『蜜蜂と遠雷』で、第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞を受賞と次々と文学賞を受賞する女性作家さんで、書かれる作品もSF、ファンタジー、ミステリー、ホラー、冒険小説、青春小説、音楽小説など多ジャンルにも及ぶマルチな作家さんです。

 

②この作品は直木賞と本屋大賞のダブル受賞作!

 

本作『蜜蜂と遠雷』は直木三十五賞と本屋大賞のダブル受賞作で、2021年1月時点の総発行部数は134万部のミリオンセラー作品となっています。

 

また本作は2019年松岡美優主演、石川慶監督・脚本・編集で映画化もされました。

 

 

【 感想 】

 

自分は読書が趣味の癖に直木賞と芥川賞を受賞した作品をあまり読んでいない。

 毎年発表される受賞のニュースにもあまり感心を持たず、誰のどの作品が受賞したのかも知らないという感じ。むしろそんな賞を取った作品をミーハーに読んでやるものか!と思ってしまう天の邪鬼です。

 そして数年経過して受賞作品という匂いが掠れた頃、本屋か図書館で偶然手に取って読んだ後から直木賞・芥川賞受賞作品だったという事が多いです。

 

そして今回のこの作品。実は珍しく直木賞受賞作品だと知っていて受賞騒ぎが落ち着いたら是非読んでみたいと思っていたんですが、作品が刊行されて五年過ぎて「あーあの作品は・・・」と思い出してようやく読んでみたというわけです。我ながら天の邪鬼も過ぎるなぁと感じました。

 

◎というわけで読んでみた本作の感想はまず「読みやすく面白かった!」

 

直木賞や芥川賞受賞作を取った作品をいくつか読んでみたことはありますが、どの作品であってもおもしろいという感じはありません。自分の好みを外れている作品もありますし、読み難い作品もありました。そりゃそうだよね。

 

その点本作は「本屋大賞」受賞作。

「本屋大賞」は新刊書の書店で働く書店員が過去一年の間、書店員自身が自分で読んで「面白かった」、「お客様にも薦めたい」、「自分の店で売りたい」と思った本を選び投票されることで決まる文学賞で、それだけに直木賞や芥川賞受賞作品より読者目線で選ばれ割りと読みやすい作品が選ばれる傾向があると自分は思います。

 

それだけに「直木賞受賞作品」というより「本屋大賞受賞作」ということの方が、本作を読む動機となっていました。で、実際読んでみると自分が思った通リ「とても読みやすく面白い」と思える作品でした。

特に本作は687ページ(※単行本のページ数。文庫本は上下巻と二冊に分かれている)とかなり長編作でありながらその読みやすさもあり読み飽きることなく一気に読み終わることができました。

 

 

◎「演者が奏でる音楽が聴こえてくる」様な錯覚を覚えさせる作品

 

そして本作は国際ピアノコンクールを舞台に、コンクールに挑む4人の若きピアニストの葛藤や成長と彼らを支える人々を描いた青春群像小説にして音楽小説なんですが、読んでいるとまるで「演者が奏でる音楽が聴こえてくる」様な錯覚を覚える程の表現力でした。

近年、文学や漫画においてオーケストラや楽器の演奏などの音楽界を舞台に描かれる作品が多くなってきた様に思えます。

漫画では、ましろのおと、のだめカンタービレ、四月は君の嘘BLUE GIANT、BECK、この音とまれ!、ピアノの森などがあり、文学界では、吹部!、ブラバン、女神のタクト、四日間の奇蹟、船に乗れ!、さよならドビュッシー、いつまでもショパン(岬洋介シリーズ)などがあります。

 

特にピアニスト、ピアノコンクールの情景を描いた漫画作品といえば一色まことさんの「ピアノの森」がありこの作品は巧みに描かれた画とセリフ回しによってピアノコンクールの情景と共に各ピアニストが奏でる曲が聴こえてくる様な錯覚を覚えてしまいました。

そして中山七里さんの岬洋介シリーズにおける「いつまでもショパン」ではポーランドで開かれる国際的ピアノコンクールである「ショパンコンクール」での各キャラクターのピアノ演奏においてその文章力によって奏でられる曲が実際聴こえてくる様な錯覚を覚えてしまいます。

 

漫画作品でも文学作品においても、読者に「聴こえるはずもない音楽」を画や文章によってあたかも聴こえてくる様に錯覚させるのは大変難しい事だと思います。

特に私の様に普段クラッシック音楽を聴く機会も少なく、奏者の腕の差を明確に認識できない者が、奏者が奏でる音楽の質や個性を聴き分けることができる耳達者な音楽ファンになったかの様に錯覚させることができる表現力を備えた作品は極少数だと思います。

そしてそれを成功させることができた作品の一つが本作『蜜蜂と遠雷』だと言えると思います。

 

◎コンクールに出場するピアニスト、その出場ピアニストを支える人々、コンクールの運営を支える関係者の内面・心理描写がすごい!

 

本作は国際的なピアノコンクールを舞台として、そのピアノコンクールに出場するピアニスト達の葛藤と成長を描く青春群像小説にして音楽小説ですが、主要キャラクターである4人のピアニストはもとより、彼ら出場ピアニストを支える人々、国際的ピアノコンクールの運営を支える音楽関係者の内面・心理描写を巧み描いていて、彼らの心の声を密やかに聴いている「神」になった様に感じさせてくれます。

 

本作を読んでいると彼らの心の内にある「喜び、恐れ、苦々しさ、悲しみ、驚き」などの感情が読んだ文章からひしひしと感じさせてくれていて各キャラクターの葛藤や情動を読者である自分も一緒に体験しているが如く感じさせてくれました。

 

ということで本作は国際的なピアノコンクールに出場することで人間的に成長していく若きピアニスト達を描く青春群像小説として見事に成功した作品だと思いました。直木賞と本屋大賞をダブル受賞したのも納得させられた作品です。

 

ということで本作はイチオシのおすすめ作品ですのでどこかで本作を見かけましたら是非手に取って読んでみてください。

 

ということで本日はここまで!じゃあまたね!

 

 

 

 

※当ブログ記事には乙姫の花笠さんのイラスト素材がイラストACを通じて提供されています。