さて今年も後一ヶ月を切りました。
当ブログで私の読んだ作品を紹介するのも今回も入れて後3回の予定です。
新型コロナウイルス感染症の蔓延も昨年に続き2年目となり今年もプライベートでのレジャーや会食目的による外出の自粛が続きました。
おかげで私自身家に籠もっての読書が多くなり例年以上の読書量になったと思います。
ですがさすがに来年も新型コロナウイルス感染症に振り回されるのは勘弁!
ともかく来年度中にはワクチン接種による効果と新型コロナウイルス感染症の症状を抑える新薬の供給が進んでインフルエンザ並の対応でよい体制に以降していってもらいたいですね。
閑話休題
さてそれではいつも通り本の紹介へと行くとしましょうか。
本日はミステリー分野から、中山七里 さんの カインの傲慢(刑事犬養隼人シリーズ) を紹介したいと思います。いつも通りあらすじ紹介から行くのでよろしくお願いします。
【 あらすじ 】
練馬区の雑木林から埋められていた遺体が発見された。現場に臨場した警視庁捜査一課麻生班の刑事犬飼隼人は遺体の主が少年で、遺体からは肝臓の一部が摘出されていることに嫌な記憶を思い起こしていた。犬飼は以前遺体から臓器を持ち去る猟奇殺人事件を担当したことがあったのだ。「模倣犯?」との思いを胸に捜査を開始した犬飼だったが捜査の結果遺体の少年は中国から単身入国した14歳の少年で、肝臓が無かったのは違法な臓器移植の結果として摘出されたのでは?との推論が立った。そこで事件の捜査本部は中国語ができる新米刑事・高千穂明日香を中国に派遣し件の少年の調査をすることになり、犬飼は貧困世帯の子供が闇の臓器移植のドナーに狙われていると考え捜査を進める。しかし捜査ははかどらない間に第二、第三の事件が発生し焦りが出る捜査本部。果たして犬飼を始めとする捜査陣は事件の真相をつかめるのか?・・・
【 解説 】
①本作の著者は「どんでん返しの中山」という異名で知られるミステリー作家の中山七里!
本作の著者である中山七里さんは1961年岐阜県生まれの60歳。元はサラリーマンだったが2006年45歳の時一念発起して執筆を始める。
2009年「さよならドビュッシー」にて「第8回このミステリーがすごい!大賞」を受賞。明るく爽やかな音楽ミステリーというあらたなジャンルを開拓し48歳にしてメジャーデビュー。
以後上記の音楽ミステリーやダークでシリアスな猟奇サスペンス、社会派ミステリー、警察小説、リーガル(法定)ミステリーなどジャンルを問わず様々なミステリー作品を提供する人気作家さんです。また氏のミステリー作品の多くにそれまでのメインストーリーと大きく反した結末や裏エピソードが描かれてる「どんでん返し」の仕掛けがよく設定されていることから著者は「どんでん返しの中山」なる異名でも呼ばれています。
②本作は著者の代表的ミステリーシリーズ「刑事犬飼隼人」シリーズの一作!
本作「カインの傲慢」は中山七里さんの代表的ミステリーシリーズ「刑事犬飼隼人」シリーズの一作です。
本シリーズは、目や唇の動きを見ただけで容疑者の嘘を見抜く鋭い観察眼を持っており、「野郎の嘘を見抜く名人」と言われ、男の犯人に限るなら検挙率は本庁で1,2位を争う捜査一課のエース、でもなぜか女の嘘には滅法弱いというバツ2の刑事・犬飼隼人を主人公として彼が遭遇した猟奇的事件や社会問題に端を発する闇大きい殺人事件の解明に挑む捜査陣の奮闘を描く警察小説シリーズです。
犬飼隼人を主人公とする本シリーズは映像化もされていまして、2015年4月「切り裂きジャックの告白」を、2016年9月には短編「白い原稿」が沢村一樹さん主演でテレビドラマ化されていて、2020年「ドクターデスの遺産」が綾野剛さん 北川景子さん主演で「ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-」として映画化公開されました。
【 感想 】
本作はミステリーなのであまりネタバレするのはどうかと思われるので詳しく内容を書きませんが貧困家庭で生きる子供の不遇と一向に進まない臓器移植問題を絡めた作品です。
ここまで読んでピンと来た方、そうです。そういうことです。犠牲者足る少年達は悲しきドナーであってターゲットであり、そんな彼らの境遇を利用して悪辣な大人達が彼らを「物」として扱うのです。
本作はこのシリーズの第一作で臓器移植を主なテーマとして医療や倫理の問題を投げかけた社会派小説「切り裂きジャックの告白 刑事犬養隼人」に続いて、臓器移植がテーマにとりあげられています。
臓器移植が進まない日本の現状からくる、「医者」や「ドナーを待ちわびる患者の親族」の倫理観をテーマに描かれた作品です。
この作品を読んでいますと、陰鬱で陰惨さに満ちていて、臓器移植手術が一向に増えることない日本の現状を憂い絶望し更にそこから狂気に染まった容疑者と彼らに切り捨ててよい獲物として狙われる貧困家庭で生きる子どもたちの悲惨さに思わず病みそうな気分になってしまいました。
もちろんこの作品はフィクションで実際に我が国でこの様な事例が浮かび上がることはまずありませんが、「貧困家庭で満足に教育を受けることができない」「育児放棄されている」「貧して毎日食事もろくに取ることができない子どもたち」がいて社会問題にもなっていることも事実。
また日本人独特の倫理観や慣習により脳死を受け入れられないなどの理由で一向に臓器移植してもよいというドナーが増えずその結果臓器移植手術が行われず、臓器移植貧国になってしまっている我が国の臓器移植の問題も事実。
この二つの問題を絡め近い将来こんなことが起きるかも・・と陰鬱な未来を描いてみせたこの作品、この二つの社会問題へもっと国民皆で解決に至る道を考えていかなければいけないのでは?とあらためて問うている作品だと思いました。
ということで本作は読むのがかなりキツい作品です。傲慢な使命感や身勝手な思いから人でなしな行為に身を染める大人達の描写、そしてそんな大人達の悪辣な行為の果て朽ちていく貧しさに身を置く子どもたち。その描写は読んでいて胸が苦しくなってくる。
そんな陰惨で悲しい物語ですが社会問題の有り様を提示してくれる本作。気分が悪くなることを問わないのならば是非ご一読を!
ということで本日はここまで!じゃあまたね!
※当ブログ記事にはacworksさん、ニッキーさんのイラスト素材がイラストACを通じて提供されています。