衆議院議員選挙の投票日まで後七日ですね、選挙権を持っている方は誰に投票するかもうお決めになりましたでしょうか? それとも期日前投票を済ませてしまいましたか?

「いや私は選挙になんか行かないよ。どうせ何も変わらないんだから・・・」とか言って選挙に行かない方もいらっしゃるのかもしれませんね。

でも、選挙に行かないなんてもったいないですよ。せっかく国民に与えられている権利なんですから行使しないなんてもったいない。

国民が政治に関われるチャンスですし議員さんの生殺与奪を握っているんですから楽しまなければもったいない。(黒い笑みを浮かべて・・・)

 あなたの一票で議員さんでいられるのか、ただの人に成り下がるのかが決まるかもしれないんですよ。一人の人の人生を左右してしまうんです。

いや、投票結果次第ではこの後の政策や法律が変わってあなたの生活さえも大きく変化するかもしれない。あなたの人生すごろくの行方を大きく変えてしまうかもしれない。それってすごいギャンブルだと思いません!

そんなすごいギャンブル、無料なのに参加しないなんて、他人に自分の人生を左右させておくなんて、ほーんとにもったいない。

 なので是非とも投票に行って自分の人生すごろくの行方に少しでも関わろうではありませんか。

 

閑話休題

 

はいそれではいつも通り本の紹介へと行きましょうか。

本日紹介するのは上田秀人 さんの 『裏用心棒譚〈一〉茜の茶碗』 という時代小説をご紹介します。いつも通りあらすじ紹介から行くのでよろしくお願いします。

 

 

【 あらすじ 】

 

時は江戸時代、十代将軍徳川家治の治世。夜も暮れ人々が寝静まる深夜、ある商家の前に一人の浪人が佇んでいた。そこに店より逃げ出た者が現れると浪人は素早く駆け寄り当て身を与え意識を刈り取った。

 そう、当の浪人・小宮山一之臣は、当て身一発で邪魔者を黙らす凄腕の盗賊の見張り役だったのだ。

 

しかし彼は実は相馬中村藩藩士。城から盗まれた将軍よりの拝領物である『茜の茶碗』を捜索する為に藩を離れ盗賊の仲間になって大店の倉を探し周っていた・・・

 

そんなある日小宮山に、主家の家老より「老中田沼意次より茜の茶碗を強請られたので、本物の茜の茶碗が見つけられないのなら、茜の茶碗に似た茶碗を手に入れろ」と無茶な命が下されるのだったが・・・

 

 

【 解説 】

 

①本作の著者は上田秀人さん。

 

本作の著者は上田秀人さん。大阪府出身の1959年生まれ。兼業作家さんで本業は歯科医師。

2001年『竜門の衛』で、本格的に小説家としてデビュー!

2010年『孤闘立花宗茂』で中山義秀文学賞受賞。

2013年歯科医を休業し作家業に専念中。

2014年『奥右筆秘帳』シリーズで第3回歴史時代作家クラブ賞受賞

 

主に江戸時代を中心とした時代小説を発表する時代小説作家さんです。

代表作は『奥右筆秘帳』『勘定吟味役異聞』『表御番医師診療禄』『百万石の留守居役』シリーズ。

 

②『裏用心棒譚〈一〉茜の茶碗』において知っておきたい『老中 田沼意次』

 

上田秀人さんの時代小説シリーズの特徴といえば、徳川政権下での権力争いが盛り込まれていることです。それは、「次期将軍を巡る争い」だったり「老中の中心的存在になって権勢を振るう事」だったり、「自身の役職より出世すること」だったり、その逆に自身の座を守る為にと、主要キャラクター達がライバルや上役を蹴落とす為に権謀術数を巡らしていきます。

 

で、本作においてその中心にいるのが『老中 田沼意次』です。

田沼意次といえば第九代将軍・徳川家重と第十代将軍・徳川家治の治世下で側用人と老中を兼任して幕政を主導しそれまでの米を中心とする農本思想的政策から商業重視の政策への転換を図ったとされる人ですが、一方賄賂の横行を容認にした賄賂政治家という感じで時代小説や時代劇では「悪役」として描かれることが多い強烈なキャラクターです。

 

特に出自がユニークで元紀州藩の足軽から使えていた徳川吉宗の側近として登用され第八代将軍就任によって江戸入り幕臣になった成り上がり者の父・意行の嫡男として生まれ、後に第九代将軍になる徳川家重の西の丸小姓に抜擢。(西の丸小姓になるということは将来の将軍の寵臣候補になるということ)田沼家600石を継いだ。その後家重将軍に伴って出世街道を突き進み600石⇒家重政権下で1万石の大名に、更に家重の子で十代将軍になった徳川家治の信頼の元出世を続け相良藩5万7000石の大名に取り立てられ、側用人と老中を兼任する絶大なる執権となったスーパー成り上がり者なんです。

 

当然、三河由来の譜代旗本出身系の老中達には嫌われていると思われますし、徳川吉宗の孫である松平定信(御三卿田安家当主徳川宗武の子で、第十代将軍位を狙える立場だったが田沼意次によって将軍には絶対なれない陸奥白河藩第2代藩主の養子にされた)から憎まれる立場になっているなど、「権勢争い」が本作のストーリーに大きく絡んできます。

 

 

【 感想 】

 

はい、今回は自分のお気に入り作家の一人、時代小説家の上田秀人さんの作品『裏用心棒譚〈一〉茜の茶碗』を紹介させてもらっています。

 

今回の作品の舞台は江戸時代中期・十代将軍徳川家治の治世。幕府の権勢を振るっているのは時代小説で悪役として使われることが多い、あの老中田沼意次!

米を中心とする農本思想的政策から商業重視の政策への転換を図られている時で武士より商人の勢いが強くなってきた時代。

そんな舞台背景の中、今度の主人公の浪人・小宮山一之臣はなんと盗賊の用心棒兼見張り役をしている。

律儀で真面目で剣の腕が立つ小宮山一之臣が何故どろぼう達の片棒を担いでいるのか?と言えば、一之臣が禄を食んでいた相馬中村藩の倉から将軍家拝領物の「茜の茶碗」が盗まれてしまい、その盗まれた将軍家拝領物が無くなったのが幕府に知られれば相馬中村藩はお咎めを受け最悪藩が改易されると。

 それに恐怖した相馬藩主と江戸家老は一之臣を藩籍から削った上で茜の茶碗を秘密裏に探し取り返してこいと命令。無事茶碗を取り返してきたら藩籍を戻し加増し出世させてやると言い放った。

稀代の名茶器であろう茜の茶碗は江戸に運ばれて好事家の手に渡るであろうと想像した一之臣だったがそれをたった一人で秘密裏に探すのは不可能に近い。

そこで、一之臣は盗賊の仲間に入って用心棒兼見張り役を行うことを条件に盗賊が盗みに入った大店の蔵の中にて茜の茶碗があるかを探してもらうことを行ってもらうことにしたというストーリー。

 

そこに老中田沼意次が絡んでくるという展開。

 

藩籍を削られ資金援助もなされないのに生真面目に藩命を遂行しようとする主人公・小宮山一之臣と藩士など身命を尽くして自分に使えるのが当然と考える藩主と責任を一之臣におっ被せる家老との関係。

 

律儀で謙虚で生真面目な一之臣と彼を信頼して盗賊仲間として今後も働いて貰う為に一之臣の茶碗探しに付き合う盗賊達。

 

相馬中村藩が拝領物の茜の茶碗を盗まれた事を知って罠にかけようとする田沼意次と田沼の追求を躱す為に策を巡らす相馬藩主と家老。

 

3つのそれぞれの関係が、更に絡み合っていくことで物語の面白さが増し増しとなっていてページを捲る手が止まりません。

 

本作は、江戸時代の身分制度、武士の階級差や御恩と奉公の関係性、幕府の制度、武士と商人の関係性など、丁寧な説明が文章内に織り込まれている上田秀人さんの時代小説なので、江戸時代の複雑で様々な仕組みや関係性が苦手な方でも頭を抱える事無く読めて安心!

 

時代小説が好きな方はもちろん、歴史や時代小説が苦手な方でも楽しく読めると思うので、この作品を何処かで見かけたら是非手に取ってみてください。

 

ということで本日はここまで。じゃあまたね!

 

 

 

 

※当ブログ記事にはかえるさん、もうさんのイラスト素材がイラストACを通じて提供されています。