昨日、久しぶりに図書館に寄って本棚を物色していると、昔、読んでお気に入りになった作品を見つけました。
その作品はかなり古くに刊行された作品で、本屋でも今はなかなか見られない感じ。
自分もその作品の事をすっかり忘却していましたが、図書館の棚にその作品があるのを見つけ、懐かしさと共に借り受けて読みふけってしまいました。
こういうかなり昔に刊行された作品でも再会できるので図書館という存在はありがたいものですね。
閑話休題
それでは本日も本の紹介に行きたいと思います。
本日紹介する作品は、白石一郎 さんの時代小説、『刀 十時半睡事件帖』です。
いつも通りあらすじ紹介から行きますのでよろしくお願いします。
【 あらすじ 】
福岡黒田藩の勘定奉行・中川勘解由の嫡男・彦太郎が他愛もない喧嘩の果てに刃傷沙汰を起こし相手を斬り殺してしまった。
勘解由は息子に即座に腹を斬らせると下士であった相手方に自ら赴き詫びを入れると職を辞す事を藩に願い出た。更に「当藩では昔から若侍の刃傷沙汰が絶えないので思慮分別が未熟な若侍には佩刀を刃引きにするか竹光にしてほしい」と願い出た事が福岡藩内に論争を生じさせた。
藩内の異見会でもこの問題に結論が付かず、藩の重役から総目付たる十時半睡にどう対処するべきか問いがくるのだが・・・
【 解説 】
①当作品の著者は白石一郎さん
当作品の著者は白石一郎さん。1931年釜山生まれ
1955年『臆病武者』にて作家デビュー。以後一貫して歴史・時代小説を多数執筆。
1957年『雑兵』にて第10回講談倶楽部賞受賞。
1987年『海狼伝』にて第97回直木賞受賞
1999年『怒涛のごとく』にて第33回吉川英治文学賞受賞
2004年没
②『十時半睡事件帖』とは?
『十時半睡事件帖』は、歴史・時代小説作家の白石一郎さんの代表作とも言える連作時代小説シリーズ。
時は江戸時代後期。所は福岡黒田藩。八十石御馬廻り組の家に生まれたが寺社奉行、郡奉行、勘定奉行、町奉行、大目付などあらゆる要職を歴任し福岡藩の傑物と知られた十時一右衛門は六十の年を超えて致仕。家督を息子・弥七郎に譲って隠居し名を半睡とあらため悠々自適な隠居生活をおくっていた。
しかし藩内の職制改革に伴い、藩の目付の総取締役に是非にと再出仕を命ぜられることになり勝手努めを条件に総目付に就任した。
そんな半睡の元には藩内で起きた様々な厄介事の始末の判断が持ち込まれる。
そんな持ち込まれた判断の難しい厄介事の始末を半睡は「生き字引」とも呼ばれる長い人生経験と聡明で絶妙な判断力で次々と解決していく。
③『刀 十時半睡事件帖』とは?
『刀 十時半睡事件帖』は連作時代小説「十時半睡事件帖」シリーズの三作目
第一話 刀
第二話 走る男
第三話 妖しい月
第四話 異母兄妹
第五話 楽しい男
第六話 卵
の六っつのお話で構成されています。
【 感想 】
当ブログ記事の最初に、図書館で見つけた懐かしい本の事を取り上げましたが、その作品というのが本作の事です。
「十時半睡事件帖」シリーズは、主人公の隠居侍のおじいちゃん「十時半睡」の長い人生経験に裏打ちされた酸いも甘いも噛み分けた事件の始末模様にしびれてしまう一作。藩内で起こった藩士が起こした厄介事や事件の始末を、時には厳正かつ厳しく。時には人情を加味して緩やかに。そして表沙汰にして藩に波紋を起こしそうな一件はうやむやにして事件そのものを消し去る。その物事の本質を見極め、機転の効く判断力で厄介事を見事始末してみせる様がかっこよくしびれる作品です。
今巻の代表作の「刀」では、太平の世に慣れた武士社会において起きた若侍同士の刃傷沙汰を巡って、「子供の親の立場で判断も未熟で短絡的な行動に出がちな若者に真剣を持たせる事を辞めさせるべき」と意見が上がった事に、武士の存在意義を問う根本的な問いが内包している事に気付いていた半睡が、先の問いの答えを出さずうやむやにするという判断を下したお話で、その事に気がつかずに大半の武士が何の疑問を持たず武士階級の既得権益を享受して生きている様を描いていておもしろい。
他にもそれぞれ厄介な奇行や性癖をもった困ったちゃんが続々登場し厄介事を引き起こし周りの者は右往左往する感じは江戸時代を舞台としたコミカルなファミリードラマといった風でおもしろい。
そんな10~15年前に読んでとても好きになり当時何度も読み直した作品だったのに近頃はその作品の存在をとんと忘れてしまっていた。
そんな自分にちょっとがっかりしましたが、作品はおもしろいので何処かで見かけたら是非手に取ってみてください、お勧めです。
ということで本日はここまで。じゃあまたね!
※当ブログ記事には、nomnomさん、i**********pさんの素材が写真ACを通して提供されています。