コロナ渦で一年延期後、開催された東京オリンピックが終わろうとしています。

 

全国的に新型コロナウイルス感染症の新規感染者が増えつつある中、開催直前に至っても開催を巡って賛成反対の意見が世間を賑わせる状況の中で開かれたオリンピック。

参加した選手の方々の熱きパフォーマンスは閉塞感漂うコロナ渦の日本の雰囲気を吹き飛ばしてくれそうなものでしたが、自分は最後まで気分が乗りませんでした。

 

それは五輪開催前、政府も国民もコロナウイルス対処に何処か気が緩んでいるのではと思う雰囲気があったからです。

 

案の定五輪開催直前では全国的にコロナウイルス感染者の増加が見られました。

 

さて国際的な大運動会が終わったならば、またコロナ渦の現実が襲ってきます。

 

果たして変異種が猛威を振るうコロナウィルスとの戦いを政府、国民一致団結して勝利できるのか。

 

ここらへんでもう一度気を引き締めないと大変なことになりそうで不安です。

 

閑話休題

 

さてそれではいつもどおり本の紹介をしたいと思います。

 

本日紹介する作品は、時代小説の分野から・・

 

倉阪鬼一郎 著 『幸くらべ 小料理のどか屋人情帖 32』 を紹介しようと思います。

 

それではいつもどおりあらすじ紹介から行くのでよろしくお願いします。

 

 

【 あらすじ 】

 

天保十二年、新春 江戸下町の料理屋付き旅籠ののどか屋は店の名の通りのどかで穏やかな正月を迎えていた。

そんなある日、のどか屋を含め数軒の宿屋の元締めである信兵衛さんが数軒の宿屋を助ける手伝いの娘をあらたに二人雇い入れるという話を切り出す。

 

しばらくして信兵衛は双子の姉妹、江美、戸美を雇い入れる。

 

その姉妹は、十三年前岩本町を襲った大火において逃げる際、時吉おちよが保護し有徳家の銘茶問屋井筒屋善兵衛に引き取ってもらった双子の赤子だった。

 

あの時の赤ん坊が立派な娘になってと感慨深い時吉おちよ。

 

働き始めた双子の姉妹は時には失敗もするも徐々に店の欠かせぬ戦力になっていく。

 

そんなある日、双子の姉妹は、助けに行った旅籠・巴屋に泊った上方の商人という触れ込みの客に不審なものを感じるのだが・・・

 

 

【 解説 】

 

①この本の著者は倉阪鬼一郎さん。

 

この本の著者は倉阪鬼一郎さん。三重県生まれの61才

1987年短篇集『地底の鰐、天上の蛇』でメジャーデビュー。

以後、怪奇小説、ホラー・ミステリー作品を多く発表していたが近年は時代小説を主に発表する作家さんです。

 

②『小料理のどか屋人情帖』とは?

 

『小料理のどか屋人情帖』とは倉阪鬼一郎さんの代表作と言ってよい、江戸下町の料理屋を舞台とした日常系時代小説シリーズです。

 

2010年初刊刊行以来10年で32巻刊行。

 

故あって武士の身分を捨て、料理人になった時吉は、料理の師匠・長吉の娘・おちよと結ばれのどか屋という小料理屋を営んでいたが、二度も大火に見舞われる。しかし火事に襲われ店を焼かれても、その度にのどか屋の存在を惜しむ常連客や地元の町の人々の助力を得て店を復活させてきた。

 

手頃な値段で美味しい料理を提供してくれるのどか屋はいつも常連客で大賑わい。

 

美味しそうな季節の料理の描写と江戸下町の町人の人間模様にほっこりさせられる日常系時代小説。

 

そんな下町の小料理屋のどか屋の春夏秋冬の日常、覗いてみませんか?

 

③32巻 『幸くらべ』は全十二章。物語に出てくる今回の美味しそうな料理は?

 

1.のどか屋の正月     海老と小柱のかき揚げ 玉子粥 あさり玉子丼

2.彩り煮と煮奴       蕗の薹の田楽 白魚の筏焼き 常節の松笠煮       

3.江美と戸美        鯛茶漬け 高野豆腐の揚げ煮 鰹の山かけ

4.幸くらべ膳        鰹の木の芽焼き 鰹の竜田揚げ 鰹のすりながし汁

5.鯛づくし         鰹の焼き霜づくり 蛸と大豆のやわらか煮 車海老の艶煮

6.巴屋の客         胡瓜と竹輪の梅酢和え 穴子飯 素麺膳 他・・・

7.鰹三昧

8.四匹の子猫

9.幸つづき

10.親子の絆

11.宮島穴子飯

終章・夏開き素麺膳

 

【 感想 】

 

小料理のどか屋人情帖32巻は、天保十二年新春から初夏にかけてのお話です。

 

のどか屋の主人・時吉は料理の師匠で義父の長吉の「弟子を訪ね歩く旅」の最中、浅草の義父の店「長吉屋」を預り店を切り回しています。

で、のどか屋の方は女房おちよと息子・千吉とその嫁・おようが切り回しています。

そんな日々が日常になったのどか屋の風景。今巻で起きた出来事は主に3つ

 

・のどか屋を始め数軒の宿屋を経営する信兵衛さんがあらたに雇った助っ人娘二人が、13年前、時吉おちよ夫婦が大火の時保護し有徳家の井筒屋信兵衛の養女になっていた双子の姉妹だった。双子の娘が実は捨て子だった事は信兵衛や時吉おちよ夫婦は秘密にしておこうとするのだが・・・ かつての大火時の伏線が回収されました。

 

・江戸の町に「偽薬を売る詐欺集団」と「訳あって育てられない子供を引き取って里子に出して立派に育て上げてやるから・・と親から金を騙し取る詐欺師」の2組が暗躍しているという捕物話

 

・のどか屋のお母さん猫・二代目のどかが四匹の子猫を生んだ。四匹の猫は知り合いの家にもらい猫されることになって・・・というお話。

 

・千吉の嫁のおようが妊娠!喜びののどか屋。

旅に出ている長吉も弟子を訪ね歩く旅を終わり江戸に向かう。

 

というもの。あらたに雇われた助っ人双子の娘は、十三年前の大火で逃げる際時吉おちよ夫婦が保護した双子の赤ん坊(姉妹)だった。あの時の子がのどか屋の新たなレギュラーキャラクターに!長期発刊する長編小説シリーズならではの伏線回収話はずっと読み続けた読者へのご褒美話です。

 そして詐欺集団の悪党がニューキャラの双子姉妹のお手柄で捕まるというお話も伏線回収話を彩るお話ですね。

 

そして物語後半で語られた、千吉の嫁・おようの妊娠発覚!は次巻には、長吉・時吉おちよ・千吉おようの親子三代にあらたな世代が加わるのかという料理屋一家の系譜の未来を予感させてなんとも良い話の締めで、本作は決して話自体はそれほどおもしろい巻というわけではありませんでしたが、どことなくほんわかと良かった感漂う巻でした。

 

ということで今巻はとびきり興奮する話もお涙頂戴の感動話もありませんでしたが、なんとなしに良かった感漂う巻でした。単巻としてはそれほどおもしろいと思えない巻でしたが、長くこの作品を読み続ける読者にははるか昔に起きたエピソードの伏線回収話とかは嬉しいもの。

 更に主人公・時吉とおちよの息子の千吉の嫁のおようの妊娠が発覚!次巻では長吉からの料理屋一家四世代が見られるかも・・と希望が見られ嬉しい巻だったと思います。

 

ということで単独の巻としてはいまいち感もありましたがニューキャラの登場とおようの妊娠で次巻にはのどか屋一家に大きな変化が訪れそうという期待感を持てた巻なので概ね満足できました。 あー早く次の巻早く読みたいなぁ・・・

 

ということで本日はここまで!じゃあまたね!

 

※当ブログ記事にはnagoさん、parparuさんのイラスト素材がイラストACを通じて提供されています。