2月12日、東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗・元内閣総理大臣が2月3日に開かれた日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会において女性蔑視と受け取れる発言をしたことを巡っての混乱に対して謝意を示し辞意を表明しました。
森氏の「女性理事が入っていると女性は男性よりお互いの競争意識が強すぎて我も我もと発言をしようとして理事会の時間が長くかかる。こういう組織に女性理事を増やす場合、会議では事前に発言時間を規制しておかないと・・・」という趣旨の発言をしたところ、それが女性蔑視だと報道されたことを背景に騒動が起こり、マスコミ、世界各国の政府&団体、国内野党、国内のオリンピックスポンサー企業、等からの非難声明に屈する感じで、一度は辞意を否定していたもののあらためて辞意を表明したものです。
正直今回の件で、森喜朗元総理は国民の目からは元総理大臣でそれなりに功績があったのにもかかわらず、悪い印象を持たれたまま世間の表舞台から退場せねばいけなくなろうかと思います。いわゆる晩節を汚したということになるのではないでしょうか。
それにしても、この森喜朗元総理という方は、政財官界に顔が広く、その人脈と押しの強さでなかなか決まらないことでも森氏が直談判すれば解決すると、日本オリンピック組織委員会でも頼りにされていたそうで、今回の件で一度は辞意を翻意した理由に、オリンピック組織委員会の評議委員らに留任を求められた事を発言されていました。
しかしこの発言と、総理大臣・政府&政府与党の擁護ともとれる発言は本当に不味すぎたと自分は思いました。
本来この件が出た段階で、オリンピック憲章に反する発言を日本のオリンピック組織委員会の委員長が発言してしまったことの重要性が認識できず、森氏を擁護した感じになったことは、彼らが森氏の発言を肯定したというメッセージを世界に発信したことになり、それは日本という国が男女差別が肯定される国だと表明しているに等しいことになるからです。
オリンピックを開催することで日本の好感度や国際的評価を高めようという意図もこの件で大きく削がれることになってしまったことを森氏を擁護しようとした方々は判っているのか?森氏の実力を惜しんで泣いて馬謖を斬ることができなかった人々の罪の大きさを自分は思います。
閑話休題
はい。それでは気分を変えましていつも通り本の紹介へと行きましょうか。
本日は、あさのあつこ さんの時代小説「弥勒シリーズ」より 鬼を待つ を紹介したいと思います。
では、いつも通りあらすじ紹介から行きたいと思います。どうぞ!
【 あらすじ 】
江戸有数の豪商八代屋太右衛門の姪のおちやが所望していた小間物と紅を納入する為に八代屋を訪れていた小間物問屋・遠野屋清之介は、太右衛門からおちやの婿にならないかとの誘いを受けたが断った。その直後、遠野屋の看板商品である遠野紅の事業を譲るよう脅しつけられた清之介は敢然と撥ねつけ店を去った。
すると、八代屋は遠野屋が主催して行われている商いの企てを真似て取り潰そうと圧力を掛けてきた。
遠野屋潰しを画策する八代屋の圧力に動揺するお店者と協力者の商人達。
遠野屋の危機だったが清之介の意気が今一上がらない。それは八代屋からの帰り、清之介の亡き愛妻・おりんと瓜二つの女を見かけ心が揺れていたのだったが・・・
一方、北定町廻りの同心、木暮信次郎と、岡っ引、伊佐治は、大工の棟梁を飲み屋の喧嘩の果て殴り殺したと思い込んで現場から逃走した挙げ句自害した版木彫りの職人の事件に違和感を感じ事件の真相を探っていたが・・・
【 解説 】
①本作の著者はあさのあつこさん
本作の著者はあさのあつこさん。児童・少年少女文学、現代ミステリー、時代小説、エッセイ等の多ジャンルの作品を多数発表している作家さんで、歯医者さんの奥様です。
1997年、『バッテリー』で野間児童文芸賞を受賞。
1999年、『バッテリー2』で日本児童文学者協会賞を受賞。
2005年『バッテリー』全6巻で小学館児童出版文化賞受賞。
2011年『たまゆら』で島清恋愛文学賞受賞。
②本作は時代小説『弥勒シリーズ』の9冊目です。
本作は時代小説『弥勒シリーズ』の9冊目にあたります。
弥勒シリーズのお話は・・
父親に政敵を倒す暗殺者として育てられた清弥(清之介)は武士を捨て、生きがいとなった商人の道を極め全うすることを志し生きようとするが、彼の周辺には何故か血なまぐさい事件の香りが漂う。
一方、血なまぐさい事件の謎解きと事件の裏にある人間の心の闇や情念を覗きみることにのみ生きがいを感じる町奉行所同心小暮信次郎と、事件関係者の人間模様を覗くことに快感を覚える岡っ引き・伊佐治は、血なまぐさい事件が起きる度に遠野屋清之介を訪ね事件の謎解きに巻き込んで行く。
果たして今回の事件の真相とは?
という感じのミステリー仕立ての捕物時代小説が本作です。
【 感想 】
気づいたら本作で弥勒シリーズももう9冊目。いつの間にかこれほど巻を重ねていました。
思い起こせば数年前、シリーズ初巻を読んだ時、脳内に戦慄が走り、これは凄い時代小説に巡り会えたのではないかと感じ、以後シリーズの続巻が出る度に読みふけっていましたらいつの間にか二桁巻数が視野に入る9冊まで巻数が来ました。
暗殺者としての過去を捨て、生きがいとなった商人の道を極めようと精進する清之介(清弥)!
町奉行所の同心でありながら、日々のお役目は適当に、情に薄く只々難解な事件の謎解きと隠された人の闇の部分を暴き出すことが生きがいな小暮信次郎。
事件を通して人の心の表裏を覗くのが快感でたまらない岡っ引きの伊佐治
この三人が巷に巻き起こった一見単純そうな事件の謎と真相を暴くという捕物時代劇。
今巻では、商いが上手くいき成長著しい遠野屋を潰し事業を乗っ取ろうとする巨大な商敵が出現!清之介はどう相対するのか?また、亡き妻・おりんそっくりな女の正体は?というお話。そこに信次郎と伊佐治が手掛けていた事件が絡んでいく。
ここのところ遠野屋清之介をきわきわまで追い詰めていく様な敵役がいなかったので、遠野屋を潰しにかかる敵役の出現にわくわくして読まさせていただきましたが、正直言うと物足りなかった感じ。
できれば二巻位に渡って遠野屋清之介を追い詰め虐めていってほしかったのですが、意外とあっさり決着がついてしまいがっかり!
清之介の亡き妻・おりんそっくりの女の存在ももっと存在感と謎があれば良かったのにと残念感が・・・
いや普通の捕物時代小説ならコレでも良かったのかもしれませんが、「弥勒シリーズ」ならもう一段上のお話を要求したいと思ってしまいました。
「弥勒シリーズ」も九巻を数え、第一巻を読んだ時の戦慄やワクワク感が物語から失われてきている感じがする中、本巻は中盤位まではどきどきわくわく感を維持出来ていましたので、著者にはもう一段頑張ってもらい今度の十巻では一巻を読んだ時の全編どきどき感が持続できることを願っています。
ということで、本巻は自分としてはもう一歩という感じでしたが、捕物時代劇としては平均点は取っていると思うので、興味湧きましたらシリーズ既刊と共に読んでみることをお勧めします。
ということで本日はここまで!じゃあまたね!
※当ブログ記事にはacworksさん、cocoancoさん、coconacoさんの素材がイラストacを通じて提供していただいています。