コロナ渦の今、政府は新型コロナウィルス感染拡大の抑制と経済活動の沈下抑制との両睨みでの舵取りを行っています。

 

新型コロナウィルス感染者からの死者を増やさない事と経済が落ち込み多くの企業が倒産して数多くの離職者が出ない様にするという二つの命題を同時に行うのは至難の業だと思います。

 

ネットのSNSを覗いていると、どちらか一方の主張を声高に叫んで政府をけなしている方が数多く見られますが、コロナウィルスの感染拡大で死者が多数出ることも困りますが、経済が死んでそれによって生活困難者や死者が出ることも困りますので、どちらか一方の事だけを見ての主張はどうなのかなぁと思います。

 

もちろん政府や自治体の政策・施策について注視し不備があったら指摘することも必要です。ですがコロナウィルスの感染拡大の抑制と経済活動の活性化のどちらも欠かせないことを意識の片隅に置いての発言が必要だと思います。

 

閑話休題

 

さてそれではいつも通りの本の紹介に!

 

本日紹介するのは前回に続き横山信義さんの第二次世界大戦期の太平洋戦争をテーマとした仮想戦記シリーズ、南海蒼空戦記です。

 

いつも通りあらすじ紹介から行きたいと思います。それでは、はじまりはじまり~

 

【 あらすじ 】

 

明治維新以来富国強兵政策をとり欧米に追いつけ追い越せの精神で国の舵取りをしてきた日本は、日清日露の二つの戦を得て大陸に進出、満州帝国という日本に都合の良い独立国をでっち上げたが、その利権に参入できないことに米国政府は苛立ち日本に対して圧力をかけ続けていた。

 

一方、第一次世界大戦を敗戦国として終えたドイツは、連合国より過剰な武力や武器開発の停止を義務付けられていた。そこでドイツは遠いアジアの地にある新興国の日本の勧誘を受け入れ、多くの技術者を彼の地へ送り込み、日本への技術供与・指導の見返りに兵器の研究開発を継続できる様に図った。

 

時は流れ、ナチスドイツが台頭すると日本に派遣していた技術者の引き上げを決定したが、ナチスドイツの台頭を良く思わない一部の有力秘術者が日本への亡命を願ってきた。彼らを亡命者として受け入れた日本は、ナチスドイツとの関係悪化!没交渉状態になってしまった。

 

そして数年後ナチスドイツは欧州で各国に侵攻欧州全体を巻き込む戦さを始めた。

破竹の快進撃で瞬く間に欧州各国を併呑したドイツは西では英国を東ではソビエトを追い詰めつつあった。

 

その時日本は、米国から禁輸の対象となった石油の獲得の為にインドシナオランダ領の独立を支援し独立させることに成功したが米国政府はそれに反発。

 

米国は、欧州では対英支援名目でドイツとの戦さの最中だったが、アジアでは傀儡国家を次々と造り世界秩序を乱す国への懲罰との名目で日本に対して戦端を開くことを決意。日本との戦端を開く。

 

遂に始まった日米の戦い。果たして日本は強大な米国の侵攻を防ぎきり戦さを終わらすことができるのか・・・

 

 

【 解説 】

 

①この作品の著者は横山信義さん。

 

この作品シリーズの著者は横山信義さん。本田技研工業でサラリーマンとして仕事を行いながら作家活動を続け、1992年「鋼鉄のレヴァイアサン」でメジャーデビュー。以後、主に第二次世界大戦期の太平洋戦争をテーマとした戦記ものを発表している作家さんです。

 

②本シリーズの設定

 

・日本は第一次世界大戦後、兵器開発を禁じられたドイツより多くの技術者を招聘、兵器の技術開発と指導を行っていた。

 

・日本を大地震が襲い、建造中であった新型戦艦が破損し破棄。以後日本海軍は大艦巨砲主義から航空主兵主義へ舵を切り、戦艦の建造を辞め、空母機動部隊を2セット持つ様になる。

 

・欧州でナチスドイツ政権が産声を上げ、日本に派遣していた技術者の帰国を促すが、ナチスドイツを嫌う一部の技術者が日本への亡命を図り、これを受け入れた日本とナチスドイツは国交を断絶(※日独伊三国軍事同盟は締結されなかった)

 

・ナチスドイツは欧州で開戦!破竹の快進撃で欧州各国を併呑、盟友英国を救う為に米国も参戦!

 

・戦さの無いアジアでは、日本が満州帝国を独立させ、利権に預かれない米国との間で緊張状態に。米国の禁輸政策で石油が手に入らなくなった日本は、オランダ領インドシナの独立を支援し独立を果たさせるが、それに米国は反発。米国大統領の思惑もありで米国から開戦する。

 

概ねこんな感じです。

【 感想

 

横山信義さんといえば、第二次世界大戦期の太平洋戦争を扱った戦記!

 

毎シリーズ、歴史の流れや設定を変えながら、日本と強大な米国との戦さ模様を描き出しています。

 

今回のシリーズの主題は、太平洋戦争において米国のB-29による本土爆撃をどう阻止して戦さを終わらすか?」です。

 

 

本シリーズを読み終えると、上記の主題をどう成立させるのか?ということを逆算しながら物語を作っているかが良く判ります。

 

時系列で遡ると、大戦末期B-29の本土爆撃を回避するためには ⇒

 

B-29の発進基地が置かれるマリアナ諸島のサイパン、テニアン、グアムの三島の確保が必要 ⇒

 

マリアナ諸島を確保し長期持久体制を維持するには南方諸島と日本の間に補給線確保(米国領フィリピンの確保)が必要 ⇒

 

日本が長期持久体制の迎撃型の戦争を行うには大艦巨砲主義の海軍を航空主兵の海軍に転換させ、空母機動部隊の拡充と航空機の性能向上が必要 ⇒

 

大地震で新型戦艦建造計画が頓挫、日本海軍は航空主兵主義へ舵を切る、亡命ドイツ技術者による新型機開発と工業界への助力 ⇒

 

第一次世界大戦後のドイツより技術者を招聘しての技術指導と兵器開発の促進!

 

という風に逆算して設定が組まれ、物語が構築されていることが良く判るお話です。

 

特に物語のキモ、航空主兵主義を行うには、工業力、技術力で劣っていた日本が米国の航空兵力と互角以上に戦えなくてはいけないのですが、そこを外国(ドイツ)の有力技術者をお雇いして補うというやり方は明治維新直後から欧州から各分野の専門家を招聘して雇い教えを請うた時と同じやり方。

ドイツのエルンスト・ハインケル氏やクルト・ヴァルデマー・タンク氏などミリオタが興奮するであろうエンジニアが日本の航空工業界に助力してくれるという設定は心躍るものがあります。

 

もちろん、細かく言えば、両エンジニアをはじめとする多くのドイツ人エンジニアからの助力があったとしても、排気タービンの開発やジェットエンジンの開発や新型機の開発はそれほど上手くいったとも思えませんし、戦さにおける艦船の砲撃の命中率が少々良すぎるとかの物語上で都合の良い描写も見受けられますが、戦記物語としてはまずまず面白い。

 

それに航空戦だけじゃなく横山氏お得意の海戦でのどんぱちシーンも欠かさず在りますので氏の作品の好きな方はご安心を!

 

ということでミリオタの方やこの時代の歴史物が好きな方には拝読をおすすめします。

 

ということで本日はここまで!じゃあまたね!

 

 

※当ブログ記事には、acworksさん、geckoさん、みずさん、しゅうぽんたんさんの作品がイラストAC様を通じて提供されています。