米国では大統領選も終わり新たな大統領に民主党のバイデン氏が就任するという流れになってきたようです。
現職のトランプ大統領はそれを認めず裁判に訴えて逆転を狙っているみたいですが、トランプ氏の元で働いていたスタッフも多くが離れつつあり共和党でもバイデン氏の大統領就任を認める流れになってきていて、どうやらトランプ氏もジ・エンドといった風情。
となると我が国はバイデン政権がどういう政策を打ってくるのかを見据えて米国と付き合っていかなければいけません。
トランプ大統領は対中国の姿勢を露わにしていましたが、バイデン氏は中国とは融和姿勢の方向と言われています。
そうなると我が国に対する扱いはちょいと粗略になる可能性もあり、難しい立場になるかもとつらつらと物思う初冬の朝でした。
閑話休題
話替わって、いつもの本の紹介へいきましょう。本日紹介する作品は時代小説!
井川香四郎 著 冬の蝶 梟与力吟味帳 を紹介しようと思います。
それではいつも通りあらすじ紹介から行くとします。
【 あらすじ 】
時は江戸、幕末の天保年間第十二代将軍・徳川家慶の治世。
この頃幕府は、幕府財政の悪化、全国的な凶作による物価や米値の高騰、飢饉の発生、 農民による百姓一揆や打ち壊し、逃散による都市への下層民の流入による治安の悪化、外国船の来航などで世間は大きく揺れていた。
そうした暗い世相のなか、北町奉行・遠山左衛門尉影元のもと、闇に目を光らせ法の網を逃れ密かに庶民を苦しめる悪をあぶり出し捕まえる、梟(ふくろう)との異名で呼ばれる一人の吟味方与力・藤堂逸馬がいた。
正義感溢れる逸馬は、寺子屋時代の幼馴染、計算が得意で神経質な旗本の八助、根っからの助平だが憎めない御家人・信三郎の助力を得ながら 、「罪を憎んで人を憎まず」「虚心坦懐」の精神を胸に江戸の町で起きる様々な事件の裏を探るのであった・・・
【 解説 】
①本作の著者は井川香四郎さん
本作の著者は井川香四郎さん。大学を卒業後「暴れん坊将軍」「八丁堀の七人」などのテレビドラマの脚本家として活躍後作家に転身、2003年「飛蝶幻殺剣」でデビュー以後、時代小説作品を専門に作品を発表している作家さんです。
②この作品は幕末天保年間、老中・水野忠邦の天保の改革の時期が舞台の捕物時代劇!
この作品は、幕末天保年間、徳川十二代将軍・家慶の治世。
商人の力が強くなり武士の力が低下する中、全国的な凶作が数年来続き、農村では飢饉や百姓一揆、逃散が起き、都市には下層民の流入、米値・物価高騰で世の中が不安定になった時代で、筆頭老中・水野越前守忠邦が主導して世の中に綱紀粛正と奢侈禁止を定めた令を乱発した天保の改革の世が舞台となっている捕物時代劇です。
③主人公は、「遠山の金さん」で知られる北町奉行・遠山左衛門尉景元の配下、北町奉行所吟味方与力・藤堂逸馬!
この作品は、時代劇「遠山の金さん」で有名な北町奉行・遠山左衛門尉景元の抜擢を得て吟味方与力として力を振るっている青年、藤堂逸馬が主人公!
逸馬は、元町人で町名主の子。町人でありながら抜群の剣の才と真っ直ぐな気性を認められ代々町奉行所与力の藤堂家に養子に入り家を継ぎ、若輩者ながら奉行の遠山左衛門尉景元に抜擢され吟味方与力として辣腕を振るっています。
逸馬には、「仙人」との異名を持つ宮宅又兵衛が営む「一風堂」という寺子屋で一緒に学んだ幼馴染で親友、算盤に長けているが神経質で臆病者の旗本にして奥右筆仕置係の毛利源之丞八助、通称・パチ助、文武ともに明晰だが子供の頃から助平で女にだらしない御家人で寺社奉行吟味物調役支配の武田信三郎、通称・黄表紙、が居て、彼らはいつも逸馬が手掛ける難事件の捜査の手助けをしてくれます。
※八助、信三郎は後に役替えします。
彼ら三人は、町民を律する窮屈な令を発し世を統制しようとする老中・水野忠邦と南町奉行・鳥居耀蔵に抵抗する北町奉行・遠山左衛門尉景元を支えるために奔走します。
4話連作小説
第一話・仰げば尊し
火盗改メに追われ寺子屋・一風堂に逃げ込んできた盗賊一味の男・伊左衛門を匿った逸馬達の師匠・仙人。伊左衛門は飢えた農民を救うために蔵を破り米を無断で供出したとして処刑されたはずの元蔵方役人だった。そんな彼がなぜ盗賊の仲間に?奉行所の役人ながら盗賊を匿った者として逸馬と上司の遠山奉行の罷免を狙う鳥居耀蔵。果たして盗賊と伊左衛門の関係とは・・・
第二話・泥に咲く花
鳥越明神に程近い長屋で美人で評判の良い寺子屋の女先生の惨殺遺体が見つかった。部屋からは彼女の櫛が消えていた。調べを進めた逸馬は、亡くなった彼女の父親の治療を断った高慢で金に汚い医師に目をむけるのだが・・・
第三話・幻の女
若い娘に因縁をつけ絡んでいた酔っぱらいの中年男を諌めるために割って入った若者が物の弾みで中年男を殺めてしまった。同情すべきところがある罪人である若者を救おうと現場から消えた若い娘の姿を追う逸馬だったが、その事件には勧進札に絡む不正の影がちらついて・・・
第四話・冬の蝶
死罪が決定し死を待つ罪人勇次から惚れあって祝言を誓った女の消息を願われた逸馬は、勇次の願いを聞き彼の女・お光の消息を訪ね歩くのだが、とうのお光は油問屋組合の不正融資の責任を取らさせて父親を死に追いやった男達の一人の妻になっていた。果たして勇次の罪は本当なのか?油問屋の不正融資の件との関わりは・・・
③この作品は2008~2009年にかけてNHK土曜時代劇でドラマ化されました。
この作品は2008~2009年にかけてNHK土曜時代劇枠で「オトコマエ」「オトコマエ2」という題名でテレビドラマ化されました。ただこの時は、話の内容がかなり改変されて、幼馴染三人仲間の内の八助が省かれ、幼馴染二人の逸馬と信三郎が活躍する物語になっていました。
【 感想 】
さてこの物語は、真っ正直で人情家の町奉行所の青年与力・藤堂逸馬が、幼馴染の旗本・八助、御家人の信三郎らの助力を得ながら、庶民を苦しめる悪党共を捕らえて裁く痛快捕物時代劇といった作品です。
町奉行所与力といえば、町奉行所同心が調べ捕らえてきた罪人を町奉行が裁くお白州の前に事前に取り調べ審判する係ですが、逸馬は事件に不審な点があれば自分も町に出て事件の捜査に向かう掟破りの行動派!
事件の謎や真相を明かし、事件の裏に潜みし真の首謀者をあぶり出すために邁進します。
そんな逸馬と共に阿吽の呼吸で助力する信三郎とぶつぶつと文句を言いながらも探索に巻き込まれ結局助力させられてしまうパチ助(八助)!の活躍もいい感じ!
そしてこの物語が単なる捕物時代劇で終わらないおもしろさが、この作品の舞台が老中・水野忠邦の天保の改革の時代だということ。
綱紀粛正と武士の地位の復権を旗印に力を増した商人や町人を抑え込むために武士には甘く町人には厳しい政策を推し進める筆頭老中・水野忠邦と彼に追従しつつも立身出世のためには自らも悪辣な企みを巡らす腹黒い男、南町奉行・鳥居耀蔵、と相対し、武士に甘く庶民に厳しい政策を嫌い庶民の安寧を守るために尽力する北町奉行・遠山左衛門尉景元(遠山の金さん)の政争というテイストが加わり。単なる捕物時代劇と違い、当時の幕府の政策や風潮を絡めていて物語をより複雑化させてくれていて面白い。
特にゲームで言えば中ボスに当たる南町奉行・鳥居耀蔵がいいキャラしてます。
南町奉行でありながら、自分の立身出世のための金集めやライバルで目障りな北町奉行・遠山左衛門尉景元の追い落とし、親分である水野忠邦の恥部を隠すためなら、
配下や手の者を使って証人の抹殺したり、事件をでっち上げたり、事件の真相を隠したり捻じ曲げたり、犯罪者が悪い事をして庶民から奪った金の上前を跳ねたり奪ったりと、盗賊やヤクザや悪徳商人などの悪党も真っ青なことを平気で行う。もうその悪党っぷりといったら敵役として大合格です。もう彼の悪党っぷりを楽しむために読んでも良いくらい。
ここまで悪い敵役が居てくれるので、その対比の存在として主人公らの善良さがより輝き物語をおもしろくしてくれています。
そんなキャラ立ちした登場人物がよい味出している捕物時代劇作品、ご拝読をおすすめします!
ということで本日はここまで!じゃあまたね!
※当ブログ記事にはacworksさん、cocoancoさん、sakurase aoiさん、nodokaさんの作品がイラストACを通じて提供されています。