当ブログはここの所週一ペースでの更新とさせていただいていますが、9月は4回とも中山七里さんの作品の紹介となってしまいました。
コレは自分の読書の傾向として、ある方の作品を読み始めると、その著者のシリーズを全巻読み終わるまで、又はその著者の現在読み終わっていない作品を一通り読み終わるまで止まらない傾向にあるからです。
ということで、先月から今月にかけては、自分の中で「中山七里祭り」が開催されており氏の作品に絞って読んでいたことからこういうことになったというわけです。
ということで、読んでいなかった中山作品も概ね読み終わりましたので今度はどの方の作品に移ろうかと考慮中!
ですが、今回は別の作家さんの作品の紹介が間に合わないので、今回も中山七里作品の紹介をさせてください。
ということで今日紹介するのは、人面瘡探偵という作品です。
いつも通りあらすじ紹介から行きますのでよろしくー!
【 あらすじ 】
三津木六平は古畑相続鑑定所属の相続鑑定士。今回は先日亡くなった信州随一の山林王と謳われた本城家当主・本城蔵之助の遺産鑑定の為、長野県佐久間町を訪れた。
本城家は信州では古くから豪商として近郷近在に権勢を振るった一族であったが、昨今は、本業の製材業の凋落と共にグループ企業各社の業績も悪化、倒産が立て続き残るは業績がイマイチの製材会社と潰れる寸前のホテル、7つの山林と3つの更地、本城家の土地屋敷が残るのみとなっていた。
そんな本城家の遺産を受け継ぐ相続権利者は長男・武一郎、次男・孝次、長女・沙夜子の三人。
当初碌な資産が残っているとも思われず、負債を考えると相続関係者の遺産放棄の可能性が大きいと見られていた本城家の家産は、六平が遺産調査で二束三文と思われた山林に希少鉱物であるモリブデンの大鉱脈を発見したことで状況が一変する。
一転、金の成る木となった山林を含む本城家の遺産を巡って三人の相続権利者に不穏な空気が流れる。
そして次々と巻き起こる連続殺人事件!
さまざまな感情が渦巻く本城家で巻き起こった殺人事件の事の真相を六平と異形のパートナーが追う。
果たして事件の真相と犯人や如何に!
【 解説 】
①この作品の著者は中山七里さん。
この作品の著者は中山七里さん。2009年「第8回このミステリーがすごい大賞」を「さよならドビュッシー」で受賞しメジャーデビュー!
以後ミステリー作家として法廷ミステリー、警察小説、コージーミステリーなど各ジャンルのミステリー作品を数多くの発表!デビュー作「さよならドビュッシー」で音楽ミステリーと呼ばれる新しいジャンルのミステリー作品を創出。
そして氏のミステリー作品の多くには、話の終わり際、それまでの作品世界を一変させる仕掛けが施されていることから「どんでん返しの中山」という異名を冠されています。
②今回の作品の主人公の職業は「相続鑑定士」!
相続鑑定士とはどんなお仕事なのか?
相続鑑定士とは故人の遺産相続関係者と弁護士や税理士、会計士などの遺産相続に関わる専門家との間を結び、相続財産の診断と現状把握、相続設計、遺産分割協議、事業の継続などetc と遺産相続に関するマネージメントを行う専門家です。
③題名にもある「人面瘡」とは?
人面瘡(じんめんそう)とは、腕・肩・膝などにできることが多い人の顔の形をした腫れ物のことで、時に、意思を持ち、話をしたり、モノを食べたりする架空の奇病・妖怪の一種のことです。
④事件の舞台、長野県佐久間町という架空の町のモデルは?
この作品の舞台「長野県佐久間町」は実際は存在しません。佐久間町という地名は長野県に存在せず、静岡県浜松市北部に存在し、長野県には佐久穂町という似た名の町が存在します。
佐久間町と佐久穂町、両町とも自然溢れる山間地域にある田舎町。さすがに横溝正史ばりの古い因習に囚われる閉鎖的な山村といった陰鬱な感じは見受けられないと思います。
まあこの佐久間町という架空の町は、横溝正史の「犬神家の一族」の舞台となっている長野県佐久市・上田市とか「八つ墓村」の山口県の山村とかの平成・令和版みたいな町なのかなと想像してしまいます。
【 感想 】
今回の中山ミステリー作品の特徴は、まるで横溝正史作品のオマージュ的なテイストの作品です。
まず男尊女卑、家長制度など古い因習や価値観が色濃く残る地方の山村が舞台。
山村の住人の生活は分限者である資産家一族の営む事業に大なり小なり依存し、一族の顔を伺っている。
そして絶対的なカリスマであった当主の死。そして巻き起こる遺産相続に関わる連続殺人事件。
隠された一族に纏わる忌まわしき秘密。
探偵役の主人公は連続殺人を防げず、いつも後追い推理。
と横溝正史作品の雰囲気たっぷり!
そしてここでちょいネタバレですが、コミュ障で鈍いぼんくらな主人公・六平には、幼少の頃起きた事故後、彼の右肩の傷跡に人面瘡のジンと称する妖怪・怪異が寄生しています。
人面瘡のジンはコミュ障で鈍くさく察しの悪い六平を嘲り笑い叱咤し導きながら事件の謎解きに協力し連続殺人の犯人探しに邁進していくというぶっ飛んだ設定です。
このぶっ飛んだ設定が横溝正史ミステリーテイストと相まって独特な怪奇感を読者に感じさせてくれます。
自分としては殺人事件の内容と犯人の正体には意外性もおもしろみも感じませんでした。というか容易に想像できました。意外感はまずありませんでした。
ですが横溝正史ばりの物語の展開と人間と人面疽のにわか探偵コンビという怪奇性だけは横溝正史好きとして楽しめたので、なんとか及第点は取れたかなという感じの作品でした。
そして物語のラストに設けられた「どんでん返し」は久々に良かった。
ということで犯人探しや事件の謎解きは残念ですが、横溝正史のオマージュ的ストーリーと主人公と怪異のコンビによるにわか探偵とい怪奇感で点を取り返したと思うこの作品。
横溝正史作品に思い入れがある方は是非手にとって読んでみてください。
ということで本日はここまで!じゃあまたね!
※当ブログ記事にはacworksさん、hiraike32さん、Hicさん、にゅあんとびえっちゃんさんの写真が写真ACを通じて提供していただいています。